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ノンアル・ビアハンター #ノン・エール / 常陸野ネストビール

常陸野ネストの低アルコールビールが美味しかったです。今後もクラフトブルワリーが出しているノンアル系、探していきたいと思います。という話。

近年、ノンアルコール・低アルコールビール(この記事ではノンアル系に表記統一します)が盛り上がりを見せている。BrewDogのノンアル系ラインナップ「AF」の展開、スウェーデン・Omnipolloのノンアル系銘柄はイケアで買うことができ、最近では英国のノンアル系専門ブルワリーである Nirvana Breweries の日本進出計画が取り沙汰された。

昔からノンアル系ビールに取り組んできた国内大手の動きとしては、今年2月のキリン「グリーンズフリー」のリニューアル販売が記憶に新しい。ネルソン・ソーヴィンの効いたホッピーな銘柄で、リリースコメントに気合いが入っている。

当社は「キリン グリーンズフリー」のリニューアルにより市場を活性化させ、ノンアルコール・ビールテイスト飲料を、“お酒が飲めない時に仕方なく飲む”といった消極的飲用から、“飲みたい時に選択して飲む”といった積極的飲用のカテゴリーに進化させていきます。

上記リリースにもある通り、かつてのノンアル系のビールは運転や健康上の理由で「仕方なく飲む」ものだった(正直、多くが味も変だった)。しかしながら今やノンアル系は代替品ではなく「積極的に選ばれる」存在への変化を迎えつつある。つまりは、ある時はアルコール有のビールを、また別のタイミングではノンアル系のビールを、その日の気分・場面・調子によってフラットに選んで飲む時代が到来してきたと言える。

背景として挙げられるのは消費者側の変化だ。例えば、ミレニアル世代を中心に Sober Curious(ソーバーキュリアス)がムーヴメントとなり、本邦にも波及しつつある。これは下戸ではなく「飲めるけれども、あえてアルコールを飲まない」選択をする人々の動きで、多くは将来の健康を動機としつつも、やむを得ない禁酒ではなくライフスタイルへのプラス要素として積極的にアルコールから距離を置いていることが特徴。彼らにとっては、素面の人生こそが cool であり、本当の自分なのだ。

(余談だが、昔から言われる「酒を飲んだら地がでる」という考えには自分も異を唱えたい。人間である以上、本質は万全の理性的判断を込みで判断されるべきだ。さもないと数年前の泥酔時「数時間切々と『世間はワン●ース魚人島編を再評価せよ』と訴え続けた感性に偏りある人物」というのが、自分への正確な評価になってしまう)

もちろん、コロナ禍を経た健康意識の高まりも、アルコールフリーを求める風潮に拍車をかけている部分があるだろう。ノンアルコールのカクテル「モクテル」の人気も拡大しており、都心部ではモクテル専門のバーも登場している。単なる「酒離れ」ではなく「あえて飲まない」選択をしている人だからこそ、お酒のテイストとムードを味わえる、ノンアル系のビールやモクテルの市場が拡大しているように思う。

正直、少し前まで自分はノンアル系を飲んでこなかった。昔飲んだとき美味しいと感じなかったというのもあるし、どうせアルコールなしなら、ジュースや炭酸飲料を飲むのも一緒だと感じていた。変わったのは一年ほど前だ。職場・生活環境ともに変化があり、酒量を見直す契機になった。三十路になり内臓の数値も気になるし、仕事その他でコンディションを保つのも大事だ。そこで、久々に国産大手のノンアル系ビールを飲んでみると...食事にも合うし、悪くないと感じた。アルコール以外に糖質やプリン体フリーのものもあり、ますます安心。ここ数年で味も品質も非常に評価が上がっている流れを見ると、まさしく企業努力の賜物なのだろう。

こういうnoteをやっている時点で、言うまでもなく現在も週に数回はアルコール有のクラフトビールを飲んでいるし、飲みに行くこともある(今年の1-3月は行けてないが、休日に出先で1, 2杯...というのはないでもない)。それでも夕食時の一杯をノンアル系に置き換えることで全体的な酒量は減ったし、飲まないことによる禁断症状的イライラ感もない。むしろ頻度が減ったことで、より一杯のビールを美味しく飲めるようになったような気もする。

いま関心があるのは、ふだん愛飲している日本の各クラフトブルワリーの、ノンアル系ラインナップへの対応だ。肌感覚ではあるが、クラフトビールファンの多くがそこまでノンアルに熱をもっていないのと同様、ブルワリーのほうでも未だノンアル系はそこまでの広がりを見せていない気がする。

果たしてノンアル系ジャンルは本邦のクラフトビール界隈では盛り上がらないのか、世界的なトレンドに合わせて隆盛していくのか、あるいは海外勢で見られるように、ノンアル専門のブルワリーが登場して一気に駆け上がるのか。ある程度ムーヴメントとして定着した現在のクラフトビール市場においても、このジャンルは今後の展開が予想できないし、目が離せない。少なくとも自分はノンアル系ビールを今後も飲むであろうわけで、なるべく美味しく、多様な銘柄に登場してほしい。

そういうわけで、クラフトブルワリーを中心に、各社のノンアル系ビールも積極的に飲んでみようと思う(以上、激長前置き)。

ノン・エール / 常陸野ネストビール

国産クラフトでのノンアルコールを探したときに、まず第一に上がってきたのが常陸野ネストの同銘柄だった。さすが常陸野、国内クラフトビールの牽引、先駆的な海外進出に続き、ノンアルでも第一人者...という感じ。

スタイルとしてはアメリカン・ペールエール風のノンアル系ビール。カスケードホップが効いていて、一口目でガツンとホップの風味が楽しめる。カスケード品種は柑橘類に例えられることが多いホップだが、個人的には風味のベクトルとして松脂っぽい芳香を感じた。アルコールがないことで感じ方が違うのだろうか。いずれにしろ、爽快感と共に落ち着きも同時に訪れるようなホップ・インプレッション。

口に含んで間もなくは普通のアメリカンペールエールと紛うほどだが、アルコールがないのでボディはスッと消えるように軽く、その落差も面白い。また、モルトがしっかり味を支えており、ホップ由来の強い苦味・香りから溢れてくるように穏やかな甘味を感じる。

なお、アルコール度数は0.3%。「ノンアルコールビール」は行政によりAlc.1%未満として定義されている(件のクラフトビールの定義論争とは状況が違う)が、運転前など状況によっては無制限に飲めるわけでないことに注意されたい、念のため。こちらのノン・エールもホームページではローアルコールビールとして紹介されている。とはいえ普段、休肝日として一杯飲むには全く問題ない基準だろう。

「ノンアルコールビール」として巷で手にはいるビールの殆どがピルスナー風スタイルである中で、非常に美味しいペールエール風ノンアル系ビールだった。味のベクトルがしっかりしてるので、ペアリングを考えるのも面白そうだ。アメリカンペールエールなら定番はバーガーやバファローウィングあたりだが、アルコールがない分、繊細なものにも合わせ易いかもしれない。

この水準でノンアル系のビールが作れるブルワリー...となれば、飲む側として期待してしまうのは、是非他のスタイル(ヴァイツェンとかIPAとか)でもラインナップを作ってほしいということ。特に常陸野ネストが誇るだいだいエールやスウィートスタウト、そのAlc.Free バージョンを想像するだけでテンションが上がってくる。読者諸賢に、同社の商品企画部の方と繋がりがあれば良いのだが...

という妄想はさておき、見かけたら是非買ってみてください。

まったく関係ない話。

杉がない国に生まれたかった。

以上





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