百年の孤独

川を挟んだ向こう岸
松明の列が並ぶ
あの娘は裸で
羽根をくわえて泳いでく

毒の矢が脇を抜け
耳鳴りが糸を引く
僕は震えて目をそらした
あの娘が振り返るのを
あの娘が行ってしまうのを

山羊の頭が浮かんで
目と耳と足と心臓
お前にくれてやるから
お前にくれてやるから

取り返しのつかない
百年憶えている
取り返しがつかずに
百年思い出す
一瞬を繰り返す
一瞬を繰り返す
一瞬が一瞬のままなら
角を生やさずに
生やさずに済んだのに

薄い布の向こうで化粧をしてた
あの娘の影が大きくなり
僕にはとどかなかった
しわだらけの僕の手に
羽根が落ちてきて
顔を上げると あの娘が
折れた角の跡を撫でる

百年経ったよ

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