終電

よその街では珍しく「アサヒスーパードライ」が目に飛び込んできて、乾杯した。生ビールは飲みはじめの頃に少し背伸びして飲んでいたお酒。24を迎えて好きな人と飲む生ビールはほんとにおいしくて、最後の一滴まで味わえた。いつもよりちょっと深くて重い会話もした。二軒目は適当に入った高級な雰囲気のウイスキーバー。酔いきれなくて少し困った。三軒目の大衆居酒屋でハイボールとつまんだ餃子で安心した。お酒より目の前の好きな人のことばかり考えていた。店を出て長いキスをして眠った。何度も二度寝をしてお昼過ぎまで一緒に過ごした。これ以上どこにも行くことができないなと思った。外が明るくなっても手を繋いで歩いてくれる好きな人。別れたあとも会いたいと言ってくれる好きな人。痛いほどその気持ちがわかるはずなのに、私はどこか冷静になってしまっていて自分が少し嫌になった。

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ほろ酔い文学

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