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惑星対抗給食ウォーズ(後編)

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本記事は後編です。
前編は下記URLからお読みください!

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「さあ、始まりました、惑星対抗給食ウォーズ。初戦は、地球対火星のぶつかりあいとなります。視聴者の皆様には、地球代表の班員紹介VTRを見ていただいたところでした。まもなく運命の火ぶたが切られます。実況は、西山ミノル。解説は、給食防衛軍総司令官を務める山川ユウ次さんでお送りします。」

「あぁ、よろしく。」

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給食という競技は、3項目の観点から勝敗が決まる。食べた量、気品、感謝だ。基本的には、ひとクラス分の給食を班対抗で奪い合い、どれだけ多くの割合を食べられたかで競う。ただ、著しく気品を損なう行為、及び食材や生産者への感謝が見受けられない行為については、その程度に見合ったペナルティが課される。

今回の献立は、コッペパン、コーンスープ、エリンギとピーマンのソテー、ハンバーグ、牛乳だ。ポイントになってくるのは、エリンギとピーマン。好き嫌いの多いノブは、キノコ類と苦みのある野菜を受け付けない。丸呑みができない料理があるのは痛い。俺とハヤトも、食べられなくはないが、できれば食べたくない分野だ。サヤに懸かっている。

一方で火星人は好き嫌いがない。昔、地球人が移住した際に、同じ姿や考えの方が合理的だとして、遺伝子の組み換えが行われたためだ。みんな同じような見た目をしていて、それぞれの個性はない。

宇宙人はタコのような見た目や浮遊しているイメージがあるかもしれないが、それは古い考えだ。火星は地球と気候が似ているため、いわゆる人間型をしている。

スタートのゴングが鳴る。
ハヤトが素早い手つきで、ハンバーグとソテーをひとつの皿に盛りつける。サヤは配膳台の端で4つのお椀にスープを注ぎ込んでいる。俺は、両方の手のひらと手首に、おぼんを器用にのせて待つ。ハヤトとサヤが、おぼんの上に皿とお椀をひとつずつ置いていく。ノブは4人分の牛乳とストローを大きな手で運び、すでに席についている。

班全員の給食がそろい、白い給食帽とマスクを取る。この置き場所にはいつも困る。結局、給食着の右ポケットに突っ込んだ。このまま洗濯機に入れると、ママに怒られる。パパと一緒だと言われる。パパもママにいつも怒られている。あ、パパとママって呼んでいるのは家の中だけ。

「いただきます!」
感謝を込めて元気に挨拶をした。ここまで減点はない。

サヤは多めによそわれたソテーを淡々と口に運ぶ。ウマイともマズイとも読み取れない表情で、ひたすら食べ続ける。

ノブはコッペパンの真ん中に穴を空け、そこに大好きなハンバーグをさしこみ、一口で丸呑みにする。牛乳とスープを一息で飲み干し、エリンギとピーマンのソテーに取りかかるところだった。好きなものを最初に食べるタイプだ。俺とは相容れない。

ハヤトはいつのまにか完食し、ハンバーグとスープのオカワリに向かっていた。今日も調子が良さそうだ。

人気料理は瞬時に底をつく。
最後のハンバーグは、火星人Bと俺でじゃんけんをして勝ち取った。じゃんけんは強い。班に持ち帰った瞬間に、ノブが丸呑みをした。

現時点での分は同等、もしくは少しこちらが勝っているか。ここからは、エリンギとピーマンのソテーをどれだけ食べられるかだ。

開始当初からサヤは黙々と食べ続けてくれているが、やはり、俺も含め他の班員はペースが遅くなる。ノブに至ってはハッキリしていて、野菜は一切丸呑みしない。小鳥のエサくらいに小さくちぎって口に運ぶ。

火星人たちは、システム化された機械のようにピーマンを口へ運んでいく。流石にサヤだけでは勝てない。まずい、どうにかしなければ。

ピーマンを流し込むための牛乳をオカワリしに行こう。俺は、配膳台にあるプラスチックケースから牛乳をとる。その後、自分の席には戻らず、火星人の班が座っている場所へ向かう。火星人たちは、俺らと同じく、机を向かい合わせにしている。

火星人Cが牛乳に口をつけたとき、俺は持っていた牛乳のふたを開け、ストローを刺す。気品を損なう立ち飲みの減点だ。しかし、一発逆転を狙い、一か八か、ここでやるしかない。

ストローに口をつけ、まぶたを持ち上げ、不自然な二重にする。そのまま口をとがらせ、白目を剥いたら、自信のある変顔の完成だ。その顔を保ちつつ、頭を前後に揺らしながら、ゴク、ゴク、とリズミカルに音を立てる。

牛乳を飲んでいる火星人Cの視界へ入ろうとする。単純だけど、こういうのがジワジワくる。火星人は目を反らそうと必死だが、追いかけ続ける。

一瞬の隙を突いた。完全に目が合った。火星人の口から白いしぶきが吹き出す。もらった。気品を損なう行為で、大幅な減点だ。立ち飲みとは比べものにならない行儀の悪さ。おぼんは白い海と化した。火星人たちは同じ顔をしながら、呆然としていた。頭も真っ白になってしまったみたいだ。

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「放送席、放送席。今日のヒーロー、チャンヤマこと、山川ユウ基選手から、コメントをいただきましょう。決して大きな身体ではないと思うのですが、強みを生かして大活躍でしたね。今後の意気込みをお願いします!」

「このまま優勝候補である天王星を倒して、様々な長所を持った仲間とともに、太陽系イチの班を目指します。今後も活躍をして、給食防衛軍に入り、人々を笑顔にできるようにするのが夢です!」

「素晴らしいコメントをありがとうございます!実況席にお返しします!」

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「山川選手のインタビューでした。最近は、アンドロメダ銀河系がこちらに近づいてきており、残飯攻撃を仕掛けてくることが増えてきています。こういった状況の中で、頼もしい選手が出てきましたね。あ、そういえば、解説の山川さんと同じ苗字なんですね。」

「あぁ、そうだな。息子として、本当に誇らしく思う。」


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(著者談)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
物語を書いていくと、登場人物に愛着が湧きますね!
みなさんは、誰が推しメンですか?

まだまだ色々な設定やサイドストーリー、少年少女のスピンオフが想像できて、私にとっては面白い作品になりました。評判が良ければ、今後もこのシリーズを書いていきたいです。

本記事は、改善できるところを締め切りまで修正していきます。

書籍への出費がスゴいです。サポートしていただいたら、そのお金で新しい体験をして記事を書きます!