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妄想随筆集

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その名の通り時々妄想が入る随筆集
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2022年6月の記事一覧

少しの窓開けと、雨音のしっとり加減と、執筆と。

窓ガラスを少し開ける。 静かな部屋なので、暫くすると雨が落ち始める瞬間がわかる。 空模様を気にするのは、早起きできた梅雨時ならではの行動である。 さて、今日は執筆する時の環境について書く。 物書きをするときの場所は決まっている。 たいてい、ベッドの上だ。 仕事で蓄えた慢性の腰痛症を少しでも和らげるために、 クッション2個を背にもたれ掛け、三角に折り曲げた膝の上にノートPCを置き打っている。 大変に姿勢がよくないのはわかっている。 だが仰向けで打つことはできないし、

美術屋の頃の話。

先日、午前中に仕事を済ませるとそのまま午後休を取り喫茶店で一服していた。 平日の五反田の喫茶店は自分と同じようなサラリーマンのサボり処か、奥様方の座談会でだいたい席が埋まる。 家庭内別居の話題で盛り上がる奥様方の席上には、牧草地帯の風景画の複製が飾られている。 ふと、美術の仕事に携わっていた時代の頃を思い出す。 20代の半ばから30の手前まで、いわゆる美術品仲介業の会社で働いていた。 顧客から預かった作品を競売に掛け、落札手数料・保険代で収益を出す。 最初は設営スタ