連作20句「いちばん近い青」

魚氷に上るマンチェスターの工手かな
春の水人を人たらしめて夕
チューリップわたしをひとつ埋めて咲く
永き日やポスト開錠する動作
落ちゆける関数やはらかく椿
朧月聞いておきたいことがある
ブラインドうち鳴る裏の甲虫
ほんたうに音がせぬとは夏の空
珈琲濃し旧作のポスタアに南風
夏服のきみはさういへばはじめて
じりじりと網戸を登る蟬の腹
墓参こはごは踵履き潰す
銀漢にいちばん近い青を選べ
硬筆のとめとはらひの水の秋
宵闇にある電線のふとさかな
電子ピアノの電池入れ換へ文化の日
寒雀街は毎朝生き還る
十三階より生き延びて冬旱
落葉百枚数へたら君にやる
作業着の人のマレー語寒の雨

第13回石田波郷新人賞・落選作です。

(たしか応募作は全部活字になって自動的に既発表句になるらしいので、積極的に公表しちゃってだいじょうぶ!なはず)

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