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20240617-0623
六月十七日(月)
思考や言葉は、口に出した途端にうすっぺらくなってしまう。思っていることは思っているようには伝わらない。それが書き言葉であれば気にならない。だからできるだけ黙っていたいし、書き続けていたい。
労働、買いもの、歯医者。歯医者の通院がひとまず終わったので次はまた三ヶ月後。帰って、きゅうりをピクルス液に漬ける。
六月十八日(火)
雨あがり。室内に避難させていたフランネルフラワーとラベンダーの鉢をベランダに出す。出す前に少し剪定をする。パンをこねる。たまごやきを焼く。水かさの増した川辺に、ひと束だけ明るいピンク色の花が咲いている。パンを分割して丸め、二次発酵の間に昼ごはんを食べ、焼く。全粒粉のいい香りがする。
私が常々望んでいるのは、清潔な生活だ、と思う。清潔で安心で安全な生活。
六月十九日(水)
619という並びを見て、思い出す人がいる。でもただそれだけのこと。
労働、買いもの。出勤前に、霜がこびりついた冷凍庫の引き出し部分を出しておいたので、帰宅して洗う。とても綺麗になった。透明! と思った。私は透明なものが好きだ。透明なものと、白いもの。
トマトを切りきゅうりを切り、人参をオイル煮にする。まいたけをほぐし、ピーマンをおかか和えにする。
DIMSCENEという曲がある。そしてDISTRESS AND COMAという曲がある。どちらもDIMというアルバムに収録されている。DIMというアルバムは、恐ろしいアルバムだと思う。私は四月の真ん中から、彼らの曲を聴けなくなってしまった。でも頭の中ではさまざまな曲が流れていて、それを止めることはできない。
このアルバムが出た時、私は高校生だった。夏だった。自分がどんな髪型で、どんな服装をしていたのか、どんな筆圧でどんな字を書いたのか、くっきりと覚えている。夏の空気が肌に触れる温度と湿度も。木々の緑や、早朝の霞んだ香りや、ミルクコーヒーの甘さとつめたさも。夕暮れの鮮やかな赤と紫の空も、漆黒になりきらない夜の曖昧な暗さも。私はからっぽで身軽だった。金色のくまをぶら下げた鞄一つにいろいろなものを詰め込んで、運んだ。自分のからだと、孤独を。今その二つは溶け合っているけれど、あの頃はまだ別々だったから、そうやって運んだ。孤独は両手で胸に抱えるようなものだった。今はもう私自身が孤独だし、孤独は私自身になってしまった。
何もできないくせに何でもできていた、あの頃は。今は何でもできるくせに何もできなくなっている。
風が吹いて、花々が揺れる。薄紫の、エリカの花。薄紫は集まって、圧倒的な紫になって、その中で私は眠る。
六月二十日(木)
掃除。洗面所をややしっかりめに。化粧パフを洗い、古いバスタオルを切ってウエスをつくる。出しっぱなしになっていたブランケットをようやく洗って干す。
トマトを切り、きゅうりを梅干しとかつお節とごま油といりごまで和える。たまごやきを焼く。豚肉とまいたけを炒める。
六月二十一日(金)
ストレスフル。
六月二十二日(土)
買いもの。帰って、夫は実家と図書館へ。私はトマトを切り、にんじんと玉ねぎとツナをマリネにする。レタスを洗いちぎる。
向かいの家の庭によくいるふわふわの猫、ふわ子が子猫を産んだらしい。黒い子、茶色い子、グレーの子、色は違うけれど、みんなちいさくてふわふわしている。かたまって眠っているのをよく見かける。ふわ子だけが眠っている時もある。
晩は豚肉となすを炒める。ストレスフルなので食後にハーゲンダッツ。やっぱりマカデミアが一番好きだ。
黙りたい。黙って、静かに暮らしたい。エリカの花に、私はなれない。
六月二十三日(日)
雨は一旦やんでいるけれど、ひどい湿気。
労働。トマトを切り、きゅうりをピクルス液に漬け、ピーマンを梅とおかかで和える。油あげとねぎの味噌汁を作る。日曜美術館を見る。具象と抽象について、とても腑に落ちることを聞く。真実とか本質についても。
よく見ること、それをやめてはいけない、と思う。やめたくても、やめられないのだろうけれど。
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