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20240701-0707



七月一日(月)
 明け方大雨。労働。疲労困憊。帰りも雨だと思っていたけれど晴れていて、でもまたくもり、気がつけば雨。ふわ子はいつもの場所でくったりと眠っている。
 たまごやきを焼き、鶏肉とズッキーニを焼く。味つけは塩と黒こしょうだけ。料理や洗いものをしながら、区切りがつく度にソファーに横たわる。体力がない。湿気でからだが重たいしベタベタしている。眉間にニキビがふたつできている。

七月二日(火)
 雨、労働、買いもの。いつでも食べものが買えるところで働いているのは危険だなと思う。買いものをしている間に雨はやみ、晴れ、蒸し暑い。
 もう十年以上も前のことだけれど、雑誌をつくりたいと思っていたんだよなあ、と、ふと思い出す。それはつまり世界が欲しかったんだな、世界をつくりたかったんだな、と思う。私はここでよく世界という言葉を使う。私の世界。傲慢で切実な世界。
 たまごやきを焼き、きゅうりを梅とおかかで和え、オクラをごま和えにする。みょうがと大葉を刻んで、豆腐にのせる。

七月三日(水)
 三時半頃目が覚めると、ラジオでもついているのかと思うような音。かえるや虫や鳥や冷蔵庫やさまざまな音が混じっている。一時間後にもう一度目覚めた時は、しん、と静かだった。
 霧。雨ばかりだったせいか、ベランダのフランネルフラワーはぐったりしている。ラベンダーも、復活しかけていたのにまた枯れてしまった。雨よけに、ビニールのカバーはしていたのだけれど、これがよかったのか悪かったのかもよくわからない。どこかで猫がけんかをしている。
 掃除をし、たまっていた家計簿をつけ、美容院へ。五センチほど切ってもらう。蒸し暑い。帰り道、紫色の花をたくさんつけた大きな木のある庭を見る。ジャカランダ(紫雲木)という木のよう。
 たまごやきを焼き、トマトを切り、人参を切りひじきと油あげと煮る。まいたけをほぐし冷凍する。なすと豚肉を炒める。最後に刻んだ大葉をぱらぱらと散らす。
 お金があったら、アパートかホテルをつくりたい、という話を夫にする。そして学生時代につくったマンションの広告についても。「ああいうことだよね」と。
 私は生活に執着している。破綻した環境で二十年も生きてしまったし、そこで染みついたものたちで私のからだも心もぼろぼろで、そんな自分に生活をきちんとしていく自信なんてこれっぽっちもないのに、執着している。そして失敗し続けている。絶望して、生きることをいつもやめたがっている。だからこそ安らかな場所を求めている。うつくしい世界を祈っている。猫のような、くだもののような、夜のような、みずうみのような。

七月四日(木)
 目が覚めた瞬間から疲労。
 労働、買いもの。ラムレーズンのアイスクリームを買って帰り、あたたかい緑茶をいれて食べる。アイスクリームは私を裏切らない。トマトを切りきゅうりをピクルスにし、久しぶりに安くなっていたブロッコリーをオリーブオイルと塩で蒸し焼きにし、半分はすりごまとマヨネーズと醤油で和える。豆腐とねぎの味噌汁を作る。

七月五日(金)
 労働。雲のない快晴。暑すぎる。休憩時間に塩飴を舐める。からだよれよれ、頭がんがん。
 キウイを切りはちみつで和え、トマトを切り、豚肉となすとピーマンを炒める。夏の味がした。

七月六日(土)
 一時すぎ頃目が覚め、トイレに行き水を飲み、そこから眠れなくなる。扇風機の音、冷蔵庫の音、かえるの鳴き声、全部混ざってとても大きく聞こえる。一時間ほどうとうとし、まぶたを閉じているはずなのにそこにあるハンガーラックがくっきりと見えて、今眠っているのか起きているのかわからなくなりながら、起きる。今日も暑い。
 眠れない間、世界のことを考えていた。雑誌もアパートもホテルも世界なんだろうな。それから、あの人たちのことや、自分のこと。うまくいかないことについて。
 ドラッグストアへ行き、よれよれと帰宅し、めんつゆをつくる。夜はそうめんが食べたいと思って。
 多くの人は名前が欲しいし名前をつけたがるんだな、と思う。名前があった方が安心なのだろう。たくさんの名前、たくさんのもの、たくさんの人、たくさんの言い訳、たくさんの祈り。
 春から外国の方と一緒に仕事をしていて、彼女の使う日本語に私はしばしば震えてしまう。私たちの誰よりも正しい日本語の使い方をしているんだろうなと思う。流暢、ということではない。むしろたどたどしくて、わかり合えないことが多いのだけれど、彼女のシンプルな言葉を聞くと、私は泣きそうになる。言葉は本来こういうものだったんだと気づく。
 昼は久しぶりに炒飯(焼き飯?)をつくり食べる。いつも塩と醤油でぱぱっと味つけをするのだけれど、今日は炒飯の素。何年ぶりに使ったんだろう。夜は予定通りそうめん。

七月七日(日)
 働かなければお金はないし、片付けなければ部屋は汚いし、ご飯をつくらねば食べることはできない。そういう当たり前のことに、しばしば絶望する。頭を働かせ、考え、手とからだを動かし続けなければならない。
 夫に「何を求めている?何が欲しい?」と尋ねたら、長い時間考えてから「人としても、仕事も、評価されたい」と答え、「それって認められたいってこと?」と尋ねたら、「そういうこと」とのこと。
 夫「Kさん(私)は?」
 私「清潔、安心、安全」
 夜、胃が痛く早々に眠る。

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