無題。

2020年1月1日0時00分。
ベットの脇に置かれたデジタル時計が、日付を超えたことを僕に教えた。

特になんでもない水曜日の深夜、ベッドから起き上がりテレビをつけると男性アイドルがコンサートをしていた。ここまで人数がいるとイケメンでも顔の見分けがつかない。きっと僕が混ざっても分からないだろう、その考えは心の中でひっそりと否定をするのだった。
少し硬い抱き枕をどかし、出かけるかとダウンの埃をはらう。

「これ、臭いな。嫌いな香りだ」

確か、数年前引越し祝いで誰かが置いた加湿器。そこからする柑橘系の香りは、鼻をツンとつき苦手だ。カチッとスイッチを押すと水蒸気と共に香りも落ち着いた。
すると、消すのを見計らってたかのようにテーブルの上のスマホが今流行りのアイドルの歌で着信を教えた。このアイドルの曲はさっきテレビで聴いた。
スマホの画面には『ユウタ』という名前、友人だ。否、果たして友人なのだろうか。

「ねえ、出ても構わないかい?」

ベッドの上に転がる抱き枕。もう抱いて眠れるほど柔らかくないだろうそれは返事もせず、ただ苦しそうな表情で虚空を見つめていた。ああ、ごめんね。死んでしまったんだね。

スマホの着信が途絶え、メッセージが数件送られてくる。

『ハルナ、あけおめ』
『まさか寝てないよな?』
『どうせカウコン見てるんだろ』
『そういや、今日は来ないでってどういう意味だ?』
『既読無視かよ〜』

僕はロックが解除されてるスマホで、ただ1件

『写真を送信しました』

これは起承転結もない、特になんでもないお話。

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