「みそひともじ」をやってみるかい

前回からの話の続きで、石川旅行について書こうと思ったが、疲れたのでやめる。きっと書いても楽しくないから。

2024年のいつだったか、私は「やってみるかい」という催しに参加した。これは端的にいえば今年やってみたいことを100個書いてみて見せ合ってみようという催しだ。詳細は、いつか開かれるだろう「やってみたかい」という「その後」を話す会の時にでも書こうと思う。

100個のうち、私はやってみたいことの1つとして「短歌を詠んでみる」ことをあげた。短歌にはそれまでも何となくの関心があり、「俵万智」さんの名前の付く本はブックオフでみたらとりあえず買うようにしていた。(歌人の名前を俵さんくらいしか知らなかった)でも、自分で歌を詠んだことはなかった。会の趣旨の通り、「やってみるかい」してみようと思った。

「みそひともじ」は31文字のこと、つまり5・7・5・7・7で構成される短歌の事を表している。私は、日ごろあったことや、これはリズムがいいなということを「みそひともじ」おこしてみるようにした。やってみると難しい。そして楽しい。へたっぴでもなんとか音の制約をクリアして、今自分ができるレベルでリズムをつける。とりあえず詠んでみる。

事故をしたので車関連の事を想起したくないが、教習所に通っている頃、私は自動車関連の短歌を3つ詠んだ。そして何の気なしの「やってみるかい」精神で市の広報紙の短歌欄掲載短歌募集にその3首を送った。

・「ゆずりあいと思いやり」をゆっくりと蛍光ペンで確かになぞる
・新鮮な免許を持ちてハンドルを教習通りに左へまわす
・信号や標識守ってきたけれど吾の愚かな恋は脱輪

1首目は、自動車学校での学科の授業での時のことを詠んだ。教わる1ページ目には「ゆずりあいと思いやり」という文言があり、特に専門用語でもなく本来はマークしなくていい箇所であるが、初めての授業に緊張した私は、この言葉は絶対忘れてはいけない大切な言葉だからしっかりとマークしなきゃと感じた。その様子を表したかった。なんかもう事故をおこしてしまったので少し滑稽に感じる。でも、忘れてはいけないというのは確かにそうだ。
2首目は、免許センターでおそらく聞き間違いだとは思うが、免許をお持ちの方は「一番新鮮な免許をお持ちください」というアナウンスが聞こえた気がして、面白い言葉だなと感じて詠んだ。その日、初めて免許証を交付された私にとって免許証は市場に運ばれる魚同様「新鮮」そのものであり、それを携帯し緊張しながらハンドルを初めて操作する様子を表したかった。3首目は、恋の様子を自動車の運転にたとえて詠んだ。一生懸命、教科書にのっている法律やルールを勉強して走り出した恋も、やがて思いがけない側溝にハマってしまって抜け出せなくなってしまう様子を表したかった。

3首のうち一番気に入っているのは「新鮮な免許」という言葉が面白い2首目で、気に入っていないのはなんだかバツの悪い3首目だった。
2か月後、広報誌が届いて裏面の短歌欄を見てみるとまず真っ先に自分の名前があることに目が行った。ちょっと出したのを忘れかけていたので、驚き、そして素直に嬉しかった。しかし、なんの歌が選ばれたのだろうとみてみると3首目「恋は脱輪」の歌だった。
私は、直観的に「まずい」「余計なことをした」と感じた。市内の皆様に、本名フルネーム付きで、「私、愚かな恋、してま~す(ました)!!!」と言ってしまったようなものなのだ。選んでいただいた嬉しさを持ちつつ、セルフ公開処刑をしてしまったと私は肩を落とした。そして、家族の誰も読まないように、素早く広報誌を雑紙入れにそっとしまった。

何はともあれ、いろんなことを「みそひともじ」におこしてみるのは楽しい。「やってみたかい」の開催も心待ちにしている。



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