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試験問題の解き方(分からない問題の対処法)

皆様、お疲れ様です。

前回の記事(解答の流れ)の続きです


分からない問題に出会ったとき


どれだけしっかり勉強していても一目ではまったく分からない問題が必ず出題されるでしょう…。

そのような問題に出くわしたときにどのようにアプローチするか…。

前回の記事で説明した通り、原則後回しにしましょう。

場合によっては全問題の半分以上になるかもしれませんが、焦る必要はありません。

他の受験生もきっと同じような状況です。

全ての問題を一通り回答してそのような問題だけになれば、じっくり取り組んでみましょう。

基本的には既存の知識をもとに消去法と推測を駆使して正解を導くことになります。

問題を解く上で、既に皆様が実施されていることかもしれませんが、分からない問題に出会ったときのアプローチの仕方を次にいくつか紹介します。

正解を導くまでには至らなくても、選択肢を絞り込むことができる例も多いです。

①選択肢同士の矛盾点を探す


選択肢をよく読んでみましょう。

その中に、正しい選択肢であれば他の選択肢が誤りになるようなものがあるかもしれません。

そのような選択肢同士の矛盾点を探ります。

例として、第100回問196を載せます。


選択肢2「溶解後1時間経過したものは、廃棄する。」が正しい選択肢であると仮定すると、選択肢3で記載されている「持続的な投与」は不可能になります(時間をかけて投与している間に廃棄しないといけなくなるため)。

選択肢2と3の記載が矛盾しており、どちらかが正解であることが分かります。

ちなみに、次の問197は以下の問題となっております。


選択肢3と5が正解です(脂肪乳剤であることから透明でなく凍結もできず、脂溶性が高いのでポリ塩化ビニルが溶出してしまう…と消去法で答えを導けます)。

選択肢3の文章中に「点滴静注することができる」と記載があるため、問196は選択肢2の文章が誤っており正解であることが分かります。

アルプロスタジル注射液は調整後何時間まで安定か?…投与法は点滴静注かワンショットか?…といったことまで知っている受験生はほとんどいなかったと思います(僕も第100回の受験生でしたが、知らなかったと思います)が、今回紹介した考え方で正解を導けた受験生はいるはずです。


②リード文をしっかり読み込んでみる


リード文中にヒントが隠されている例もあります。

例として第107回問276を載せます。

(注)にライゾデグ配合注は溶解インスリンアナログであると記載があります。

つまり、元から溶解しているので懸濁させる必要はないということが読み取れ、選択肢2は誤りであるとわかります。

第107回問285も同じパターンで選択肢を絞り込むことができます。


(注)徐放錠と記載があります。

したがって、速やかに崩壊させる必要はありませんので崩壊剤を含んでおらず、選択肢4は誤りとなります。

さらに、徐放錠かつ腸溶錠という製剤は存在しませんので選択肢5も誤りと分かります。

長い問題文は読むのも嫌になると思いますが、そのような問題の方がむしろ簡単なケースも多いです。

分からない問題に出くわしたときは、文章の多さはヒントの多さだと考えて、じっくり丁寧に問題と選択肢を読み込んでみましょう。


③分からない単語の意味を推測する


これまでに見たことのない言葉が出てくることもありますが、そのようなときは自分の持っている知識や知っている言葉から意味を推測してみましょう。

例として、第103回166に使われた「電気化学ポテンシャル差」という表現についてです。

このような言葉が出題されたのは恐らくこの問題が初めてです。


電気化学ポテンシャル差という言葉の意味は一目では分かりにくいと思いますが、促進拡散とはトランスポーターを通したイオンの濃度勾配に従った拡散(イオン濃度の高い方から低い方への拡散)であることは基礎知識として持っているはずです。

イオンの濃度勾配があれば「電気」的な差が生じ、その差がすなわち「化学ポテンシャル(エネルギー)」であると推測できれば、選択肢1の文章は「促進拡散型トランスポーターは、イオン濃度勾配のエネルギー差を駆動力とする」と読み替えることができ、正解であることが分かります。

分からない医薬品の作用機序を推測する際は、その医薬品と類似した物質を連想する方法が有効です。

例えば、ドカルパミンなら“パミン”とあることから、ドー“パミン”と関連した物質なのかな?…メチロシンなら“チロシン”とあることから、チロシンと何か関係があるのかな?…といった具合に作用機序を推測できます。


④仲間外れなものを探す


特に化学や衛生の構造式を選ばせる問題で有効です。

構造式を選ばせる問題では、構造中の共通点と違いを見極めてみましょう。

例として第107回問207を載せます。


それぞれの構造を見比べると、選択肢4の構造だけ共役構造が無いことに気が付くと思います。

正解は選択肢4です。

選択肢4以外は抗酸化作用を示すビタミンであることを根拠に選択肢4を選んでも良いです(一般的には知られていないかもしれませんが、ビタミンKも抗酸化作用を示します)。

第100回問122も同様の考え方で解けます。



選択肢1以外は全てナトリウム塩です。

日本で着色料として使用可能な合成タール系色素が、酸性の水溶性物質だけであるということをド忘れしていても、構造式の比較から正解を導くことが可能です。


⑤計算問題は単位に着目する


計算問題は、単位に着目すると立式しやすくなります。

例として第103回問175を載せます。


求めるのは比表面積(m2/g)です。

与えられた条件は試料(g)、窒素ガスの単分子吸着量(mol)、アボガドロ定数(mol-1)、窒素ガスの分子占有断面積(m2)の4つの数値であり、これらを使って単位が(m2/g)の数値を導きます。

まず、分子占有断面積(m2)を試料(g)で割って得られる数値((1.6×10-19)÷(2.0)=8.0×10-20)の単位は比表面積(m2/g)と同じになります。

ただし、この数値は窒素分子1つあたりの比表面積になるので、さらに吸着している窒素ガスの個数を掛ける必要があります。

単分子吸着量(mol)とアボガドロ定数(mol-1)を掛けて得られる数値((3.0×10-2)×(6.0×1023)=1.8×1022)は単位が無く、試料に吸着している窒素分子の個数になります。

これら二つの数値を掛けると、試料の比表面積(m2/g)が求まります((8.0×10-20) ×(1.8×1022)=1.44×103となり選択肢4が正解)。

計算を行う際は単位の接頭語にも注意しておきましょう(JとKJ、gとmgなど)。


複雑な計算問題を極力簡単に解くには…


第106回問92の問題を例に載せます。

立式自体は簡単ですが、計算が途中3桁の数値1つと4桁の数値2つの掛け算となり、非常に面倒です。


無水クエン酸の量(mg)
=水酸化ナトリウム液モル濃度(mol/L)×水酸化ナトリウム滴定量(ml)×ファクター×無水クエン酸分子量(mg/mol)×(水酸化ナトリウムに対する無水クエン酸の対応量)
=1×7.85×1.025×192.12×1/3
=7.85×1.025×64.04

この数値をそのまま計算すると非常に時間がかかる上に、計算ミスをするリスクも高いです。

ここで、5=10/2と置き換えられることを利用すると、7.85=15.7/2、1.025=2.05/2=4.1/4となり、元の数値よりも多少簡単にすることができます。

(与式)=(15.7/2)×(4.1/4)×64.04

さらに、見やすくするため10の乗数倍にして一度まとめると、

(与式)=(157×41×6404×10-4)/8

6404を8で割ると800.5になります。

(与式)=157×41×800.5×10-4

今回計算に用いた数値のうち最も桁数の少ないものは7.85なので、有効数字3桁で解答すればよいことになります。

正解は有効数字3桁の2、3、4のいずれかになりますが、3つの選択肢のうち数値の近い2と3の違いは有効数字2桁目の数値です。

したがって、800.5≒800(有効数字3桁)とみなして計算しても解答に差支えはありません。

(与式)≒157×41×800×10-4
=157×41×8×10-2
=1256×41×10-2

4桁×2桁の計算にまで簡略化することができました。あとは単純に計算するだけです。

(与式)=514.96

正解は③番となります。

計算をスムーズに解くには下記の様なテクニックがあります。

・5や2から10を作る(10の乗数倍以外の桁数を減らす)
・約分して簡単な数値へ変えていく(桁数が大きい数値同士の掛け算や割り算は極力最後に回す)
・近似を利用する(有効数字の考慮が必要な物理の計算では使えないこともあるので注意)

最後に


選択肢を2つに絞りこめたけど、どちらが正解か分からないので直感で選ぶ…。

その後の見直しで、やっぱりもう一方の選択肢が正しいのかも…と悩むことがあると思います。

何か根拠があって選択肢を変えるのは問題ありませんが、そうでないなら最初に直感で選んだ方で回答することをお勧めします。

直感が正しいことは割と多いのかもしれません。


長い文章でしたが、お読みいただきありがとうございました👍

卒業試験に国家試験、頑張ってください😀

以上

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