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すきやき

けいひげです。


すきやきを見ると思い出す、遠い思い出。



十五年前、私がアラサーだった頃、

私は主任になっており、二人の部下をかかえてました。


一人は、私より2歳年下のイケメン、大野さん。
もう一人は、5歳くらいしたの女の子で、小宮さん。
(どちらも仮名です。)


ある日私はこの二人を呼び、こう宣言しました。



「わたしは、すきやきが、食べたい!!」


はぁ?何言ってんだこのおっさん・・みたいな目で見るのはやめなさい。まあ二人とも、聞きなさい。


私は北海道出身である。だからと言うわけではないが、
すきやきと言うものをマトモに食べたことがないのだ。

今私たちは、「東京」にせっかく住んでいるのだ。
一度でいいから、サザエさんに出てくるような
マトモな すき焼きを食べさせてくれ。


私の熱意が通じたのでしょう。
この二人も北海道出身だったからか、確かにマトモに食べたことがないな、そんな話になりました。


いいぞ君たち、乗ってきたではないか。


そこで仕事そっちのけで、一大プロジェクト
「東京ですきやきを食べる」を立ち上げました。


幹事はそう、小宮さん。まかせたぞ。
金は心配するな、こっちで出す。


小宮さん「は!私めにお任せください!」


おお、いいねぇ。
いつにもまして、やる気にスイッチが入ったようだ。
彼女のサポートはまかせたぞ、大野君。


日程は三週間後に設定しました。
もうそこから、楽しみで楽しみで。


事あるごとに二人に進捗を確認しました

「どうだね?わたしのすき焼きは、店の手配は順調かな?」

小宮さん「大丈夫っす!バッチリ近場で良いところを押さえやした!」


何そのキャラ?
まあ、いいか。大野君もまかせたぞ。

大野君「おまかせあれ、この大野にお任せあれ」


・・なんか同じ事を二回言って逆に不安だが、
まかせたぞ。



そして当日。
部下二人にいざなわれて、店屋に到着しました。
お、この店、趣があっていいぞ!


受付に話し、個室に通される三名。
とうとう私の宿願が叶うのだ。


こちらですーと、案内され小部屋。そこには


底が深そうな蓋つきの鍋と、薄い牛肉皿。



ん?


あれ、これってあれに似てるな。
ん?ど、どうなの?


小宮さん「と、最近の東京のすき焼きとは、
こうなのではないでしょうか。
ほら、蓋を開けますよ!」



鍋一杯にお湯がはっており、昆布まで浮いてるよ・・


これはあれだ

しゃぶしゃぶだね。



まさかの展開に張り詰める空気、三人とも無言のまま
着席。どうしよ、この空気。。。


小宮さんに至っては、ずっと小声で「シャブシャブ・・スキヤキ・・」を繰り返している。落ち着きたまえ、小宮さん。


静寂を破ったのは、大野君。
小宮さんをフォローしようと思ったのでしょう。
優しい男なのです。


「しゃぶしゃぶでも、いいじゃないですか!美味しく食べれれば問題ないっすよ!」と言い放ち、次の瞬間


大皿の肉を全て鍋に投入


「やめろぉぉ!
それは、しゃぶしゃぶですら無ぇ!!!」


え?え?と動揺する大野君。


彼のしゃぶしゃぶは、常に大量投入して食べていた
そうです。
それを横目で見て、爆笑する小宮さん。
まあある意味で同僚を救って偉いぞ、大野君。


その後は、笑いの絶えない素敵な会になりました。
本当に良い思い出。そして不思議な体験をしたなぁ。




そう、本当に不思議なんですよね。



その時から15年たった今、

大野君はご近所に住み、今も仲良くしており、
小宮さんとわたしは結婚し子供までいるんだから。


当時は、こんな風になるなんて思わなかったな。


おしまい。

サポートいただいた分は、全て息子に渡します(*´ー`*) ありがたやー