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自転車のその先に5

車に乗り込んだ。
僕は後部座席に乗った。荷物を横において、シートベルトをつけている最中もずっとじいちゃんは僕に話しかけくる。
「元気だったか、えらい大きくなったな、ちゃんと食べているのか、勉強はどうや、かたい子やな」
時折、知らない言葉、方言が出てくるけど、かたい子ってのがひっかっかった。じいちゃんに「僕はかたいの?」って聞いてみた。「そうや、かたい子やー」確かに成長期で背は伸びてきている、それに比例して体重はと言うと、純増とは行かず、微増だ。痩せてるから骨がゴツゴツしてるかもしれないけど、そんなこと言ってくる?って頭で「はてな」を浮かべた。
しかし、その謎はばあちゃんによって解決した。「かたい子って、いい子ってことよ」

じいちゃんの提案で、自転車の部品を今日、買いに行くことにした。「金沢駅まで車で来たし、そのついでや」っと。
僕が「明日、行くってお店の人に話してる」って言っても、「今日もやっとるやろ、今日は天気がいいし、行ってしまったら楽やろ、明日は違うところを予約しとるし」。
僕は「(予約って)どこに行くの?」、「そりゃ、行ってからのお楽しみや」、「そうんだんだ、明日がいいんだけど」。
運転手がそう決めたら、従うしかできない。ばあちゃんは隣で呆れた様子で二人のやりとりを聞いていた。じいちゃんに意見しても意味がないことを知っているかのようだ。久しぶりに会ったじいちゃんは相変わらず自由な人だ。
僕は小学2年生の時に一緒に温泉に入り行ったことを思い出した。昔ながらの銭湯っといった感じ。顔見知りでもいるのかと思うくらい、いろんな人に声をかけていた。天気の話や経済の話、脱衣所に吊り下げられているテレビの話題。
銭湯を出た時、僕は「じいちゃんは知り合いがいっぱいだね」っと言うと「うん?知っとる人おらんかったよ」と。僕は驚いた。あんなにたくさん話してた人なのに、他人と話していたなんて。小学生の時の僕は衝撃だった。


僕は心の中で「お店の人になんて言おう、明日行くって言ってたのに、怒られないかな」

しばらくして、工場に併設されている売店に到着した。駐車場から売店まで少し距離があった。僕は緊張がMAXに達した。


が、じいちゃんがお店の人に話をしてくれて、すんなりと僕の手のひらに部品が置かれた。

お店の人に「これで間違い無いですか?」と言われた。
父から聞いていた部品だから、間違いも何も間違いかもわからない。
ただ言えるのはこの2センチの部品のために僕ははるばる金沢に来たのかと膝から崩れ落ちそうになったのを堪えた。
「多分」
っとお店の人に言って、代金を払い、お店を後にした。


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