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自転車のその先に6

それからじいちゃんとばあちゃんちに帰った。
この家の木材は全て檜を使った、こだわりのある木の家だ。
じいちゃんが「いいだろう、この匂い」と言ったけど、
僕はこの匂いを覚えている。
何年経っても同じ木の香りがする。
なんだろうこの懐かしいっと思う匂い。

じいちゃんとばあちゃんとたわいも無い話をしつつ、じいちゃんは早々と寝てしまった。
ばあちゃんは一通りの家事が終わったら、同じく寝てしまった。
年寄りは寝るのが早いなぁと思いつつ、22時を過ぎる頃には疲れからか僕もウトウトしてしまった。



翌朝、テレビ体操の音で目を覚ました。
じいちゃんとばあちゃんが体操をしている。思わず、僕はスマホを向けた。なんだか、一所懸命に対応している姿が愛らしいと思ってしまった。

僕はばあちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べて、じいちゃんが入れてくれたコーヒーに牛乳を足して、飲んだ。
それでも苦い。

今日の予定は、、、
じいちゃんが予約していたと言っていた、イベントだ。
なんだろうっと思いながら、地図を広げるじいちゃん。
ばあちゃんは出かける準備をしている。僕も慌てて準備を始めた。

一体どこに行くの?

じいちゃん「恐竜博物館」
僕「恐竜博物館!?」
  「どこにあるの?」
じいちゃん「知らんのか?」
僕「知らない」
じいちゃん「福井県や」
僕「福井県までどうやって行くの?」
じいちゃん「じいちゃんの運転や」
僕「えっ」

正直、落ち葉マークが貼ってある車で金沢から福井に行くのには抵抗があった。調べたら、1時間以上はかかる。

うーん、大丈夫なのだろうか。

じいちゃん「大丈夫や、休憩するし、大丈夫や」
大丈夫を連発する程、大丈夫じゃないって、テレビで言ってた。あれは錦鯉だっただろうか。
そんなことを思い浮かべながら、じいちゃんに言った「電車で行こうよ」
じいちゃん「あそこは電車じゃ行きにくいげん」
僕「えー」

こんなやり取りをしても無駄なのは知っている。僕は腹をくくり、靴下を履いた。
僕は恐竜博物館は行ってみたい、でも、じいちゃんの運転も怖い。僕は2つを比べた結果、行くことを選んだ。

最初に言っていた通り、30分に1回のペースで休憩をした。その途中で道の駅に寄ったり、ただのトイレしかないところだったり。
この日は晴れていたので風も気持ち良く、意外にじいちゃんの運転も悪くないなと一人では広い後部座席で少し窓を開けて目的地まで車を走らせた。

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