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「残酷なこの世界で、踊ろう」

MASQUERADE series No.01 ~31.


先の見えない様々な問題、
互いの正義から生まれる悪と死。
息苦しい。生き辛い。
目を背けたくなるような現実は時に残酷で、
それでも今を生きるために、
彼らは"仮面"を被る。

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残酷なこの世界で、個を失わないよう、
せめて自分らしく生きる。
そんな毅然とした、美しい姿を描きたかった。

今思えば彼らは、
わたしの理想の姿なのかも知れません。

▶Instagram 「MASQUERADEseries」

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MASQUERADE series が生まれて、8月20日で3年が経ちました。
多くの方々から、作品への嬉しい御言葉を頂き、描いてよかったと心から思える作品になりました、ありがとうございます。

3年の月日を経て、総勢31体の様々な姿を描き続けてきましたが、このシリーズに一度、区切りをつけようと思います。

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描き始めたきっかけは2020年。
新型コロナウイルスが世界的に流行し、連日流れる感染者、死者数の報道はとても辛いものでした。

笑顔なんて見せられない。困惑した表情が張り付いた人々が、ただ時間に流されるまま息をしていたように感じます。そんなコロナ禍でわたしはただ、感情を消化するように絵を描き続けていました。もはやそれは、我を忘れないための作業のように思えました。

そうではなく、わたしは今どんなものを描きたいのか。何を描いたら「楽しく」なって、どんなものが描けたら「幸せ」か。

心のままに鉛筆を走らせ、生まれたのが彼らでした。

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いつか、終わらせよう。

そう思いながら描き続け、辿り着いた31作品。

31の理由は
・素数であり、縁起のいい数字といわれている。
・今の自分の年齢。
・1ヶ月=31日間であること。日々、その繰り返しが人生になることから、平面である彼らに、命を見出したかった。

そして、キリのいい数字よりも、ひとつ進めることで、未来への可能性を残したかった。そんな想いを込めました。

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作品が増えていくに連れ、多くの方々から感想を頂く中、この作品の意味や意図、奥の深い部分を求められることが多くなりました。

描き続ける衝動の中には、何かしらの理由があったとは思います。しかしわたしはそれを言葉にすることが出来ませんでした。全て感覚であり、それを絵で表現する行為を何年も続けてきたからかと思います。「言葉にできないもの」は当たり前のようにわたしに寄り添いました。


ですが月日が経つに連れ、この行為が「独り善がりなのではないか」と感じることが多くなりました。


「さぁ、これがわたしの作品です。どや。」と、タイトルもキャプションも無い作品を公表するのも作家の自由ですが、言葉や文字で表して欲しい、もっと知りたいと思う人は一定数存在します。難しいですが必ずしも、この声に従う必要は無いと思います。言葉にすると"伝わってしまう"という恐怖が生まれるからです。

言葉にした結果、この作品の大切な部分が歪んで伝わってしまうことは大いに有り得ます。親切に噛み砕き説明しても、その全てを受け止めてもらえることは無いでしょう。「そうでは無くて―」と言葉で的確に説明出来ないならば、最初から絵という「感覚」のみを提示し、「好きなように受け止めてください、自由です」という方が、幾分気持ちは楽だと感じます。言葉に囚われない分、余白が生まれる。その余白に救われる。
わたしたちの感覚は違って当たり前だし、わたしはその余白を、優しさと思いたい。


そう思っていましたが、その優しさは自分への優しさに過ぎない。結局わたしは、わたしのことばかり守り続けていただけでした。無言で表面だけを提示する行為は、ある意味暴力的だとも感じました。

特にこのシリーズは今後も大切にしていきたいし、何より「育てていきたい」と思えた貴重な作品です。
今までわたしは「描き直す」という行為が苦痛でたまりませんでした。描いたら終わり。同じようなものは二度と描かない。そんなスタイルを貫いてきたわたしが、何度もアップデートを繰り返し、より良いものに育てていきたいと思えたのは、これが初めてでした。

シリーズ名は、自分ではなく信頼する人にお願いしました。他の手が入ることにより、わたしという枠を超え、未知の領域へと連れて行って欲しかったからです。

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今までわたしは、誰の手も借りずにひとりで作品を作ってきました。自分の世界を誰かに触れられたくなかった。誰かの要素が入ったその時点で、わたしの作品では無くなる気がしていました。そんな中、わたしの想像を超えるものを持つ人に出会い、世界は変わりました。誰かの力を借りることにより、こんなに美しい景色を見ることが出来るなんて知らなかった。

彼のおかげで「MASQUERADE」が生まれました。

「作品にぴったりの、素敵な名前ですね」と嬉しい言葉もたくさん頂きました。ただ動物の顔をした人の絵が、言葉により美しく!更に深みを増し、人々に浸透していくのを感じました。ドキドキした。堪らなかった。やっと形に成れた気がしました。

今は作品ひとつひとつに添える言葉を考えています。考えれば考えるほどに、愛が深まるのを感じる。この感覚、忘れてたな、と。


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もっと多くの方々に知って欲しいし、様々な角度から想像して欲しい。作品と向き合うその瞬間だけでも、あなたの脳を独占したい。その為に必要なのは、握りやすいドアノブであり、軋まずに開く扉であり、追い風に導かれるその先の忘れられない光景と、それを理解したいと願う相手の思考への補助。

それらを意識し、コミュニケーションツールのひとつである"言葉"を用いることが、わたしの新しい優しさであり、その結果、誰かの心を揺らすことが出来れば幸せです。


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31体のアップデートは今後も続くでしょう。ですが、MASQUERADEとしての新規制作は一旦お休みします。
シリーズというものを意識しすぎて、描くことが「作業」になっていくのが怖かったからです。

描きたい、よりも、描かなきゃ、が上回ることは、絵に対して申し訳なく思ってしまう。これが、絵を描くことを本職にしない理由の一つでもあります。怖いんです。いつか嫌になってしまいそうで。


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405の名前で活動を始め、2023年で11年目になりました。コロナ禍で先延ばしにしていたMASQUERADEの個展を、今年度どこかで開催したいと考えています。

印刷して形になってしまうのが怖くて、ずっと渋っていた作品集も制作予定です。

相変わらずのスローペースですが、描くことを辞めることは、ほぼ無いでしょう。

辞めるどころか、始まっているのかも謎ですが。


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2年前のnoteに、MASQUERADEが生まれた、主に外見の話を書いてます。宜しければ。

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