想いは良くしとかんとね〜

今は倉庫になっている、前に住んでいた家にいった。

探しものがあったのだ。

家は古く、すでに築80年以上は経っている。

玄関の木の格子戸をガラガラと横に引いてあけると

マスクをしているというのに

鼻腔を通して花の香りがしてくる…

ジャスミンだ。

今朝、洗面所で母の横で歯磨きしていた時のことだ、

何を思ったか日めくりカレンダーをめくりながら母が言った。

「やっぱり想念は通じるのよ…想いは良くしとかんとね〜」

…いったい何の話かと思ったらこう言うことらしい…

昨日のこと、母は父を歯医者に連れて行くことになっていた。

なっていたのにすっぽかしてしまったらしい。

父は最後の一本だった歯が抜けてしまい入れ歯を作ってもらっている。

母は16時からだと微塵も疑うことなく思い込んでいた。

ところが、その母が12時を少し過ぎた頃おトイレに入っていた時のことだ

なぜか不意にその日の予約が12時であったことを思い出したらしい。

自分の思い違いに気づいて母は慌てた…

そこへ電話がなって、大急ぎでトイレから出て電話をとったら

その電話は歯医者からの電話であったそうだ。

「すごいと思わない？」

母が言うには電話が鳴る前に電話の内容をキャッチしたのは

人の意識は瞬時に飛んでいくからだ…ということらしい。

つまり、歯医者で患者さんへ電話をしようという意識が起きたら

すぐに相手にはその想いが届いているというのだ。

…まるで急に物理学者にでもなったかのように

神妙な顔をして教えてくれる。

嗚呼、母よ！

今日も一日いと面白しかな！

放ったらかしの庭で誰にも手をかけてもらってもいないのに

太陽に向かって咲き誇るジャスミンのように

堂々とたくましく香りを放て！