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VR能 攻殻機動隊を見てきた

ものすごく久しぶりの更新になります。
VR能 攻殻機動隊を観てきたのでせっかくなので感想を書いておきます。

まず自分の知識でいうと、能を見るのは全くの初めて。ほとんど攻殻機動隊のファンとして観に行ったという感じです。ただ、能と攻殻機動隊とはかなり親和性というか繋がりがあるということは知っていました。アニメシリーズの2期「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」に出てくる文書が三島由紀夫著の「近代能楽集」をモデルにされていたり、押井守監督作品の中のセリフでも世阿弥の言葉が引用されていたり。
また「近代能楽集」は読んだことがあり、能というのは霊や男女についての物語があったり、あの世とこの世を行ったり来たりする話があるんだなあ、というくらいの感覚でした。

現実世界と電脳世界とが描かれる「攻殻機動隊」シリーズですが、進歩しすぎた電子化は霊能に近い存在になっていく、ということも書かれています。能と攻殻機動隊との独特の親和性の高さから、どんな作品になるのか、プロジェクトなのか興味があったため観劇してきました。

実際見てみて

開演前には下野紘さんのナビゲーションがありました。攻殻機動隊シリーズと能、今回のプロジェクトに合わせて開発されたVR技術に関しての説明がかなりわかりやすく、いきなり能を見せられるのではなかったので初見でも入りやすい演出になっていて助かりました。

ストーリーとしては、草薙素子が人形使いと融合し、公安9課を去った後、電脳世界で自分の同位体と出会う素子と、素子の影を追うバトーが描かれていました。原作でいうと1巻と2巻のストーリーを精神世界(電脳世界)の描写を中心におおざっぱにまとめたような感じ。

はじめは本当に初めての伝統芸能を勉強しながら見る感覚で「なるほど、生の囃子と謡(うたい)は迫力があるなー」とか、聞きなれない節まわしの謡の言葉を追いながらぼーっと見ていたら、突然舞台上の草薙素子の姿が消えました。思わず「熱光学迷彩か!」という、冒頭に登場するモブのような反応。

そこからは自分が見ているものが信じられなくなるような感覚で、舞台に噛り付きました。「脳がバグる」ような、まるで攻殻機動隊の世界に入ったかのような感覚に興奮しました。

もっとよく見たい

席の遠さで見どころのひとつでもある面のデザインがわからなかったり、若干の見切れ席のため完全に映像技術を堪能するまではいかなかったのは残念でした。パンフレットを見てみたら、『実際に能に使う面(おもて)は人間を模しているので素子とバトーの面は作り物らしさ、人形っぽさを意識しながらも能とかけ離れないようにした』とのことで、もっと近くでよく見たかったですね。

音楽に関しては基本的に囃子でしたが、途中電子音が挟まったり、攻殻的なエッセンスも感じました。

能というと古典の印象があったので言葉やセリフもわかりづらいのかな、という印象でしたが意外と聞き取りやすかったです。難解な言葉も合わさってかなり集中しなければいけませんでしたが「そもそも原作から難解だしな…」とおもいつつ。最初「公安9課」や「バトー」という単語が出たときの不思議さはありましたが、どんどん引き込まれていきました。

能楽堂にも行ってみたい

今回は攻殻機動隊シリーズの目玉でもある銃撃戦やアクションなどはほとんど表現されておらず、物語として濃厚とは言えませんが、伝統と最新技術と攻殻機動隊の世界観が生み出す体験としてはこれまで感じたことのない不思議なものでした。また、じっくり舞を見るという時間はかなり贅沢な時間でした。「井筒」や「道成寺」などの本来の能の演目も見てみたいので一度能楽堂にも行ってみたいと思います。

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