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『アイアンマン3』

いまやヒーローを題材とした作品やヒーローとされるキャラクターは数えきれないほどいますね。様々なヒーローの形がある中で、重要な要素としてヒーローの人間性やマインドの部分があると思います。敵や自分の持つ力との向き合い方やその葛藤も含めてヒーローの魅力だと思います。
これまでのMCU作品ではヒーローの内面や人間性というよりはヒーローになるまでの物語や、ヴィランと戦う姿を中心に描いていました。

『アイアンマン』と『アイアンマン2』も、トニー・スタークというよりはアイアンマンの進化を描いた作品でした。正体を明かしたヒーローに対する世間の反応というのが新鮮で、見ていて興味深かった点でもあります。しかし今作ではトニー・スタークの内面や人間的な成長を見ることができ、今までのシリーズで最も味わい深いと思いました。

珍しく弱気なトニー・スターク

今回特に印象的だったのは弱気なトニーの姿です。トニーは1年前の『アベンジャーズ』での宇宙人襲来を受けて心を病んでしまい不眠になり、再び宇宙人が攻めてくるのを恐れて追われるように新型スーツを開発しています。プレイボーイで自信家、プライドが高いトニーの印象が強かっただけに、これまでのようなアイアンマン像とはかけ離れたように見えました。

トニーの創造力で戦う

今作のヴィランはテロ組織です。メディアを通じてテロ組織に宣戦布告したトニーは自宅を襲撃され、避難した際にスーツすら故障してしまいます。自宅は見張られているため戻ることができず、設備のない田舎でスーツを修理しながら敵を追い、戦うことになります。これは『アイアンマン』の冒頭、トニーがテロリストに拉致されたシーンを彷彿とさせました。その場にあるものを使って敵と戦うトニーのかっこよさや、珍しいトニーの生身のアクションも見ることができました。スーツがあまり出てこないからこそ、クライマックスのアクションシーンでの興奮も最高潮になります。

人は自ら悪魔を創り出す

ヴィランのボスは元々体に障害を持った科学者で、そのハンデをなくすための研究をしていました。その研究に対する熱意がいつしか暴走し、ヴィランとなってしまいます。これはトニーと立場がよく似ています。トニーは胸にある爆弾の破片を心臓に近づけないためのアークリアクター技術を利用し、それがきっかけでアイアンマンスーツを発明しました。

物語の冒頭とラストに「人は自ら悪魔を創り出す」というトニーのセリフがあります。今作ではアイアンマンスーツをトニーが着用しなくとも操作することができるようになったり、アイアンマンが暴走するシーンがあったりと、アイアンマンスーツ自身がトニーから独立していっているようにも見えます。一歩間違えれば悪魔になってしまうヒーローとヴィランは紙一重だということを感じました。しかしそれでもトニーが悪魔にならなかったのはアイアンマンとしての強い心があったからでしょう。

「私がアイアンマンだ」

ラストシーンでトニーは手術の結果、これまでつけていた胸のリアクターが必要なくなります。40体以上作ってきたアイアンマンスーツをすべて爆破し、トニーの象徴でもあった胸のリアクターも海に投げ捨てました。アイアンマンとしての特徴をほとんど失ってしまいますが、それでもなお「私がアイアンマンだ」というセリフで物語を締めくくります。


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