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社会復帰したい社不 ~自室から自立まで~


 すごいタイトルになってしまったけどただの備忘録です。

 前回の日記にも書いた通り、有難い事に仕事が見つかり社畜になることが決まった。が、前回にも書いた通り、とんでもなく社会に対しての不安を抱えすぎた結果、行動のステータス値が30から1になった。

というわけで思い立ったが吉日。
黒髪ダサ子こと黒田ちゃんは社会復帰を頑張る事にした。

 厳密に言えば、他人と少しずつ関わって乗り越えようと思った。
ハードルクソ高いけどこのままにするよりかは多分、やってみた方がいい。あとはシンプルに何もしてないと逆にこのままどんどん悪化するんじゃないかと不安に苛まるので成功体験を積んでおきたかった。




難易度:低 レジ打ちの店員さんと落ち着いて会話


 会話といってもカジュアルな会話じゃなく金銭のやり取りをする上での会話です。ポイントカードありますか?→持ってますー、みたいなの。

 以前の日記に書いた通り、この簡単な会話すら現状難しい。あり得ないくらいどもってしまうし焦って変な行動を取る。

 なので、まずは毎日利用するスーパーのレジで落ち着いて上記会話をしようと決めた。毎日足を運ぶし1日ダメだったら翌日頑張ればいいので、気持ちは楽である。


 かごの中に入った食材たち。
 夕方時で女性も男性も入り乱れるレジの待機列。
 無我の境地で手を動かし複雑な支払方法を捌くレジのプロ店員さん。

 深呼吸してマイペースにかごを差し出し、会計が始まる。


店員さん「ドライアイスご入用ですか?」
私「ア、アハ、ア、ハイお願い、します!」


 大好きな保育士さんに挨拶する幼稚園児みたいなデカい声がレジ売り場に響く。終わった。だがここで焦って応対したら更に怪しまれる。いや何もしてないけど。
 とりあえず深呼吸をする。今までの経験で相手が急ぐと自分も焦ってペースを乱される事がある。なので、自分の中のテンポを半分くらい落とすイメージでゆっくり喋ることを意識する。オタクの爆速クラップから秒針くらいのBPMに。

 そしたらなんかすごい上手く行った。
 なんなら混雑ピーク時に焦っていたのかやや高圧的だった店員さんの態度まで若干軟化し、『喋らなきゃ…!』という緊張さえどこかに行った。どもりもしなかったし、自分の声まで穏やかに。

 一回目でこんな上手く行くことある? と戸惑いつつ翌日も別の店員さんに同様の行動を取り、初日よりは疲れからか上手くいかなかったものの、一応ちゃんとできた。その翌日も。
 都会の喧騒、宜しくなかったという事…?

 自信がついた私は次のステップに移した。



難易度:中 店員さんにオススメを聞く


 ハードル高くね?
 というわけで友人の首に首輪とリードを付けて無理やり半ば美味しいご飯屋さんに入った。ちなみに友人はこの事を知らない。

 周りが中高生またはカップルで溢れかえる蛍光色みたいな壁紙が眩しくて何度か瞼をマッサージしつつ、私は店員さんを呼んだ。

店員さん「ご注文いかがですか?」
私「ア、エ、ア、エッ、ッスー…オスースメ……と、かって……」
店員さん「はい?」

すみませんでした。
生きててごめんなさい。
話しかけてごめんなさい。
虫は虫らしく地面張って花の蜜の吸い殻を食べながら生きます。


 と土下座したくなる衝動を抑えつつ、深呼吸して頭の中で文章を組み立てる。体内のリズムを落とす感じで。けどここは知らない場所、鼓動が半端ない。やべぇ。

私「すみません。えっと、オススメってあり、ありますか?」


挙動不審なくらい声震える私。
怪訝な目で私を見る友人。
店員さんの【早くそれハッキリ言えよ】を抑え込んだ営業スマイル。



地獄かここは(なお戦犯)。


 その後、店員さんからおススメを聞き出し、どうにかこうにか食事を済ませることが出来た。味はめちゃくちゃ美味しかった気がするが、なんかすごく甘くてどこが旨味なんだろうとぼんやり考えていた。まあ、こういうところは味よりも『誰と来たか』『思い出作り』『流行りのお店に行った事実』がきっと重要なのだ。誰かの良い1日の為のお手伝い。


 ちなみに普段は店員さんにオススメなんか聞かない私に対してどうしても行動の理由を聞きたそうだった友人に、質問される前に『店内、BGM大きかったからもっと大声で話せばよかったね』『最近メニュー選ぶのに時間かかりそうなら店員さんにオススメ聞いて決めてもらうようにした』の2つの言い訳を伝えておいた。オタクの悲しい意地。



難易度:中 電車で席を譲る


私「ア、ド、ドウゾ……」
杖を持った高齢者の方「次降りるんで大丈夫です」

お元気ですね。



難易度:高 献血


 結論から申し上げますと大失敗でした。

 まず思い立ったが吉日、献血の旗を見かけてふらりと立ち寄る。だがなんと受付時間が終わっていた。ただ向こうも血を欲している慢性的な血液からなのか優しさなのか、無理やり時間を空けて入れてくれた。
 すみません、と断りを入れて受付へ。初回は説明必須なのとデータ入力をしないといけなく色々答える。問題はこの後である。


医者っぽい人「●▼××■●●●×××~?」
私(?)
医者っぽい人「●▼▼▼、常備薬は××▼▼×●! じゃここで××▼×●●▼」
私(???)


 流行りの猫ミームみたいな返答をしかけたがあまりに失礼なのでぐっと抑え、とりあえず簡単に会話。私の耳と相性が最悪で殆どの単語が聞き取れず、かといって『すみません、なんて言ってるんですか?』と返せば大失礼。でも本当に何も、何ひとつ聞き取れない。海外留学の際に訛りすぎて別言語になっていたホストファミリーの笑顔が脳裏に浮かぶ。あの時は慣れるまで1か月かかった。同じ屋根の下で暮らしているにも関わらず。

 医者っぽい人の猛攻尾は続く。


医者っぽい人「●▼××■●●●×××?」
私「え?」
医者っぽい人「に↓ひゃ↑く↑ご↓じゅう↑ミ→リぃ↑!!!!!」


 テンションたっか。

 そう言ってペットボトルを指す。あ、献血前に飲んだ方がいい水の量の事か。なんで非言語コミュニケーションの方が理解しやすんだ。
 ここで受け答えできない事に焦り、更に焦り焦りを呼び汗の量が尋常じゃない程に出る。多分、相当怪しかっただろう。この人、献血でよからぬことをするんじゃないかと。相手の立場だったら多分そう思った。そのくらい焦った。

 医者っぽい人の説明らしき何かを潜り抜け、いざよく見る車の中へ。
 車内では看護師さん2名、献血中の患者さんが1名いた。車の中で寝転びながら血を提供し、ベッドの傍らにいる看護師さんとお話ししたり、状態が見られたりするらしい。

 受付の看護師さんに促され、椅子に座った。
 そこで簡単な問診が始まり、腕をまくられる。


看護師さん「緊張してらっしゃる?」
私「ア、ハ、エヘ、はい」

看護師さん「汗の量すごいわよ」
私「ア、汗っかきな、ヘヘ、もので……」


 本当に泥棒みたいな喋り。
 疚しい事など何一つないのに焦って焦って更に焦りが加速する。

 とまぁここで血管を見られたのだが、どうにも生まれつき細すぎる体質のせいで今回は中止になった。せっかく時間空けてくれたのに、という申し訳ない気持ちがどんどん膨れ、自己嫌悪になっていく。泣きそうになった。

 

 看護師さんは優しく見送って下さりバスを出ると、


医者っぽい人「今日はナシだった~?」


 あ、聞き取れる。多分向こうも聞き取れないことを察知してくれたのか、喋りがゆっくりで今日初めて会話が出来た。普通にいい人だった。
 営業時間を延ばし、飲み物を貰い、体重データを受付と献血関係者に見せただけの人物となり、私は重い体を引きずりながら帰路についた。

 収穫なし。コミュニケーション×。
 大失敗である。



反省点:
① 聞き取れなかったら正直にやんわりと打ち明けるべきだった
② ハンカチを忘れずに持っていく
③ 焦りすぎるとまたどうしようもなくなるので深呼吸を挟む



 余談だが血管の太さは時間帯で変わるらしく、朝や夕方のような寒い日は縮む。食事直後や暖かい日中は大きくなるらしいので、これからは季節がもう少し暖かくなったら参加しようと思った。


勤務初日へ


 社畜第一歩の日。早速辞めたい。

 面談で話した人事さんと職場の先輩にご挨拶をし、たかったのだが最初にあり得ないくらい文法めちゃくちゃなことを喋ってしまい恐らく笑われた。うるせぇよ。

 ただ今のところ言いよどんだのはそのくらいで、後は不思議とほとんどどもらなかった。


 行動前に、もしくは行動初めに稼げる失敗は稼いでおけ。


 よく聞く言葉だが真理だ。
 赤信号は渡ってはいけません、くらいの当たり前で大事な事。


 失敗したら恥ずかしいし死にたくなるし消えたくなるしこの世にあるありとあらゆる幸せそうな事や人を憎んで恨んでなんで自分はこうならなかったんだろうなんで自分は不出来なんだろうと自己嫌悪に陥ってしまうが、それでも転んだ先の景色はちょっといいものかも、しれない。



 でも本当にコミュニケーションどころじゃないくらい仕事の量と求められることが大きすぎて既に泣きたいし辞めたい。無理だよこんなの、大体マニュアルないのに人を育てるって矛盾しすぎて搾った雑巾みたいになってるんですけど。なあ、本当に辞めていい?

こんなところ読む暇があるなら今すぐヘルシングを読んで下さい。