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陰謀論にハマった人のアカウントを遡ってみた


「孤独」
精神的なよりどころとなる人や、心の通じあう人などがなく、さびしいこと。
(Wikipedia「孤独」より)


フォロー・フォロワー0の鍵アカウントを作った。

理由は一つ。陰謀論にハマる人を観察したかったから。


自分が生きる過程で絶対に経験しないような行動や思想を持つ人の話を聞くのが大好きだ。
まるで自分がその世界に飛び込んだかのような気持ちになれる。
世界は広いんだと実感することが出来る。

陰謀論もまさにそう。
自分は残念ながら同じ意見を持つことは出来ないし、共感もできない。

けど、理解はできる。
その意見を持つ過程や持った後の行動には目を見張るものがあり、話を深く聞きたいくらいだ。実際やったらブロック不可避なのでやらないが。





私が最初に目を付けたのは、年齢不詳の主婦。
とあるアルファツイッタラーが大きく取り上げていたので、
非公開リストに入れて出来るだけ遡った。


横浜に住んでいて、いわゆる農薬に頼らない自家栽培を楽しんでいる。
子供とも楽しそうに暮らしており、夫婦仲も良好らしい。

どうして彼女は陰謀論にハマったのだろうか。



ツイートを遡ると、最初は陰謀論の「い」の字もない、
ただ自家栽培と家族が好きな母親。

Twitterを始めたきっかけも、自家栽培の情報収集が目的だった。

アカウントは2020年以前に作成されており、
コロナ騒動は特に関係ない様子だった。


「今日はトマトを収穫しました‼」


熟れた美味しそうなトマトと、
手でピースを作り喜びを表現していた。

いいねやRTは少ないものの、
同じく自家栽培を楽しむ人や農家さんから共感や賞賛のリプがぽつりぽつりとついていた。


変異が現れたのはその1年後。

とある政党への不満を書き連ねたところ、
3桁の反応や2桁のリプ数がついていた。

8割が肯定、2割がデマへの指摘や過激な罵倒だった。


見たこともない数字と肯定数だったのだろう。
そこで彼女はある政治系アカウントにこう返信していた。


「この世がおかしいと思うこの感情は、正しかったんだ」



そこから特定政党への批判がツイートに混じる。
野菜の収穫よりも、中継で大の大人がみっともなく威勢を張る姿に関心を持っていた。


だが長くは続かない。
次に彼女が落ちたのは、スピリチュアルだった。


スピリチュアルにハマる人のツイートには以下の特徴がある。

① 「気」→「氣」

② 〇〇に感謝、といった文章

③ 直感力


加えて輸血拒否・輸血否定もよく見受けられるが、
これは全体ではなく恐らく特定の思想にカテゴリされるので除外。


簡単な解説
①…GHQによる教育改革で「氣」から「気」に変更された、本来は「氣」でありこちらには言葉のエネルギーが含まれている、というが根拠は乏しい。
②…感謝すると幸せな気持ちになれるらしい?
③…事実よりも直感が大事という見方。神様からのお告げみたいな一説もあるが結局何が正しいのかは不明。


残念ながらきっかけは分からない。
恐らくDMで勧誘されたかインスタにたまたま出てきたか…といったところか。

そして「自然派」という単語がツイートに出始めていた。

オーガニックは最高。
日本の食品は添加物だらけで寿命が縮まる。
農薬は身体に悪い。
西洋医学より漢方や薬草の方が安心。

政治家の批判から徐々に「日本のありかた」に対する批判が増えていく。


そしてリプライをするアカウントも徐々に決まったアイコンばかりに変わっていった。
アカウントを作り始めた頃の農家さんらはいない。
彼女の周りには、やたら絵文字を多用する花や景色のアイコンが集まっていった。




政治系アカウントではなかった現象だ。
何せ政治を語ろうにもある程度の知識という基盤が必須になる。
社会がどのように構成され、どのようにお金が流れているのか。
そういった前提が必要不可欠だった。

彼女は世の中を語るとき、殆どが質問に回る側だった。
あとは分かった気になってツイートしたものもあったが、
敵味方問わず突っ込まれることが多かった。

徐々にツイートの内容は一辺倒になっていった。


「生活するうえで、なんとなく生きづらさを感じている。
これは政治家のせいだ」


誰かの意見を鵜吞みにして分かった気になっているだけで賛同を得られることもあったが、初めて政治批判をした時の反応数や祀り上げるようなリプライはもうどこにもない。


政治批判をよくするアカウントが求めているのは、
何も知らない人間が初めて世の中に疑問を持って声を上げる行為」だ。


だから、彼女は輪の中心から外れたのだ。




そして「政治家に怒るだけで何もしない人は要らない」と、
政治系ツイートで得たはずの「仲間」を殆どブロックした。

これは本当にその通りなのかもしれないが、
この手のツイートでフォロワーを手放す人の大体は「砂かけ」行為の正当化をしたがる。

「砂かけ」
オタクがAという作品にハマる
→A作品が好きな人同士と繋がる
→オタクがA作品に飽きる
→飽きたので辞めますとは言えず、界隈を批判して自分を正当化してやめる
→口癖は「お花畑」



そしてやや長い時間が経過し、2020年4月。

彼女はコロナは茶番、のタグを使いマスコミを痛烈に批判した。
初めて政治批判をしたツイートと同じくらいの反応だった。


……とはいえ私も人のことは言えない。
何せ同年3月頃に「コロナはもういいよー」と人気のない商店街を友人と歩いて談笑していたくらい非常に楽観視していたからだ。


閑話休題。

彼女はそこからコロナは嘘、世界が作り上げた陰謀、
バックにいるロスチャイルド家…と取り込まれていく。

彼女の周りにはいつも賛同しかなかった。

批判はすぐにブロックして晒し上げた。

その行為すら肯定されていた。


「世の中の真実に気が付けない人なんて
相手にするだけ時間の無駄だ」


そう繰り返すように呟いていた。


そしてついに始まる「ワクチンの大規模接種」。

彼女は当然のように反対した。
他の怪しげな陰謀論よりもワクチンの反対に熱烈だった。

Amazonで★1 or ★5レビュワー達が知識と感情で感想バトルを繰り広げている例の本を撮影し、ツイートした。



「これを読めばワクチンの仕組みが分かる。
私たちはみんな、医者に騙されていたの」



スピリチュアルに傾倒した頃からどこで仕入れたか分からない漢方やドクダミのような薬草で「浄化」をしていたが、
ここにきてあの本がその後押しをしていた。


と、思っていた。


本の次にこんなツイートが現れる。




「良かった、子供に一度もワクチン打たせなくて」

「産後にママ友に紹介されてこれに似た本を読んだ。
最初は半信半疑だったけど、
その時は怖かったから今まで何も打ってないんだよね」




〆は「だからこそ直感力を鍛えよう」だった。






生後間もない子供が打たなければならないワクチンは、
皮肉にも彼女の住んでいる横浜市が簡潔にまとめている。


こどもの予防接種について
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/yobosesshu/yobosesshu/child.html



彼女の賛否については語らない。

個人的には、そういう人とも共に生きられる世の中であればいいと思う。
だがこれはあくまで私の話であって、病気や感染症はそうではないとだけ言っておく。



それでも彼女は、そういった「危険」を「嘘」だとし、
また体が本来持つ免疫力で跳ね返せると言っていた。

目を通したことはないが、
あの本にもそう書かれていたのだろうか?


そしてワクチン批判が続き半年前。
今度はマスクに対して否定的な意見を呟いている。


「行動あるのみ」と、
近所から遠方に至るまで家族ともどもノーマスクだそうだ。


マスクの危険性について教育機関に物申している。

何度も、何度も。

教育関係者だけでなく市役所にも手紙を送った。
対面して会話もしていた。

否定が多かったが、校長先生だけは理解を示してくれたらしい。
笑顔でうんうん頷いて肯定的な言葉を下さったと喜んでいた。


現在、学校側に進展はない。






彼女のいいねを遡った。


「保育園がマスクしろとうるさいから卒園間近だったけどノーマスクでもいいところに移転した。これで子供が自由になれる」

「みんなどうして目が覚めないの」

「コロナ派の友人と縁を切った」

「(有料オンラインサロンの告知)」




コロナで悲しむ人の嘆きが多いように見受けられる。

彼女と世間の戦いはこれからも続くのだろう。

でも、それは一体誰のためなのだろうか。




※この記事はウォッチング中のアカウントへの誹謗中傷・特定を避けるため一部フィクションを交えております









おまけの補足


彼女はいわゆる「Q」には没頭しませんでした。
どうも宗教臭いとかなんとかで仲間だと思われたくなかったそうです。



こんなところ読む暇があるなら今すぐヘルシングを読んで下さい。