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石油危機が排気量を変える?小よく大を制す

ガソリンが爆発・燃焼するシリンダーのサイズには大小さまざまなものがあり、小は内径×行程が各5センチに満たない原付の小さなピストンから各4インチを越える(113.4 mm × 101.6 mm) 8.2 リッター (501.28 cu in) の怪力V8エンジンまで・・・・(鉄道や船舶用にはもっと巨大なものも)

1970年代最初のオイルショック以降は、省エネを旨とした新しい小型車がいくつも登場しています。

思えば初代の英国製(初代)ミニの誕生もスエズ動乱に端を発した石油供給不安がきっかけでした。ベンツが最小クラスの190Eを開発したのもやはり、第二次石油危機が契機です。小さな車を得意とするダイハツが70年代のオイルショック後に世に問うた小型車は5㎡カー。占有面積が3.3m×1.5mでほぼ5㎡。今ならほぼ軽自動車の枠内に収まりそうです。シャレードと名づけられたこの新型、エンジンは4サイクルながら3気筒という省資源志向のユニークな形態でした。4気筒よりもエンジンを軽く作れて、燃費も有利。その理由付けとして一気筒あたり333ccが最も効率のいいスイートスポットだと訴えています。

この志向は今や1500ccクラスにまで波及し、欧米の小型車には広く採用されるに至って日本車でも5ナンバーの大衆車で3気筒エンジンは案外ポピュラーな存在となりつつあります。4気筒はもはや上級エンジンなのか?スバルなどはかつて軽自動車の550ccエンジンを4気筒にしたほどでしたが・・・・。

他方で6気筒エンジンの最小はというとマツダがユーノス・プレッソ等に搭載した1800ccⅤ6エンジンや三菱がランサーほかに搭載した1600ccV6がありましたが、無闇にシリンダーを増やすと奪われる熱が増えてしまい熱効率を下げる結果となります。

規定でターボエンジンが1500ccに制限されていた時代のF1エンジンでは最強を誇っていた頃のホンダのレース用エンジン=RA168Eがありました。アイルトン・セナも本田宗一郎氏も健在なりし頃、あのモンスター常勝マシンの排気量がターボ付きとはいえ1500ccだったとはちょっと驚きです。他方でホンダはバイク用にも6気筒エンジンを作る稀有な存在です。

省資源,省燃費の大胆な方策として、重くてうるさいもののガソリンの半分近い燃料費で済むディーゼルエンジンを乗用車に積む試みも大流行りしました。嚆矢はオイルショック勃発後に登場のゴルフD。ディーゼル用にガソリン・エンジン並みの小型軽量のエンジンに仕立て直し、ガソリン車と遜色ない性能を出せる商品に仕上げていました。

昔の税制ではガソリンを使うのは乗用車など裕福な層とみなされ、商用車が使う軽油(ディーゼル燃料)には低く抑えた軽油引取税がかけられて、ガソリンと差別化が図られていたのです。この結果軽油はほぼガソリンの5割から6割の値段で販売されていました。

日本車では元来ディーゼルを徳意とするいすゞが先陣を切りました。5ナンバーの中型セダン、フローリアンはあの美しいいすゞ117クーペと同時開発の乗用車。ここに得意の4気筒ディーゼルエンジンを載せた小型枠のタクシーはたちまち地方都市で人気となりましたが、発表から10年を超え、古ぼけたスタイリングも併せて、大きな振動と騒音は一般ユーザーの購買欲を刺激するまでには至らなかったようです。後には小型トラックのファスター4WDにも搭載され,レンジローバー風のワゴン・ボディを乗せたファスター・ロデオは,三菱パジェロとともにやがて訪れるSUVブームの幕を切って落とした重要な存在です。そしてトヨタも乗用車用に開発した専用小型ディーゼル・エンジンをクラウン等に搭載し、ディーゼル熱はあっという間に沸点に達しました。

ガソリン車に比べると出力が低いため排気量が大きなエンジン中心だったものが、1リッターという常識ハズレの排気量でディーゼルエンジン搭載に踏み切ったのが、またしてもダイハツのシャレード(二代目)でした。ロックン・ディーゼルと称して、敢えて音のうるささを隠すのでは無い、開き直りの精神は関西のメーカーなればこそ??

80年代には大衆車から高級車までおおよそのクルマのカタログにはディーゼル搭載車も書き添えられていたものです。欧州車には元々プジョーやメルセデスのようなディーゼル車を徳意としたメーカーも存在しましたが、いまや乗用車用内燃機関の半分は二酸化炭素排出の比較的少ないディーゼルが占めているほどです。BMWの名チューナー、アルピナにもルマン優勝車にもディーゼルが名を連ねるまでになっています。

ただ、日本だけはちょっと事情が違い、21世紀はじめ黒い煤煙を撒き散らす悪者扱いされて以来、人気はガタ落ち。ディーゼル仕様も軒並みカタログ落ちする憂き目に遭いました。

90年代の日本車のカタログにはほぼ全てと言っていい車種にディーゼルエンジンの用意がありましたが、ここ20年のうちに全然見かけなくなってしまいました。そもそもディーゼルを作っていないスバルやホンダも海外向けにはディーゼルの用意がありましたが・・・

ここ数年で厳しい基準をクリアしたクリーン・ディーゼルが発売されるようにはなりましたが、軽油とガソリンの価格差も以前ほどではなくなり、内燃機関が禁止される将来に向けて先行きは相変わらずクリアではないようです・・・・

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