ずっと電気が欲しかった(クルマのメカ)

モーター/エンジン>駆動系>タイヤ、と動力が伝えられてクルマは走り出すことができますが、エンジン・ルームの中で黙々と電力を供給し続けるバッテリーの仕事なしにはエンジンに燃料を噴射することも電動パワステも方向指示器も雨の夜のワイパーを動かすことも出来ません。電気自動車にも動力用とは別系統の12ボルト・バッテリーの回路があり、これが無いとメイン・システムを起動することさえ出来ません。

さて、どのクルマにも積まれている12ボルトの鉛バッテリー、旧式のものは6ボルト、トラック等大型車では24ボルトも使われます。近年電子制御のテリトリーがますます増え,電気なしのクルマ作りは考えられなくなりました。一番大食いの主はスターター・モーターです。電池が弱っているとまずこのモーターがなかなか回らずエンジンがかかりません。冬季の明け方など要注意です。そして欠かせないもうひとつがエンジンの回転で回される発電機=オルタネーター。

まずはスターター・(セル)モーターがあるおかげで、クルマは大きく救われました。重いクランク棒を力任せにグイッとまわし、何度かの失敗を経てようやくエンジンがかかる、という儀式が終焉を向かえ、自動車は女性ひとりでも乗りこなせる乗り物になったのです。昭和30年代までの国産車のフロント・バンパーあたりをよく見てみると車体の中心に日産マークのような丸い穴が開いている車種があります。押し掛けの難しそうな重い車に多かったこの穴、車載のクランク軸を差し込めるようになっていて、なんとその先はエンジンのクランク軸に直通。お抱えの運転手さんが、稀にこのクランク棒でなかなかかからないエンジンを相手に悪戦苦闘、などという場面にはついぞお目にかかりませんでしたが、バッテリー上がりなどの緊急事態に備えてこんな方法もあったのです。

様々な電装品はこのバッテリーから電力供給を受けますが、電池である以上充電もしなければなりません。仮に充電する機能が失われたらクルマは何km走れるのか?ごく平均的な2リッターの国産車を郊外の一般道や空いた高速道をラジオを聴きながら昼間走ってみると、一時間を過ぎた頃からラジオの電源が突然切れたり、電気式のメーター類が動きを止めたり・・・・・こうなったら残り数キロでストップの運命です。エンジンは回らないどころかスターター・モーターも無音のまま。ルームランプだって点きません。実はこの間チャージ(CHG)という赤い警告灯が点いていたはずです。バッテリーに充電されないままでは、いずれエンジンは息の根を止めてしまいます。そのための重要な電力の供給源が発電機、オルタネーターなのです。

スキー・ブームの全盛期、スキー場帰りの長い渋滞の列でヒーター、ライト類を延々使い続けてバッテリー上がりを起こして救援を求めるクルマが続出しました。アイドリング回転だけでは明らかに充電不足だったのです。

一般的な交流発電機の働きはちょうど交流モーターの逆。回転する力を電気に変換するもので、短くは無いものの寿命があります。おおむね10万キロを過ぎたら点検、必要なら交換しておいたほうが安心です。故障してから交換となると厄介です。まあ、すぐに新品のバッテリーが手元に届けばさらに数十キロ先には進めますが・・・・エンジン始動のときにいっせいに赤く光る各種警告等は玉切れしてないかを知らせる儀式でもあるのです。見過ごさずにたまにはランプ類の存在にも気を配ってみてください。


発電機の動力源は勿論となりのエンジンですが、直結されているわけではなく、V字型の断面を持つファン・ベルトで冷却ファンと共にまわされています。このゴムと樹脂製のベルトが切れることは最近では珍しくなりましたが、昔の言い伝えではこのファンベルトが切れたときには女性用のストッキングを縛って代用するという方法が指南されていました。そう都合よく適材適所の場面に遭遇したカップルがいたのかどうかは確かめるすべも統計もないようです。


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