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愛に帰結するものづくり

12月に仕込んだビールたちは、コロナに翻弄されながらも無事2月8日からリリースできました。


たくさんの方に飲んでいただけており、本当にうれしく思っています!



完成したビールは4種類。

ビールについて毎日お客さまから質問をいただくので、改めてこちらに記しておこうと思います。


まず、イラストをお願いしたのは大阪のイラストレーター辻野清和さん。

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去年の夏からインスタグラムで作品を拝見していてひとめぼれしました。

シンプルながらも温かみのあるイラストで、表現の幅が豊かなところにぐっと惹かれました。

素敵なビジュアルのおかげで多くの方の反響をいただいています。

辻野さん、改めてありがとうございます!




次はビールの紹介。

(レシピや技術的な部分ではなく、どういった思いでビールを作ったかという話です。)


マルコーブ

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私たちが登別に住んでいたころ、通っていたパン屋さんの名前です。

友達もいない、遊び方もわからない初めての北海道での冬、偶然知った小さなパン屋さんマルコーブ。

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何気なく選んだクリームパンのおいしさにびっくりしたのを今でも覚えています。ご夫婦がつくりだす柔らかであたたかな店内の空気感にも癒され、休みのたびに通うお店になりました。


通いたいお店ができたこと、それだけで新しい土地での生活がぐっと色を増し、回数を重ねるごとにご夫婦との距離も近くなりました。

北海道がだれも知らない町ではなくなったのはあのころからだなと振り返って思います。



そしていつしか私たちも夫婦でお店を持ちたいと思うようになりました。マルコーブのパン、空間、ご夫婦の人柄や生き方に憧れたからです。

自分たちのビールをつくり、顔を見て手渡して、そのビールが誰かの笑顔につながれば。温かい空気が流れる場所をつくれたら。そんな仕事ができたら。



生まれて初めての感情を抱かせてくれたパン屋さん。3TREE BREWERYの原点はマルコーブだと思っています。



お二人が、夫が前職で初めて作ったビール「鬼嫁セゾン」をおいしいと言ってくれたので、3TREE BREWERYとして初めてつくるビールはセゾンスタイルにしよう、とずっと決めていました。


そして私たちを幸せにするパンや場所をつくってくれたお二人への感謝の気持ち、

マルコーブのパンのように、ビールで人を笑顔にできるように、

マルコーブに憧れた過去の私たちの気持ちを忘れたくないという思いで

名前を使わせてもらいました。


ビールは飲むパンといわれることがありますが、私たちはビールの中でもセゾンが一番飲むパンに近いスタイルだと思っています。

そんなセゾンスタイルのビールに、パン屋さんの名前をつけることになったのも何かの縁だな、と思います。



RPG

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私たちの目指したい未来へ向けて終わらないRPGがスタートした、そんな気持ちでつけた名前です。

ペールエールスタイルのビールは夫の前職である鬼伝説地ビールのフラッグシップ。金鬼ペールエールはバッチごとに使用するホップを変え、飲む人を飽きさせない工夫を凝らしています。

そんな鬼伝説地ビールのペールエールに魅了された夫なので、3TREE BREWERYでも最高のペールエールをいつか作りたい!その過程をRPGに例えて、これからストーリーを進めていきたい。そんな思いを込めました。

そしてもう一つ、店頭ではお話していないRPGへの思いがあります。


独立して店を構える人たちは、店の唯一無二性をしっかり自覚しているはずです。強味があるからこそ市場で戦える、至極当然のことではありますが

私たちにとっての唯一無二、それが自家製ビールです。

私たちは勇者さながら自家製ビールを武器に未来へ進むつもりでした。

でも実際は、自家製ビールができる前に進みださなくてはならず、手ぶらで3TREE BREWERYのスタートを切ったような感覚だったのです。

酒造免許がいつおりるかわからないまま、いつまでこのスタイルの営業が続くのかという不安もありました。


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武器がない、街に来て日が浅く知り合いも多くない、そしてコロナで外出を控える人が多い。

だけどそんな状況でも私たちが進んでこられたのは、間違いなく応援してくれる人たちの力があったからです。

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(グッズを購入後、着替えてくれました。嬉しい!)



どんな強い武器を持ったって、勇者一人じゃ先へ進めません。違う強さを持つ仲間がいてこそです。



私たちにとってビアパブ営業期間は、

一緒に進んでくれて、困ったときに力を貸してくれるたくさんのお客さまがいることを実感する日々でした。なんて最高な冒険の始まりなんだろう!本当に感謝しています。


どうしたら愛を返せるのかな、と思っていたけれど、これからも一緒にRPGを進んでいけるようにという願いも込めて定番ビールの名前にすることにしました



これからもよろしくお願いします!



まんちくりん

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「トラックの荷台まんちくりんやわ~」

施工期間中に々の代表 野崎将太のラインに突如として現れた謎のパワーワード、それが まんちくりん でした。

まんちくりんとは…

関西の一部地域の方言で、「山盛り」「いっぱい」

という意味だと知ったのですが、周囲の人に聞いても知らない人が多かったです。

文字の響きがかわいいので頭に残っていました。




彼らとともに過ごした熱い夏、現場と彼らの自宅を往復する軽トラには材料や施工道具、廃材、着替えなど荷物がどっさりと積まれていて、まさにまんちくりん。

よろよろとやってくる軽トラを迎え、帰りにはまた違う荷物を積まれる光景を毎日見送りました。

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そんなまんちくりんの荷台に詰め込まれた諸々から作り上げられたのが私たちのお店です。


そして荷台には収まりきらない まんちくりんの彼らの熱い想いを感じて過ごした最高の夏を懐かしみながら、精いっぱいの愛を込めて、一緒にビールをつくりました。


ホップをまんちくりん使うスタイルにしたい!ということでスタイルはIPAに決まりました。

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さて。彼らの軽トラは今はもう違う現場へ。また誰かの夢をかなえるために荷台をまんちくりんにして進むことでしょう。


彼らへの愛とリスペクトでこのビールをつくりました。

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いつもありがとう!

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午前四時七分前

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スタイルは何にしよう、どんな原材料を使おう、そんなことを二人で何度も話し合っていました。

なんとなくしっくりこないレシピに、ああでもないこうでもないと話すうちに更けていく夜。

気づくと新聞配達のバイクの音が窓の外から聞こえることもしばしば。

眠気もピークに達した私は駄々をこねていました。

「そもそも何でもはっきりしなくてもいいんじゃない?」

「スタイルにとらわれずに、あいまいなまま作るビールがあってもいいんじゃない?」

と賽を投げだしたのですが、意外にも夫がうなずきました。

「スタウトじゃないけど、ダークカラーのビールを作ろうか。」

「今みたいな、朝と夜の間みたいなビール」

「スタイルとしてはっきり定義できなくてもいいよね」

「曖昧さも許せる毎日のほうが楽しいよね」

確か、そんな話をしたと思います。なんせ午前四時七分前の会話なので記憶があいまいですが…。



最近はデジタルな時計に慣れてしまったけれど、あえてこんな風に時刻を表してもいいかな。緩くて。



無理に何でも定義しなくてもいい。

どっちつかずのあいまいさや、余白みたいなものをいとおしく思える心の余裕が持てますように。



自戒を込めた願いを託した午前四時七分前の私たちのアンサーです。


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終わりに




長くなりましたが、4種類のビールの生まれた経緯を書きました。


後から振り返ると、私たちのビールづくりの根底にあるものは

でした。


口に出すと少し恥ずかしいのですが、

でもやっぱり愛がなきゃだめなんです。


私たちが今ここにいられるのは沢山の愛のおかげです。さまざまな場面でいろんな形の愛を受け取って今があります。


もらった愛の返し方はわからないけれど、できることはビール作りと場所作り。




愛に帰結するものづくり、これからも続けていきます。


photo @photoyuki

イラスト @kiyomaru5






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