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【不思議な体験】海のない理想郷

私は二十代の頃から長年にわたって奇妙な夢に悩まされてきた。それはたいてい昔の日本にまつわる夢である。

たとえばはるか遠い古代、九州の海に面した沿岸部に住んでいた人々が津波による塩害で米が取れなくなり、移住先を求めてはるばる旅をして、やがて奈良の地にたどり着いたという夢を見たことがある。

「ここは素晴らしい・・・なんて素晴らしいところなんだ・・・、ここには海がない!」と、丘のような少し高いところから奈良盆地を見つめる男たち。

身体を震わせ大粒の涙をぼろぼろと流している者もあった。(女子供もいたかもしれないがうろ覚えなのでよくわからない。)

「ここはなんて素晴らしいところなんだろう。山々に守られたこの地こそ、今まで見た中でもっとも素晴らしい・・・・」

やっと自分たちが生きる場所を見つけた。長い旅の疲れ、海のない理想郷を見つけた深い安堵、懐かしい故郷への思い、いくつもの複雑な思いが込み上げて座り込んで泣く者もあった。

その夢のことを思い返すと、彼らの思いが我がことのように思い起こされて、今でも私は身体を震わせて泣いてしまうのである。

そして同時に、「でも、その理想郷には、先に住んでいた人々がいたんじゃあないのか?」そんな疑問も浮かんできて、なんとも言えない気持ちになる。

この夢がなんなのか、私にはまだわからない。今も時々考えている。


🐯(たぶん、夢で見た印象では、彼らの故郷は九州北部。海を挟んで山口県と向かい合うどこかの海岸にあったと思う。)

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