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【不思議な夢】未来を変えれば

まだ私が三十代半ばの頃、ある日家で昼寝をしていたら、誰かに顔を触られた。私の頬や口元に優しく触れる指…、何度も…

うーん…!

くすぐったい…

たまらず目を開けると、枕元に美しい女性が座っている。

『え゛っ?』

とんでもない美女だ。華奢で清楚で、ずいぶん可憐な…

幸せな夢でも見ているのかと、寝ぼけた頭で思って嬉しさに変な顔になる。

美女はそんな私のとぼけた顔を見てくすくす笑う。

(声が出ない…)

(なんだ、この、とんでもなく美しい女性は…)

夢のように綺麗な人だ…

ああ、そうかこれは夢なんだ…

美女は袖で口元を隠し、くすくす笑いながらくるりと後ろを振り返った。美女がそちらに合図するように笑いかける。

美女の見る方を目で追って驚いた。

武士が座っている。

顔は見えない。

ああ!

でも、知ってる!!

私はお前を知っているぞ!!

…誰だ!?

私はお前が好きだった。

でもおまえは誰だった??

血のイメージが見える…

そうだった、おまえとは戦いたくないのに戦ったんだ…

なんであんなことになったんだ…?


そこで目が覚めた。

あの夢を見てからもう十数年が経つ。

そう思うと、あれからずいぶん長い時間が経ったんだと、長旅のあとのような気持ちがする。

もうあの男の名を思い出すことはないのかと諦めてかけていたが、昨日やっと思い出した。

夢の中、誰かが…、いや、たぶん前世の私が言っていた。

あのとき夢で見た男こそ、私が生まれる前からずっと無念に思っていた謀反の張本人。

荒木とその美しい妻だと、前世の私が昨日、夢で語りかけてきた。


そうか、いよいよか…

あの謀反の件さえなければ仲間たちはあれほど苦しまなくて良かったのにと、何度も何度も考えた。あれはどうするべきだったのか?裏でなにが起きていたのか?あの男はいったいなにを考えていたのか?

ずっとわからなくて、死んでもずっと悔やんでた。あの時自分にできることはなんだったのか?それを知りたい。

知って今更なにになる?なににもならない。わかっているが、あの時から仲間たちの間に広がった不信感を、バラバラになったみんなの心を、まだ取り戻す術があるのではないかと、私はまだ諦めてはいない。

今の私の人生はあの時の無念を晴らすために用意されたギフトなのだと思う。


昨日、『時間の流れは未来から過去へと流れている』という説があるのを初めて知った。過去から未来へ流れるのではないらしい。

アビダルマだとか、未来原因説だとか、ちょっとまだよくわからないが、心に響くものがあった。

未来から過去へと時間が流れるのであれば、未来が変われば過去の出来事の持つ意味は変わるのかもしれない。

あの時、バラバラになった仲間達がいつかの未来でまた会えるなら。みんなで集まってまた笑い合えるなら。

もし、これからの私がそんな未来を作ることができるなら、過去の出来事の持つ意味は必ず変わるだろう。

あの悲しい別れは未来でまたみんなで会うための布石だったんだと、絶望の過去に希望を残せる。

もしかしたら、私はそんな思いで生まれ変わったのではないか?いまそんな風に思う。


去年、初めて荒木の城跡に行った。そこでは特に『導く者』には出会えなかった。

それからしばらくのちに、今度は三木の城にも行った。ここでやっと『導く者』が現れた。30〜40代くらいの武士が、三木から帰る電車の中で眠る私に語りかけてきた。

「あなた方は騙されていました。あなた方の仲間の中に『二人組』がいましたね。覚えていますか?あの二人のうちの一人が敵のスパイです。」

男はそう言った。おそらく彼自身、生前は諜報員のような役目をしていたのだろう。情報通だったように見えた。

彼は嘘は言っていない気がする。おそらく真実を伝えたいという無念を残して逝った人だろう…

その数ヶ月後、明石に行ったときにもこの武士の霊は出てきた。三木だけではなく、明石にも現れるとは、「どこのご家中か?」と尋ねたところ、「別所」であると答えた。

今回、ようやく荒木が見えてきたので、そろそろまた次の手がかりを探しに行かねばならないようだ。

春だしな…、春は戦の始まる春だ…。この場合の戦とは自分との戦いだが。

次は赤松に関するところに行こうと思っている。

さて…

三月は京都と敦賀に行きたいので、そこに播磨を入れるとなかなか大変だ。

今月中にやることをやっておかねば…

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