幽霊からの手紙(不思議な夢の話)
夢の中、私は部屋にいた。今の部屋じゃない。昔住んでいた部屋に似ている。室内にはテーブルがあり私はその向こうに立っている。
ドア越しの廊下の向こうに、誰かがいるのがわかる。おそらく若い女の霊だ。
以前から何度もこの霊とは遭遇している。ドアの向こうから女がこちらの様子を伺っている。
ドアのすりガラスに髪の長いシルエットが透けて見えた。
(やばい来るぞ!)
私はとっさにテーブルの上の包丁を手に取って構えた。
バーン!
ドアが開いて女の霊がこちらに飛びかかってきた。
慌てて私は刃物を振り回す。えい!えい!と悪霊を切り刻むが、空気を切るだけだ。
それでも諦めない、私が包丁をまた上に構えると悪霊がまた飛びかかってくる。私は包丁を振り回してまた空気を切る。サッと悪霊が飛び退く。
(くそっ、キリがない。しかしここでやめたらころされる!)
私はまた包丁を構えようと手を上に…、するとそれに反応して女の霊が飛びかかろうと前のめりに…
(いや、待てよ!?)
ハッとして、包丁を見ると、ギラリ、鏡のように悪霊を写している。
(そうか、この悪霊は鏡にトラウマがあるのか!)
女の霊は鏡に映った自分の姿を見るのが嫌で暴れるのだ。
(そうだったか…)
私はゆっくり悪霊と距離をとり、目だけは悪霊と睨み合いながら、ガチャリ…包丁を机に置いて手をあげてみせた。
悪霊に語りかける。
「ねぇあなた、鏡が怖かっただけなんだね?ごめんね、刃物にびっくりさせちゃったみたいだね」
長い髪を振り乱した女はそこで動かなくなった。
気づくと日が過ぎていた。私はいつものように日常の中にいる。
おや?ポストに誰かから手紙が送られてきたようだ。送り主は先日戦ったあの悪霊…いや、鏡が苦手なだけの女の霊だ。
封筒を開けると水色の便箋にこんなことが書いてある。
「あの子に 伝えてほしい しにたくなったら ここに電話しなさい と」
あの子… とは私の知人の女性Z子さんのことだ。
手紙には電話番号が書いてある。どうやらお悩み相談ダイヤルのようだ。ただし『有料 一回 1万5千円』と書いてある。
(結構高いな!)
公共の相談ダイヤル(無料)の方がいいんじゃないのか?
そう思ったが、まあいいか。。とりあえず私はZ子さんに「しにたくなったら 有料のお悩み相談ダイヤルに 電話しろ」と伝えればいいんだな?
よく見ると、手紙の最後にひとこと、私への質問が書いてある。
「あなたはどうして ⚫︎⚫︎を見る時 とても悲しそう なのですか?」
(うっ…!)
この悪霊… いや女の霊、私をそこまで見ていたか…
私が前世に残した思い残し… この女の霊には気づかれたようだ。
(そうか…)
私はそんなに悲しそうにしていたか…
では、私はもうその件について逃げてはいけないということだなぁ…
「ありがとう」
心の中で女の霊にお礼を言った。
「あなたは悪霊じゃなかったんだねぇ…」
淡い水色の手紙を手に、私は目を覚ました。
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