【先祖を霊視】呪いひたひた
私の遠縁の親族に、Q家という名字の家がある。訳あってQという意味のない伏せ字を使用する。
遠い血縁なのでほぼ親戚同士の交流はないのだが、奇妙なことにその家の先祖は、時折私のところにやってくる。
かつて関西の某所にあるI神社に参拝した折のこと。神社に向かう道中、電車の中で眠っていると、Q家の先祖霊たちが現れた。主に明治・大正時代頃の人々で、その中には私の父方の死んだ祖母の姿もあった。
(きっとQ家のみんなも、I神社にお参りしたいのだろう。Q家は大正時代までは裕福な網元だったが、その後没落して離散した。Q家の先祖たちはI神社の神様のお力におすがりして、古い災いを祓い、子孫繁栄を願いたいのだ)そう感じた。
こうしてその日、私はQ家の先祖霊たちをゾロゾロ連れてI神社に参拝したのだった。
帰宅後、母にその話をしたところ、「そういえばI神社の本殿の裏に"Qなんとか"と書かれた小さな祠があったで?Q家と同じ名前の祠やから、気になって覚えてたんよ」と母。
調べてみると、I神社の主祭神は饒速日命という神様で、古代豪族・物部氏の祖先神と仰がれているらしい。そして、物部氏と同じく饒速日命を祖先としている一族の中にQ家と同じ名字の古代豪族があることを知った。
そんなI神社を守ってきたのもまた古代豪族Q氏の人々なのだという。
古代豪族Q氏と私の遠縁のQ家に繋がりがあるのか、ないのか?それは全くわからない。
わからないが不思議な偶然ではある。
私の家の電話番号がたまたまI神社と似ていて、以前は時々我が家に「I神社さんですか?」と間違い電話がかかってきたことにも奇妙な縁を感じる。
まぁ、それもこれも全てはただの偶然ではあるのだが、それらはいつも私をQ家と強く結びつけて離そうとはしないのだ。
私には子供の頃から嫌な霊感がある。私が見たところ、Q家は強い呪いを掛けられている。私のような苗字の違う薄い血縁者にも災いが及ぶほどの強いものだ。
若い頃、ある日お盆の先祖供養をしていたとき、お経を唱えていると、目の前に真っ暗な海岸の景色が見えてきた。早朝3時くらいだろう。とても寒い。浜辺で篝火が焚かれている。
(人々がこんな寒くて暗いうちから、海で過酷な仕事をしている…)
すると今度は、筆で書かれた古い契約書のようなものが見えた。
(こ、これは借金の証文だ!!江戸時代に書かれたものだ)
(もしや、借金の返済のために過酷な労働をさせられた人々がいたということか!?)
(海、漁師!…網子だ!)
すぐにネットで検索した。
(Q家がかつて網元だったはずだ!裕福な家だったと聞いた。たくさんの船を持ち、網子と呼ばれる漁師たちを雇っていた。しかし、江戸時代の網元と網子の関係は、私が想像したよりずっと過酷なものだったのではないのか…!?)
Wikipediaの網元の項目を見て愕然とした。辛いのであまり詳しく書きたくない。一部分だけを拝借する。
(こ、れは…)
言葉を失った。
母方の祖母はよく言っていた。「金貸し業は末代まで祟られる」
Q家は父方の親族である。私は子供の頃から、この父方の親族が呪われていると気づいていた。
当時まだ10歳になるかならないかの子供だった私は、ある日「この家は呪われてるなぁ」と気づいた。そしてこう思った。
(へぇ、私はこの呪いを解くためにこの家に生まれたみたいだなぁ)
(しかも、なぜか男の子より女の子の方に強い呪いがかけられてる)
(ちょうどいい、今の私は女だ。私がこの呪いを引き付けて他の親族を守ろう。私は生まれる前からこの手の呪いにはすごく強いんだ。)
(でもこれは命と引き換えじゃないと解けない)
(だいぶ苦労するけど、なんとか寿命まで生き延びて、死ぬ時が来たらこの呪いをあの世に持っていこう。それしかない)
当時、こんなことを思ったのをよく覚えている。子供の思考ではないようにも思える。突然降りてきた考えだった。
輪廻転生なんか信じていないのに、この時は「私は生まれる前から呪いに強い」そんな考えが降りてきたのだ。
そしてその日、母にそういったことを話した。母はずいぶん変なことを言う子供だと思ったらしい。
こうして私は子供の頃から呪いとともに生きてきた。呪われてるだけあって、なかなかの不運続きの人生だ。それでもなんとか運良く生きてこられた。
やはり私は前世から呪いに耐性があるらしい。
しかし、ここ数日夢を見る。神々が私の夢に降りてこられて「急げ!」と告げる。
「急げ。なにをのんびりやっている。もうすぐそこまでアレが追いかけてきているぞ」
振り返るとすぐ近くまで迫っているのが見える。ひたひたと、呪いが私を追いかけてきている。
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