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帝人100%子会社化の背景──創業者 志水と新CEO加藤の対談インタビュー

医療介護業界のDX化を推進する入退院支援クラウド『CAREBOOK』を提供する株式会社3Sunny。
創業時にはANRI、2018年にはANOBAKA等のベンチャーキャピタルからの資金調達を行い、2021年には帝人との資本提携を実施。2023年9月現在で導入病院数は1400を超えています。
そのような急激な成長を遂げてきた3Sunnyですが、2022年10月に帝人の100%子会社となることを発表。現在、創業者の1人かつ元CEOの志水は事業開発責任者となり、帝人の加藤大典がCEOの座を引き継いでいます。
なぜ志水は帝人のM&Aを決断したのか。その背景に迫ります。


出資時から帝人とは強いシナジーを感じていた

━━━━━お二人が最初に出会った背景を教えてください。

加藤
私が志水さんを初めて知ったのは、2019年10月に行われた『ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)』でした。様々なスタートアップが登壇する中で志水さんが登壇し、『CAREBOOK』のパネルディスカッションを行っており、興味を持ったんです。

当時は、帝人ではケアマネージャー(以下、CM)とメディカルソーシャルワーカー(以下、MSW)が関わる入退院調整の領域が日本の医療介護発展のための重要な要素であると捉えていました。
その領域でアライアンスを考えていた際に、まさにぴったりだっだのが3Sunnyでしたね。

また、志水さんは保険外サービスにも触れているのを拝見し、帝人と同じことを考えている点にも惹かれました。
志水さんが語る同領域への戦略に胸を打たれ、帝人にすぐに「こんな会社ありましたよ!」と報告したのを覚えています。
その後、終活関連に携わられている鎌倉新書さんとの業務提携でも3Sunnyの名前を知ることとなり、2020年4月に初めて直接話をすることとなりました。

志水
ファイナンスする際に知人経由で帝人とつながったのですが、こんな大企業から話が来るとは思わず、「ほんまに?」というのが当時の率直な気持ちでした。

帝人に出資していただこうと決めたポイントは、在宅医療領域のトップランナーである帝人とは強い事業シナジーを感じており、ゆくゆくは一緒に手が組めるだろうということは確信していました
帝人の中間経営計画にも「地域包括ケア領域で事業を育てていく」という宣言を拝見し、本気で在宅や退院調整の領域に進む意欲があるんだと改めて実感しましたね。


━━━━━当時、互いにどのような印象を持ちましたか?

加藤
コロナ禍でオンラインではあるものの、「こんなことをやりたい」「目指したい」という理想像が完全にマッチしており、どれを話しても「うん!うん!うん!」という感じで同じ未来を思い描いている印象を持ちました。

志水
僕は「どこまで本気なんだろう」と最初は警戒していました(笑)。
その中で本気で出資を考えていることやこの領域を発展させたいという熱意が会話の中で伝わっていき、信頼関係が構築されていきましたね。
出資前も後もですが、加藤さんは言ったことは確実にやってくださる方。小さい約束もしっかり守ってくださるので、すっごい信用できる方だなと思いました。

━━━━━出資が決定し、子会社化が決定するまではどんな2年間でしたか?

志水
3Sunnyとしては、病院の導入数を増やすことがこの事業発展のキーなので、とにかく営業活動に邁進していました。
ネットワーク効果もある事業体系のため、まずは大きなシェアを確立することを最優先に考えていました。

病院の中でも大規模病院の導入をいかにハイスピードで進められるかというのがポイントだったため、株主さんには「とにかく顧客を紹介してほしい」と声掛けしていました。

帝人にも出向の方をご依頼したところスピーディーに対応いただき、導入数増加のために、とにかく突っ走ってきました。

加藤
帝人としては在宅領域に着手していきたい意向があり、当初は志水さんと「出資のマネタイズとしてまずは紹介センター事業を全国的に拡大していきましょう」という話をしていました。

ところが、志水さんからは「紹介センター事業はやめます」と早々に言われ、内心かなりざわついていましたね(笑)。

志水
紹介センター事業に人的リソースがかなり取られていたため、事業中止を決断し、メンバーには弊社のSaaSプロダクトである『CAREBOOK』のセールス・カスタマーサクセスに集中してもらいました。
僕もとても悩んだ時期でして、「今、どこに注力すべきか?」と何度も何度も考えましたね。

紹介センター事業から『CAREBOOK』の販促に舵を切ることで、8月から急激に売り上げが伸びていきました。
最終的には、一番重視していた導入数増加につなげることができ、あの判断は間違っていなかったんだなと今でも思っています。

決断した理由は、ブレない思いと絶対にやり遂げられるという確信

━━━━━他の選択肢もある中、帝人とのM&Aを決断した理由は何ですか?

志水
出資いただいた当初から実は帝人とのM&Aを視野に入れていましたが、実現可能かわからなかったため、通常の資金調達を考えていたんです。色々と迷っている中、2022年2月に帝人から具体的な話をいただきました。
M&Aを決断した理由は、出資時かつ現CEOの加藤さんの持つビジョンが2020年4月以降からまったくブレていなかったからです。

入退院調整の領域がWebやクラウドに置き換わるのは致命である、と思っています。ただ、誰がやるのか、時間が決まっていないだけだと思うんです。
これを果たす人は誰かと考えた時に、加藤さんはそれを叶える人だと感じたんです。

帝人という会社が本気であるとわかりましたし、帝人は諦めずにやり続けるしつこい、執念深い会社なので(笑)、時間がかかっても絶対にやり遂げられるという確信があり、子会社になることを決めました。

━━━━━志水さんが新規事業開発に専念する背景を教えてください。

加藤
志水さんはまさに『CAREBOOK』を0から1で作りあげた方です。今度、帝人はその1を10する番。
そこは帝人の今までの歴史や経験で発展する道筋が見えてきており、任せていただけると思っています。

志水さんには、次々に新規事業をスピーディーに生み出していくアイデア力、行動力があります。
ここを進められるのは、やはり志水さんしかいないと思います。
そう考えた際に、志水さんがパフォーマンスが最大に発揮される環境を整える必要があり、志水さんに事業開発責任者として、日本の医療介護領域を発展させる事業をどんどん生み出して欲しいと考えたんです。

志水
僕の最終的なゴールは、「すべての方が最適な医療介護体験を受けられる社会を創ること」。
医療介護領域のDXを促進するにあたり、医療介護従事者を巻き込みながら事業を行う帝人ブランドは『CAREBOOK』にとって必須のことだと思います。

帝人が今まで築き上げてきた患者さんとの関係などを活用することが最終ゴールを実現するキーになると考えており、私が新規事業開発に専念することを決めました。

すべての方が最適な医療介護体験を受けられるための、社会インフラへ

━━━━━代表交代で3Sunnyが変わって欲しくないこと、変えていきたいことは何ですか?


志水
変わって欲しくないことは、何よりも「圧倒的現場主義」であることですね。すべての生命線であり、3Sunnyが決してブレてはいけないことだと思います。

組織が大きくなると医療介護現場よりも社内の調整を優先してしまう可能性があるため、そうならないためにどのように組織設計していくかがとても大事だと思います。

変わっていきたいことは、大きなことを成す会社を目指しますので今後は更なるメンバーの増加を考えています。今までにない思考を持って組織を作らなくてはならないですね。

加藤
会社が大きくなるのは必然ですが、志水さんのおっしゃる通り、3SunnyのSpritは守り続けていきたいと思っています。

求める変化は、やはり事業拡大。
現在のようにFS、CS、Dev、Corporateの皆が同じ方向を見ながら考え続けるカルチャーは残したまま、さらに「自分がリーダーならどうしていくか」「どのようなポジションをつくっていくか」という当事者意識と熱意を今以上に持ちながら、自分の役割を見つけていける環境をつくっていきたいですね。

━━━━━3Sunnyはこれからどのような会社になっていきたいですか?
志水
今の『CAREBOOK』は、日本の医療介護領域のインフラになりポテンシャルがあると思います。
業界を全部繋ぐ情報・インフラとして育つ可能性は十分に感じますし、僕たちしか叶えられないことだと感じています。

今のメンバーや新たなメンバーが3SunnyのSpritを引き継いでくれたら、病院と介護施設の連携や病院と診療所の連携や在宅の領域でも『CAREBOOK』は使えるツールになっていくと思っています。

僕らが成功させなくては、医療介護業界は永遠に電話FAXを使い続けてしまいます。唯一その非効率な環境を壊せるのは、僕らだけだという自負を持っています。
社会的インフラになるのが3Sunnyの使命であり、全員でその使命を成し遂げていきたいと思います。

加藤
僕が描く近い未来は、『CAREBOOK』を使用するからこそ、顔が見えてより良い関係が築ける」と言っていただけることだと思います。

私たちの仕事は、病院・介護に携わるすべての方をつないでいくこと。今後の新しいつながりや関係性を構築し、より地域の関係性を深められる世界を実現したいですね。

志水
真の社会価値は、医療介護従事者の連携だけではなく、その先の患者さんなんです。
すべての医療介護従事者、そしてすべての方が最適な医療介護体験を受けられるように、これからも事業の発展と社員の成長を叶えていきたいですね。

(終)