見出し画像

憧れはないけど目指す音がある(ましろのおと2巻)

僕は困りました。おおよそ津軽三味線を弾いている人にはあるあるな話も、僕には理解できないことが少し。
ただただ40年やってきて根本的なことの理解に、僕は程遠いぞと思いながら読み進めてました。

祖父に伝説的な奏者を持ち、母親は民謡歌手。兄も奏者として活躍中。その中で何を弾いたら良いのか模索している雪でさえ、「憧れる音」がある。勝手ながらそれは本当に羨ましいと感じるところでもありました。弾きたいと思う曲がある。弾かなければいけない曲ではないんです。

兄とのセッション中のやり取り。良いですよね。僕も相方(山内利一氏)がいますけど、画中のような曲を作ったことはないので、作ってみたいなと思ったところもあります。

即興曲(曲弾き)では「技と独創性が要求される」というのですが、解釈的には合ってるのだけれど、もう一つ「それが曲として成立してるか否か」というのもあります。昨今の曲弾きでは先述した部分が強調されている気がしないでもないと感じています。
けれど僕のような考えを持つ人って少ないと思いますし、これが否定的に感じてしまう人も多いということは理解してます。大会出場もしていませんからね。

すごく悩みながら書いていますけど、プリンスが登場します。漫画だからだろうけど、本当にイケメン。
神木さんの出す音というのは、凛とする音。太棹から出す豪快さとに音の粒が降り注ぐような。これは浅野祥さんがモデルなのかな?と思ったりしました。スタイルの面で。彼の出す音は本当に綺麗で音がでかいです。そして曲がちゃんと成立している。知らない人はいないと思います。憧れというよりも羨ましいですね(笑)
そして、彼が雪に腕を確かめさせるよう、じょんからを弾かせます。けど多分六段を弾いたのでは?
何を弾いたら良いかわからないというのは僕も経験があって、津軽三味線大会の後とある民謡酒場で弾いてと言われて困った事があります。
本当になにを弾いたら良いのかがわからなくなった。結果周りにがっかりさせてしまったし、山影は大した事がないとレッテルを貼られた気がしました。これはすごく恥ずかしかったです。

話は戻り、雪は途中で演奏を止められ、誰のために弾いて良いのかわからないものは弾けねぇ。と。お〜それは本当にわかる。生意気なんかじゃない、一人一人思いが違いますから。けれど、ここから彼は挽回していくんですよね。

物語的に端折っている部分はありますけど、ヒロインの前田さんの祖母が覚えていたフレーズが雪の求める憧れの「春暁」の一節。
それを療養中の前田さんの祖母の前で演奏すると決めて始めた稽古で「削ぎ落とす」事を決意する。先ほど書いた「技と独創性が要求される」のものとは全く逆なのに注目しました。
結果、前田さんの祖母から素敵な言葉を頂きます。
「あなたの音色には痛みを癒す優しさがある」
優しい音。これが僕の目指す音です。
憧れはないけれど、目指す音がある奏者がいたって良いじゃないかと思っているのですけど、いかがでしょうか?
それと、誰に聞いてもらいたいのか?ここは本当にそう思わないといけないですね。本当に良い漫画だと思います。


この記事が参加している募集

サポートがあると嬉しいです。