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海からの贈物

海辺の貸別荘に来ています。

ひとり旅です。

今まで仕事がらみで一人でホテルに泊まることはあったけど、完全オフは60歳にして初めてです。

そう、わたくし還暦になりました。
3番目の息子はまもなく20歳です。

長女が生まれてから30年。
体力がある方ではない私の長かった育児もようやく終わり。
けれど特に家族でお祝いをすることもなく、
みんなそれぞれ自分の予定で忙しい様子。

それならば、と急遽思いついて
ひとりここにやって来ました。



アン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈物」という本を読んだのは、
たしかまだ10代だったと思います。

女はいつも自分をこぼしている。そして、子供、男、また社会を養うために与え続けるのが女の役目であるならば、女はどうすれば満たされるのだろうか。居心地よさそうに掌に納まり、美しい螺旋を描く、この小さなつめた貝が答えてくれる。

海からの贈物 (新潮文庫)


人生の折々で「わたし自身と調和した状態で」いるためにはどうすれば良いのか?

アンが離島で過ごした数日間に思索し、書き綴ったこのエッセイが私はとても好きで、英語版と日本語版を合わせて4冊も持っています。

在米のときには本の舞台であるフロリダ州サニベル島にも出かけて行きました。

しかし最近すっかり遠ざかっていたのを、海が思い出させてくれました。

あれから私もいくつもの時代を超え、
つめた貝の自分と向き合う時代、
複雑に何層にもなった牡蠣の時代を経て、
とうとういま解放され自由になっていくあおい貝の時代に入ってきたのでしょうか。

海に来ると、
広い広い視界と吹き渡る風が
シンプルで素の自分を思い出させてくれます。

大人しくて
引っ込み思案で
でも好奇心と冒険心はいっぱいで。

古くて新しい私
ようこそ。

一宮海岸にて

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