見出し画像

両手に女子。ひとりぼっちの始発電車③(全3話)

かっこ悪く、切ない記憶

青く不器用だった記憶

だけど、それすら今は美しい。

「両手に女子。
ひとりぼっちの始発電車」

第2話はこちら

第3話

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

人数は合っている。

なのに、
僕はあぶれてしまった。

初めて会った若い男女5組。

夜も更けてきたので、
それぞれが
雑魚寝するような形になった。

最初はみんな、
共通の話題で
盛り上がっていたが、

次第にそれぞれが
話をしている。

それほど広くはない
マンションの一室で、

男女5組が
寝転がっている。

僕は話に聞き耳を立てて
相槌を打ったり、

時々会話に入っていたが、

途中で、、、

それぞれが
自然とペアになっていることに
気が付いた。

僕の両隣には
女子がいる。

しかし、

その向こうには
ペアになった男友達が
それぞれいる。

僕は気まずくなって、
天井を見ていた。

だが、
もう1人女子が同じように
あぶれているはずだ。

そう思い、
その相手を探してみると、

このマンションの主人である
僕の友達の両側に女子がいて、

その相手はその1人だった。

つまり、
まさに両手に花、だった。

2人の女子が
1人の男を取り合っている格好だ。

僕の状況が
みんなの目に入っているか
どうかはわからないが、

僕は気配を押し殺し、
ただ天井を見て、
寝ているふりをした。

無造作に広げた
薄いタオルケットの下、

背中を向けた両側の女子の体が
それを端で支える形になり、

タオルケットと僕の体の間には
約15cmの隙間ができていた。

全く眠れなかった。

倒木のように、
無機質に佇む。

始発電車までの時間が
途方もなく長かった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この話は、
友達に思い出話として
話したことがある。

「宙に浮いたタオルケット」

というエピソードで
懐かしい話に笑いを誘った。

みんな覚えていないような
若い時のいちエピソードに過ぎないが、

僕にとっては
忘れられない話なんだ。

純粋で傷つきやすく、
不恰好で、不器用だった。

今にしてみれば
こんな些細な出来事で、

自分には価値がないんじゃないか、
と思うことさえあった。

でも、この時の感情を思い出すと、
なんとも純粋で、

その時だけの特別な感情だった
ように思える。

そういうことが
あったことも忘れることが
ほとんどだが、

ふと古い引き出しから
それを取り出してみたら、

青い時代のそれは美しいと
思う。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これは、

「両手に女子。
ひとりぼっちの始発電車」の最終話です。

もし、この投稿がいいなと
思ってくれたら、
ぜひ、「いいね」をして。

僕が今やっていること、
それは僕の経験を通じて

たった1人の誰かに、
届ける手紙を書くこと。

本当に大切なことは
何だろうか?

という自分自身への
問いかけでもあります。

だから、
よかったらあなたの後押しが欲しい。

また「手紙」を書こうと思うんだ。

僕にとっても大切なことだけど、

僕が書くことで、
あなたに大切なことを
感じてもらうことが、

僕の仕事でもある。

僕にとっては、
大仕事のつもりなんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?