アルバムレビュー:"The Art Of Tea" - Michael Franks

 去年の夏のryotaroの投稿で「yoshiroは最近かなりマイケル・フランクスに入れ込んでいる」というコメントがあったのですが、yoshiroは今でも相変わらず彼に入れ込んでいます。しつこい男で悪いか。(去年の淡路島旅行、懐かしいなあ。)

 夜に食後のお茶でも飲みつつ「何を聴こうかなあ」とiTunesを見渡している時、毎晩のようについつい選んでしまうアルバムをご紹介。

・"The Art Of Tea" (1976) - Michael Franks 

 これは名盤。ほんとに名盤。(大事なことなので二回言いました。)

 長いキャリアを誇るMichael Franksの、初々しいメジャーデビューアルバム。初々しいはずなのに、キーボードにJoe Sample、ギターにLarry Carltonなどなど、しょっぱなから演奏陣が豪華すぎるだろ、とツッコミたくなるような見事な布陣。

 ジャンルはジャズと言われたりフュージョンと言われたりAORと言われたり……カテゴライズすることに意味はありませんが、ひとことでは語りきれない音楽性が詰まっている、ということの証左としませう。


 さてさて、アルバムの最初から最後まで隙が無さすぎて、何から語ればいいか分からないのですが、とりあえず上記動画15:21から始まる5曲目"I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad"を聴いてみてください。できれば良さげなヘッドホンやイヤホンで、少し音を大きめにして。

 ……きれいな音してるだろ? ウソみたいだろ。40年以上前の作品なんだぜ、これで。(←自分で書いてから『タッチ』再読したくなってきた)

 イヤホン等で聴くとステレオ感がよく分かるのですが、左耳を包み込むようなエレクトリックピアノの優しい音色に、右から優雅にかぶさるエレキギターの憎いコード、それらを支える上品なドラム。

 そしてMichael Franksの軽くハスキーがかった歌声が始まると同時に、まるで天使が料理の仕上げに金箔入りのハーブソルトを振りかけるように、左後ろからシェイカーが絶妙なリズムを刻み始める……くーたまらん!(興奮)

 ↑文章だけ読むと、ただ気持ち悪い男がヘッドホンを押さえて悶えているにすぎないので、僕の文章は無視してとりあえず動画を聴いてみてください。作曲、アレンジ、演奏、録音……本当に隅々まで隙のないアルバムです。


 とりわけのオススメは、傑作として名高い2曲目(4:05~)"Eggplant"、上で僕が悶えた"I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad"、左と右でエレピとエレキの見事な掛け合いを楽しめる8曲目(27:34~)"Sometimes I Just Forget To Smile"あたり。

 とはいえ、キリンジが"雨は毛布のように"でオマージュしている1曲目"Nightmoves"も出だしのイントロからしてカッコいいし、3曲目の"Monkey See, Monkey Do"もベースのグルーヴも……もうとりあえずアルバム通して聴いてください(厳選を放棄)。


 夜に一人で部屋にいて「今どんな音楽が聴きたいかな」と自分に問いかけている最中のシンキングタイムBGMとして、僕はこの"The Art Of Tea"または "Chet Bakerの"Sings"あるいはKelly Joe Phelpsの"Tap the Red Cane Whirlwind"をかけてしまう病気にかかっていて、しかもこいつらを流し始めるとそれだけで夜が更けてしまうものだから、なかなか未聴アルバムを踏破できない。

 今年は毎日ちがうアルバムを聴くようにしよう……ああでも今夜も寝る前にはやっぱり"I Don't Know Why〜"を一回聴いときたいなあ。。そうして僕のつつましやかに幸福で変わり映えのない夜は更けていくのでした。おしまい。

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