意外ではなかったSEIKO
こういう店が意外と美味しかったりするんだよなー、と思わせる店構のラーメン屋(というよりは中華料理店?)が職場の近くにあって、以前ランチを食べに行ってみたのだけど、残念ながら「意外と“意外と”おいしくなかった」んです。
さて、今日はひとつ酷評というものに挑戦してみよう。
半年ほど前に僕もついにApple Musicを導入した。本音をいえば僕はCDという形あるモノを蒐集して、アルバムの一枚一枚をのんびりと聴いたり、時には友達にそのCDを貸したりしたいんですが、中古CDショップやAmazonで探しても見つからない廃盤アルバムが配信されていたから仕方なく…。
ストリーミング音楽配信サービスの功罪については別の機会にまとめたいところですが、とまれ、少なくともApple Musicのおかげで廃盤はもとより、新しくリリースされる音楽へのアクセスの便が良くなったことは確か。そして昨日、こんなアルバムが目に留まりました。
SEIKO。時計メーカーではなく、もちろん松田聖子です。彼女がジャズに挑戦したアルバムのようです。ちょっと発売元ウェブサイトの紹介文を引用しますね。
長年に渡る構想の末、遂に本格始動させるプロジェクト、それはジャズ!
グラミー賞や多数のプラチナディスクを獲得してきたデビッド・マシューズ! そして彼がリーダーを務めるマンハッタン・ジャズ・オーケストラやマンハッタン・ジャズ・クインテットの精鋭メンバーがレコーディング参加! さらにグラミー賞はじめ数々の賞を受賞したプロデューサー川島重行を迎え東京-NYに渡り、渾身の制作期間を経て完成させたアルバム!
スタンダードからボサノヴァまでアーバンな名曲満載の100%ジャズアルバム!
ちょっ、キミは句点というものを知らないのか?、と思わず突っ込みたくなるね!!! まあそれはいいや、とにかく「100%ジャズアルバム!」なのだそう。うーん、この時点でなんだか胡散臭さが…。
しかし、とりあえず聴いてみました、意外と美味しいラーメンを期待して。
結論。やっぱり美味しくなかったです。
僕は思うのだけど、この種の音楽アルバムの意義ないし効用というのは、一言でいえば新たなファン層の開拓ってことではないか。とすると、この場合はジャズの愛好家がどう受け止めるかが大事な視点になってくる。
松田聖子のファンなら「SEIKOちゃんが歌っている」という理由で、音楽の内容の良し悪しにかかわらずCDを手に取るはず(松田聖子のファン=音楽の良し悪しを判断できない、と言ってるのではないのでどうか誤解なさらぬよう。そもそも音楽の良し悪しって何だ、っていう。それは趣味の問題にすぎない…)。でも、そうじゃない人には「松田聖子が歌っているから」という価値は——無価値ではないにせよ——副次的にすぎない。評価はある意味シビアにならざるを得ない。
そして決して熱心なジャズの愛好家ではないけど、「松田聖子」よりは「ジャズ」の領域に近いところに立っている僕からすると、このアルバムは中途半端な感じなのだった。
たとえば選曲。確かに大体がジャズのスタンダード曲集に載っている曲ではあるけれど、10曲中3曲はブラジル音楽(イパネマの娘、マシュ・ケ・ナダ、コルコヴァード)だったり、バート・バカラック(The Look of Love)やノラ・ジョーンズ(Don’t Know Why)といったどちらかと言えばポピュラー路線系だったりして、「100%ジャズ」と謳うには物足りない。
それからアレンジ。ブラジル音楽は雰囲気でごまかしている感があったり(特にコルコヴァードが残念だ)、名曲「Don’t Know Why」は楽曲の最大の魅力とも思える反復進行とそれに伴う半音下行のラインが生かされていなかったり。歌や演奏は「プロなんだから当然」というレベルでは上手いんだけど、それだけに惜しさも倍増。
期待を裏切られてみたい、という期待。『SEIKO JAZZ』には、そんなねじれた期待にこたえて欲しかった。[ryotaro]
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