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シンジケートローン

日経の記事より(1月27日)

世界の金融機関による協調融資(シンジケートローン)が3年ぶりに落ち込んだ。調査会社のリフィニティブによると、2019年の融資枠は4兆4595億ドル(約488兆円)となり、18年から13%減った。M&A(合併・買収)関連の融資が2割以上、落ち込んだことが影響した。(中略)主幹事となる金融機関が企業や事業の資金需要に応じて融資枠を設ける。複数の金融機関に呼びかけて融資を実行するため、主幹事の融資枠(組成額)が資金需要を示す目安となる。

シンジケートローンとは

シンジケートローンとは、複数の銀行がシンジケート団を組成して、同一の契約書に基づいて同一の貸出条件で行う貸出。企業の一般的な資金調達のほか、合併・買収のための資金調達や特定のプロジェクトを対象とした融資など、比較的大型の資金調達ニーズに複数の銀行で対応するために用いられる。もともとは大企業向けの融資形態だったが、近年では中小企業向けにも利用されるようになっている。
シンジケートローンでは、アレンジャーと呼ばれる主幹事銀行が、企業からマンデート(組成依頼)を受けて参加銀行を募集。また貸出条件の設定、契約書作成、他の手続きも行う。こうした仕組みにより、企業にとっては、複数の銀行との交渉が不要になる、一つの銀行から借りるよりも多額の資金を調達できる、というメリットがある。デメリットは、手数料がかかること。
貸出実行後は、エージェントと呼ばれる銀行(通常はアレンジャーと同じ)がすべての参加銀行の代理人として、元利払い、契約変更などの手続きを行う。
この融資は、コミットメント・ライン型とタームローン型にわけられる。前者は、一定期間内での融資限度額を決め、その限度内であれば即座に借りられる、というもの。期間中に借りた金額の金利とは別に、枠を維持するための手数料がかかる。このコミットメントラインの拡大が、シンジケートローンの拡大の原因となっている。後者のタームローンは証書貸付形態の通常の融資。
日本においては、毎年30兆円ほどシンジケートローンを組成している。

メインバンク制の変容

シンジケートローンは、2000年頃から増大した。これにはバブル崩壊後のメインバンク制の変容が大きく関わっている。
1998年の金融危機以降は、銀行による貸し剥がし、貸し渋りなどが起き、銀行が企業側からの資金需要にこたえられなくなった。そこで、一つの金融機関に全面的に頼るのではなく、必要なときに貸出実行を請求できるコミットメントラインに興味を示すようになる。また金融機関側も、不良債権問題で苦しんだ経験から、貸出リスクの分散、また手数料業務の拡大の検討を迫られ、コミットメントラインやシンジケートローンに注目、積極的に取り組むようになった。

リレーションシップからトランザクションへ

また、リレーションシップバンキングからトランザクションバンキングへの移行の例としても、しばしばシンジケートローンは取り上げられる。
リレーションシップバンキングは、金融機関が顧客との間に親密な関係を長く維持することで、顧客の情報を蓄積し、この情報を元に金融サービスを行うビジネスモデル。
対してトランザクションバンキングは、個々の取引ごとの採算性を重視する銀行経営手法で、財務諸表といった定量可能な指標を重視するビジネスモデル。

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