東京一極集中はなぜ起こるか
1.政府見解
①女性の進学
近年、女性の短大への進学率は減少し、4年制大学への進学率が上昇している。また、大学院への進学率も上昇しており、女性の高学歴化が進んでいる。東京には大学・大学院が多くあるため、進学のため上京する女性が増えた。進学のための上京という点では男性にも同じことが言える。
②就職
東京圏の学生のうち約9割が、同じ東京圏内に本社を置く企業に就職している。地方圏(東京圏以外)の大学生のうち、約2~3割が、東京圏内に本社を置く企業に就職している。
また、売り手市場が続く近年の状況において、学生の大手企業志向が高まっている。大企業の多くは東京23区に集中している。
さらに、男女ともに、学歴が高いほうが、多くが大企業に就職する傾向がある。この点を考慮すると、女性の大学進学率が高まっていることが、大企業が集中する東京圏への女性の移動を後押しする1つの要因となっていると考えられる。
③若者の意識
東京圏への転出は15-29歳の若年層が全体の約5割を占めている。アンケート調査によると、進学時及び就職時に東京圏に移動した人のうち、東京圏での生活を志望したのは半数程度。(志望する大学・企業を選んだら結果的に東京圏だった者が4分の1程度)。
東京圏以外出身者が東京都で暮らし始めた目的は、「東京に進学したい大学や専門学校があったから」(37.0%)が最も高く、「新しい生活を始めたいと思ったから」、「色々なチャンスがあると思ったから」、「都会に憧れがあったから」と続く。
このように、進学・就職する若者がもつ東京への憧れ(気持ち、想像の部分)が、上京する大きな要因になっている。
2.識者の見解
①アメリカでは一極集中は起こっていない
・政治の中心はワシントンDC
・経済の中心はニューヨーク、シカゴ、カリフォルニアと産業別に分散し
ている。近年では、南部の経済発展も著しい。
・映画はハリウッド、テレビはニューヨークが多いが、ハリウッドにもあ
る。同じテレビでもCNNはジョージアだったりする。
・自動車はミシガンで、オハイオやケンタッキーにも広がっている。ITは
シリコンバレーだが、東海岸にもある。
・全米最高峰の大学は東海岸とカリフォルニアにあり、シカゴなどの中部
にもある。
→一方日本では政治、経済、映画、産業、大学の多くが東京+αという状況
②東京一極集中の要因
・産業への政府の規制が強い
何をするにもいちいち政府の「おうかがい」を立てたり、政府の予算を引っ張ることが重要で、そのためにあらゆる産業が東京に「本社」を置いてしまう。
・主要な大学が東京に集中している
「優秀な人材集め」のためにどうしても東京が大事となり、結果的に転職市場でも東京が有利ということになる。大学生としても「東京にいないと就職活動が不利」だということで、東京の大学に進学する傾向が強い。
・「対面型コミュニケーション」が主になっている
日本の仕事の進め方が「メール」ではダメで、基本的にセールスにしても社内の部門間調整にしても「実際に会って話をする」という「対面型コミュニケーション」が主になっているということがある。そのために、金融機関のほとんどは東京に集中しているし、それぞれの業種に関して東京を頂点としたピラミッドができ上がってしまっている。
・文化も東京に集中している
これにはテレビのキー局が全て東京という事情が大きい。文化ということでは、音楽も、美術も、文学も、出版も、東京が中心となっている。
・全国を結ぶ航空網や新幹線網が発展した
昭和の時代までは各県庁所在地には高級デパートが存在したが、東京に日帰りが可能になると、地方の富裕層は東京で買い物をするようになり、地方のデパートはほとんどが消滅している。
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