必要悪
「食べ物を粗末にしてはいけない」
誰もが知っている大切なこと。
ご飯を残すと怒られる。
食べ物で遊ぶと怒られる。
当たり前のこと。
飲食店で働いてるとよく分かる。
食べ物を粗末にしてはいけないことの重大さ。
そして、その不可能さ。
お客様が残したご飯は、もちろん手をつけることができない。衛生上だか倫理観の問題だか、まあなんか色々あるけど、決して褒められる行為ではない。
だから、捨てる。
その時、必要悪が生まれる。
「これはお客様が残したご飯を捨てている。ご飯を捨てることは悪だが、しなくてはいけないことなんだ」と。
私は飲食店でバイトし始めた時からずっと思ってた。
この場合の悪の所在は何処に在るんだろう。
残したお客様か、捨てた私たちか、美味しくなかった製造者か、飲食店というビジネスを始めた奴か。
バイキング形式の飲食店でも働いたことがある。
そこには何十種類の食べ物が陳列されていて、好きなものを好きなだけ取れる。
もちろん当たり前に残るものがある。
残ったものは、冷凍できるものは次に使ったり出来るが、もちろんそう出来ないものが大半だ。
所謂、廃棄。
廃棄になったものは食べてはいけないという暗黙のルールがある。食べちゃダメなルールだから則るしかない。
だから、捨てる。
その時、必要悪が生まれる。
「これはお客様が選ばなかったから捨てている。ご飯を捨てることは悪だが、しなくてはいけないことなんだ」と。
きっと、お客様も、従業員も、どちらも悪くない。
し、どっちも悪い。
お客様は、どんなに美味しくても、食べ切れなかったら残すし、
バイキング形式で、そこにある筈の料理が無かったら不満に思う。
従業員は、お客様が残したご飯を捨てるのも仕事の内だし、
廃棄覚悟で料理を出さないと、上に怒られたり、お客様の満足度が下がり、ビジネスとして成り立たなくなる。いずれその飲食店が満足度を理由に潰れてしまっては働けなくなる。お金がもらえなくなる。
つまり、
生きてく為に、捨てている。
ビジネスの本質。
必要悪の性質。
そう考えると、
食べるということ自体、食べ物を粗末にすることなのかも知れない。
自分が幸せになる為には、どこかに必ず悪が必要。
それを「必要悪」と3文字で完結させれるなら、万々歳だ。
でも本当は違う。
みんな、食べ物を粗末にするな!と怒るばかりで、その本質を見ていない。もしくは、見ないフリをしている。
本当に食べ物を粗末に粗末にしてはいけないのならば、自分で作り、自分で食べるしか無いと思う。
スーパーで買ったって、飲食店に行ったって、必ず廃棄は存在する。
「売ってる方が悪い」という意見は、確かに正しい。
でも、売らなくなったら、みんなきっと困る。そして不満になる。そしていずれ、売る方に足を向ける。
つまり何が言いたいかって、
「食べ物を粗末にすることは必ず起こってしまうんだから、決してそれを忘れるな!」
メメントモリみたいな文章。あざした。
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