毛のはなし
10年前から服用している持病の治療薬により、ついに脇の毛が消滅した。
服用開始1ヶ月後には、全身の体毛がみるみるうちに濃く密度を増して熊のようになり、お腹の産毛が渦を巻いていた。ショックだった。ちょっと剃ってみたりもした。剃刀負けしてかゆくなった。これからは熊として生きていく覚悟をしなければならないのか…と思ったほどだった。
しかし、3ヶ月が経つ頃から薄くなっていき、3年経った頃には腕の毛は薄くなり、一時は熊化したお腹やお尻、太ももの産毛なども薄くなり、脇毛は3本になった。司令系統が異なるのか、VIOやすね毛は特に変化なし。頭髪や眉毛、鼻毛も変わらず。人の身体は不思議だ。
そして今日、入浴前になんとなく腕を上げたら脇に毛がないことに気づいた。ここ7年近くは3本の脇毛でやってきたので、気が向いたときに抜くだけでムダ毛の処理というものも縁遠く、本当はもう少し前からなかったのかもしれない。
よく見ると、毛どころか毛穴も消滅している。グラビアアイドルも真っ青(真っ青か?)のつるつる状態。しばらく万歳の状態を維持し眺めてしまった。
持病には長年苦しめられ、本当に大変な思いをしてきた。持病によって諦めたことも少なからずある。今も薬で症状を抑えているだけで、完治にはほど遠い。治療薬服用スタート当初はさまざまな副作用が非常にきつく、副作用を紛らわせるためのまた別の薬を探し続ける日々に嫌気がさして悪い考えが頭をよぎったりもした。
でも、体毛の消滅は悪くない。いい副作用だとさえ思う。持病も含め私は自分の身体にコンプレックスが多いけれど、脇毛がないという事実はちょっと眩しい光を感じる。
自分の身体に関する唯一の自慢であった「どんなことをしてもいっさい足が臭くならない」の次に、「脇がきれい」という事実を胸に抱いて生きていこうと思う。
ただし消滅した脇毛と引き換え(引き換えか?)に、口元にたまに太い毛が生えてくるようになった。もうこれは髭だなという毛が3本ある。毛抜きが手放せない。