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あー夏休み。

夕方、じゃばじゃばと何か外から音がした。
玄関まで様子を見に行くと父と母が洗車をしていた。
父は自分の自転車を母はその手伝いを。

音だけ聞くと水の音が涼しく心地いい。しばらく玄関先で座ってみていると何やら涼しい風まで吹いてくる。気持ちがいい風だ。そうして座っている間にお向かいのおばさんが声をかけてくる。少しやり取りしたのちこれがあればより涼しいから、と団扇を渡してくれた。

私の涼しさが1UPした。

両親がせっせと働いているというのにただ見て涼んでいるだけというのもどうかと思い弟を呼んで作業の傍ら、縄跳びで遊びだす。弟と二重跳びを交代で跳ぶ。妹がなにをしているのやらと玄関先まで様子を見に来る。図らずも家族が玄関先で大集合してしまった。なんだか子供のころの夏休みになったような気持ちがしたが、なんと全員20歳を超えている。時間というのは過ぎるのが早い。信じたくなくても、気づけば歳を重ねている。切なさがある。

弟の横腹に限界が訪れ縄跳び大会は終了を迎える。体を動かしたりない私はしばらく一人で縄跳びをしたり2週間で10キロやせるダンスを踊ったりしていたが、やがて飽きてお母さんと自家用車を洗車することにした。

ホースから水を出すとホースがあったまっており、あったかーい水が出てくる。しかしそれもしばらくすると、冷たい水が出てくるようになってしぶきを浴びると気持ちがいい。お母さんが泡だらけにした車を丁寧にホースでみずをかけていく。ひととおり終わると次は布で車を拭き上げていく。ピッカピカになるとなんだか気持ちがいい。涼しかったはずだが自然と汗がしたたり落ちていく。夏だからなあ。

終わりのころになって妹が「コンビニ行くけどなんかいるー?」なんて言いながら支度を済ませてやってくる。「チョコモナカジャンボ、よろしく」というと妹はニコニコとうなづいてくれた。優しい。

洗車の後片づけも終わり、「ひと仕事終えたぁ」などとつぶやきながらリビングのクーラーにスイッチを入れると妹が買ってきたよーとチョコモナカジャンボを渡してくれる。溶けないうちにかぶりつく。

いい、夏だなあ。

蝉が遠いのか近いのかわからない場所で、わからない数、鳴いている。

いい、夏だなあ。

汗をタオルで拭って、注いだウーロン茶を一気飲みする。

いい、夏だなあ。


おわり。

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