林さんの家
以前、といってもけっこう前になってしまったが台北に行ったとき、「りんさんの家」というのが紹介されていたので寄ってみた。
かつての台湾の富豪の屋敷と庭園が一般に開放されており、林本源園邸(林家花園)という立派な名前があるらしいのだが、通称「りんさんの家」と呼ばれているらしい。
行き方などはすっかりわすれてしまったが、最寄駅を出てからあまり観光地らしくない街並みをしばらく歩いた記憶がうっすらある。
当時は入園無料で、開いている門から勝手に入り、ぐるぐると園内を歩き回れるようになっていた。(2023年現在は有料)
お屋敷は庭というより森にも近い自然にかこまれ、池には小さな橋がかかり、屋敷や建物をつなぐ回廊はどこかでみた王朝映画のワンシーンにもにでてきそうなゴージャスなつくりとなっている。建築や庭園の知識などない私でも、要所要所になにかしらのコンセプトをもとにデザインされたものだとわかる。ただし、詳しいことはよくわからない。それでも「お宅拝見」の、それもとびっきり上等の手の込んだよそのうちを見てまわるのは楽しいものだ。
高い天井のある建物の中には、木組みの椅子がならべられていて、周囲の木々による台湾の強い陽射しをほどよくやわらいだ光が飾り窓から入りこみ、人はまばらであたりは静寂な空気がただよっている。
そんな空間に飾り窓を背にして椅子に座ってみると、かつて繁栄を極めた富豪の誰かが、こんなふうにある一日を過ごしたのではないかとおもってみたりもする。と、優雅な時間を過ごしているようだが、そうしているあいだにも、池からわいてきてるのであろうやぶ蚊に足をいくつも刺された。当時の富豪も刺されあとをポリポリとかきむしっていたに違いない。
ところどころに設置された赤い消火器が、妙にリアルに目につく。
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