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イースXの話

 今や恐らく軌跡シリーズの方で有名なファルコムの看板タイトルであるアクションRPG「イース」の最新作”イースX -NORDICS-“をトロコンした。ナンバリングとしては10だが時系列としては2と4の間の物語となる。
(I•II→X→IV→III→V→VIII→VI→VII→IX)

 エステリア及びイースでの冒険を終えたアドル・クリスティンは次なる冒険を求めセルセタへと旅立ち、そして新たなる冒険を繰り広げた………というのが長年の定説だったが、近年になって発見された未公開の原稿の中にはセルセタに向かう前に起きた一悶着と大冒険が記されていたらしい。

 トロコンまで遊んだ感想としては、間違いなく面白いのだがそれと同時に快適と不快が絶妙にせめぎ合い何とも不思議な感覚に陥るゲームだった。その不思議な感覚も含めて「間違いなく面白い」と言えるのだが。


1.概要

 今作は何というのか「前作IXから一度前々作VIIIに戻し、そこから発展させて作った」ようなイメージ。その結果、

・VIIIの面白い要素を引き継ぎ、更に進化させた面白い要素、快適な要素

・VIIIまで戻してしまった結果、せっかくIXで改善されたのに先祖返りした面白くない要素、不快な要素

が共存している。


2.面白い要素、快適な要素

2.1. 冒険のスケール感

 フィールドは広く、話はコンパクトにまとめられている。一つの島を冒険するVIII、巨大な監獄都市を冒険するIXと異なり、今作は船に乗ってオベリア湾を股にかけた冒険が繰り広げられる。

 その弊害で移動時間が大幅に伸びてしまっストーリーが進むにつれ移動回りが改善され、初めは貧弱で不便だった船が次第に強固な私掠船になる、そして随分と遠いところまで来てしまったかのような感慨深さを感じられる。何となくVIIIに求めていたモノが遂に実現したような感覚がある。

2.2. 世界観などの作り込み

 ストーリーの内容に関してはIXの良い点を引き継いでおり、IX同様その地域のみで完結する物語となっている。

 また、ファルコム作品のある意味本編であるモブの作り込みも健在。今作は勇敢に闘って死ぬ事を名誉とするヴァイキングがモチーフ、加えて敵対する者も不死者であるためか、今作には全体的に死や死生観に関連するイベントが多い。そんな中でどこか達観した考えを持つ人々、あるいは別の生き方を模索する人々が本編以外のイベントや会話作りが上手いファルコムの手により描かれている。

 メインキャラだとやはり今作のもう1人の主人公かつヒロイン枠のカージャが何とも魅力的。勝気で男勝りな第一印象を与えつつも次第に見せる可愛らしさ、あざとさとでも言うのかギャップというのか…その辺りは是非とも自分の目で確かめて欲しい。
こんないい子を差し置いて他所で女作っていたのかアドル・クリスティン許せねぇ…

ボス戦の途中に挟まる演出は本当にファルコムなのか疑うレベルで見応えがある。
このシーン好き

ゲーム内の性能も過去作の「壁壊し枠」と「打撃ロリ枠」を足して割らないような性能で使っていて面白い。暴風三段ゴリ押し超たのしい()

2.3. 戦闘周りの刷新

大まかに改善点を挙げると

・攻撃属性がほぼ撤廃。戦闘中のキャラ入れ替えの煩雑さが大幅に減った。
 過去作だと弱点属性でブレイクしていたが今作ではアーマー値を削り切る事でブレイクするように変化。属性は実質撤廃されたがアドルは火力と速度に優れる代わりにブレイクが低め、カージャはブレイクに優れる代わりにモーションが遅い攻撃が多いといった個性は残っている。

・回避が大幅に弱体化した代わりにガードが非常に高性能に。
 回避はフラッシュムーブが削除され無敵時間も短縮、対してガードは判定が緩くなった上にガードボタンを押している間常にガードとなるセルセタ仕様。但し回避が不要という訳ではなく使い分ける意義はある。敵によってはガードを崩してくる強力な攻撃や、そもそもガード不可で回避のみ可能な攻撃もある。
 回避のフラッシュムーブは削除されたがフラッシュガードは形を変えて残っている。ガードを成功させる事でリベンジゲージなる物が上昇し、次に繰り出すコンビ技の火力が大幅に上がる。周囲の敵を一掃したり、ゲーム内最高難易度であるインフェルノのボス相手でも一気に体力を削る事も可能なので、非常に爽快感がある。

・今作では同じスキルを連発せず違うスキルを出す事で消費SP削減ボーナスが得られるようになった。
 最初からダメージ効率の良い技のみを連発するよりは途中で他のスキルを挟んでボーナス効果を育て、大幅なSP削減効果を得てから消費の重い大技を連発可能にした方が結果的に効率が良い場面も多い。

…など、煩雑さを減らしつつも一辺倒にならないよう随所に改善が施されている。またモーションに関してはIXを踏襲しており、やや遅い代わりに一撃の重さを演出しているような派手なスキルが多い。こちらも敵を次々と粉砕していく爽快感に繋がっている。

 まぁ最終的にはいつも通りのゴリ押しが可能になるのだが、それはそれで「強くなるにつれシステムの制約を無視できるようになる」というような成長を感じられる良い演出として機能している。


3.面白くない要素、不快な要素

 一つだけ先に擁護しておくと、以下に挙げる要素は「嫌なら無視して良い」ものばかり。そのためコンプリートやトロコンに興味が無いという人にはあまり関係しない話…かもしれない。

3.1. 移動時間が増えた皺寄せ

 今作では海を船で移動するため過去作と比較して移動時間が大幅に増えている…というのは前述の通りだが、今作のサブイベントの量は過去作とほぼ同じ頻度と量。加えてIXでオミットされた幾つかの収集要素が復活している。

 その結果、過去作ならすぐ片付けられたようなものでも今作では移動時間の影響で意外と時間がかかる事が多い。全てのイベントを消化してからメインを進めるプレイスタイルの場合はかなりテンポが悪い。ファストトラベルは実装されているが一度は実際に訪れないと使えない。そして序盤は船が貧弱で移動に難があるため、イベント消化が非常に面倒くさい。

3.2. 全体的にテンポを削ぐ要素が多い

 要所要所で挟まれる演出や字幕、カットイン、ミニゲームが多い。こちらもせっかくIXで快適になった部分まで先祖返りしてしまっている。ボス戦のフィニッシュ演出などはテンポを差し引いても非常に見応えがあるのでまだ良いのだが、単なる雑魚敵でも発動する特殊行動やカウンター成功のカットインも多い。また、奪還戦まわりの字幕やリザルト画面はテンポだけでなく見た目も何とも安っぽい。

3.3. 埋もれた財宝

これいる??????

 前作IXにも"青い花弁"や"落書き"といった収集要素はあったが、
・触れるだけで拾えるorワンボタンで収集可能
・設置場所が街中に限定されている
といった要因により大して苦ではなかった。更に言うとIXは様々な異能アクション(定点ワープ、壁走り、滑空)により移動自体が楽しく、あの花弁を拾うにはどこでどのアクションを使えば良いかなどを考える面白さがあった。

しかし今作は
・スキル発動+ボタン長押しが必須
・序盤からラストダンジョンまで終始設置されている
とIXとは真逆の作りな上に、そもそもアクションがVIIIベースなので移動アクションが少なく、移動自体が面白い作品ではない。アクションが少なければ設置場所もそこまでアクションを必要としないものが多くなる。結果、非常に煩雑で面白みのない収集要素と化してしまっている。

…繰り返しになるが、今挙げた要素の大半は「嫌なら無視して良い」ものなのがせめてもの救いか。特に埋もれた財宝は全部無視してストーリーをクリアする事も可能。


4.BGM

言うまでもなく信頼と実績のファルコムなので今作も例に漏れず名曲揃い。

 本作のBGMはVIIIに近い開放感や疾走感に加え、北欧を舞台としているからかどことなくケルティックなものが多い。バルタ島、ラウフォス島要塞、神殿などフィールドやダンジョンにも素晴らしい楽曲が数多くあるのだが、今作で1番衝撃を受けたのは各章の大ボス戦のBGM。ボス戦らしく勇ましいイントロが流れてきたと思いきや次に流れてくるのはこれから死闘が始まるとは到底思えないような厳かで神秘的なメロディ。戦闘中でじっくりとBGMを聴く余裕が無いにも関わらず非常に印象に残っている。

サントラの発売が待ち遠しいことこの上ない。

5.終わりに

 元々は年末に投稿しているその年に買ったゲームをまとめた記事にて簡潔に書くつもりだったのだが、書いているうちに書きたい内容が次々と浮かび上がり記事が一本書けそうな量となってしまったので急遽別の記事として投稿した次第だ。

 一旦VIIIまで差し戻してしまった兼ね合いでやや不便な部分まで戻ってきてしまった節は感じられるが、しかし他の要素は間違いなくVIIIから進化や改善しているためVIIIを楽しめた人なら間違いなく楽しめる。

 また昨今のファルコム作品にてよく挙げられる無駄に大風呂敷を広げるといった事も無くその地域のみで完結する物語であるため、その大風呂敷云々に不満のある人でも楽しめるのではなかろうか?

6.余談

…ふと記事を書いていて思った事がある。
・少年少女が2人で大冒険
・海=ワールドマップ
・クリアするだけなら無視して良いがやり込むと必須になる探索要素
煩雑多彩なギミック

これらの要素に見覚えはないだろうか?
そう、ファルコムが誇る名作PCゲーム”Zwei!!”だ。今作にはどことなくZwei!!を彷彿させる要素が多く仕込まれている。

もしかしたら、
・VI、フェルガナ、オリジンのシステムをベースに作られたZwei3こと"那由多の軌跡"
・軌跡シリーズのシステムをベースに作られたZwei4こと"東亰ザナドゥ"
…のように、今作イースXは”SEVEN以降のシステムをベースに作られたZwei5”なのではなかろうか?

単なる偶然のネタ被りだろうしこじつけにも程がある