2023ベストヒット3LA TOP50〜26
今年もこの季節がやってきてしました。
各メディア、音楽ブログがAOTYを発表する中、それらとほとんどかすりもしないローカルヒットチャート、つまり3LAという特殊ディストロ経済圏の売上ランキングを発表する時間です。しかし、特殊な音楽趣味のあるリスナーの方々の傾向を知るのは無駄ではありません。このランキングから何かしら新しい出会いが生まれると嬉しいです。
算出基準は出荷枚数(販売金額ではありません)で、フォーマット違いは合算しての計算となります。もちろん作品の良し悪しとは関係ないランキングですので予めご了承ください。
50. 帯化 - "御池塘自治"
レビューにも書いているんですが、初期入荷していたゴミジャケ、石、といった飛び道具がギミック的に作用していた部分も少なからずあったと思う。本作はそういったギミック的要素が減退して(?)音楽的に勝負にかかっていると思う。ギミック好きからの反応は無くなったけれど、この作品を通して益々彼らなりのDIY思想を強固にし、その存在感を増した。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2594
49. BISING - "Un-Sungs"
国内音源を数多く扱うことが出来てよかった。その中でもBISINGは最もかっこいい音を出しているバンドの1つです。アルバムはまだリリースしていないバンドだし、音源も過去のデジタル作品のディスコグラフィ的なものなので、時期によっての音の違いなどもある。それでも今後に期待せざるを得ない、アルバムがめちゃくちゃ待ち遠しい。硬質な音が好きな人みんなに聴いてほしい。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2696
48. FIXED - "NUM"
世間的にもあまりにも評価されてなさすぎると思っている。「音だけでメッセージになっている」感覚を体現しているギタリストは日本に何人いるのだろうか?バンド全体としても楽曲のミッドパートの深さ・重さが演奏、サウンド両面でも更新されていることで全体の印象が1stとかなり異なるが、世間の評価がどうしたという感じで突き進む姿が孤高。それぞれの領域で孤高の位置にいる人間に刺さるはず。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2705
47. SPOILMAN - "HARMONY"
過去作が未だに売れているんだよなぁ。これは2023年アルバムの波及効果です。特にわざわざコメントする必要もないような気がしますが、日本国内にこういった売れ線ではないロックを好きなリスナーが存在してくれていることに感謝しないといけない。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2449
46. LIFE - "coma garden"
LIFEの100枚限定LPリリース、3LAは日本レーベルとして、Larry RecordsとLimitedToOneがNYレーベルとして共同リリースされました。激情ハードコアとデプレッシブブラックメタルを融合させた音楽性と、なんとも言えぬ寂寥感を生み出すメロディが素晴らしい。LIFEは爆発的なヒットがあるわけじゃないんだけど、確実に国内ファンがいるのでレコードも売れます。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2604
45. SPOILMAN - "BODY"
こちらも2023年のアルバムリリースの効果が波及して売れている模様。バンドやってる人に言いたいのはリリースを重ねることで過去作の需要は確実に掘り起こされるということ。先へ進むんだ。作品群で評価されろ。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2016
44. FISTULA + GREENMACHiNE - "Split"
2022年にレコードリリースされたスプリットが今度はCDでリイシュー。レコード盤も即売れていましたがCDもやはり人気が高い、というよりGREENMACHiNEの支持層がマジでアツいなと感じました。FISTULA入荷に絡めてレーベルのドゥーム音源まとめ入荷していたのですが、今のご時世に試聴ほぼなしでレーベルやっている姿勢とかすげえなと思っていろいろ衝撃的でした。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2610
43. Pale + nhomme + 冬蟲夏草 + 明日の叙景 - "Two (4way split)"
初回入荷したのは2019年で、今回の入荷はnhommeの新作EPがひっぱる形で売れました。この当時の4バンドの中で明日の叙景の楽曲は聴けば分かる通り、90年代的=保守的な価値観から解き放たれていて別格。2023年彼らはさらに跳ねたけど、nhommeの新作もまた海外リスナーに届き始め、日本の音楽にとっては追い風が吹いている。スプリットはアルバムしか聞いていないリスナーもいるのでフィジカルで持っておきたかったのかもしれない。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1832
42. cold winter - "『人間といえば?』『愚か!』『ですが…』"
CD盤とカセットでこの順位に。ディストロ文化の昔話になってしまうけれど、以前は各地方間での個人のやりとりによる音源の流通という役割が大きかった。マイナーな音楽ジャンルでも東京以外の都市でも今よりもっとバンドが多かった。現代ではバンド数も減って、「やり続ける」ということが難しくなっているけれど、cold winterやMEIANをリリースしたみちのくさんの活動は重要な役割があったと思う。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2665
41. 明日の叙景 - "わたしと私だったもの"
明日の叙景の1stがCDリマスターされたのと、アナログが入荷されたのと、カセット版もありのでトータルで売上枚数が伸びたのでランクインしています。過去作が売れるということは、バンドが今も新しいリスナーを獲得し続けていることの証明でもある。なぜそれが3LAで売れるのかは謎である。すべて水谷のおかげ。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2801
40. 不夜城 - "Placenta"
明日の叙景や2020年以降の新生envy影響下にある新しいバンド、不夜城のEPも大きな反響がありました。新しいバンドから音源の委託依頼を受けるのは光栄なことです、声をかけていただきありがとうございました。もちろん取り扱うのが目標ではなく、ウチはウチで売ることをしっかり考えないといけないとは思うのだが。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2811
39. alvin - "継続"
東北の地、仙台エモ/ポストハードコア alvinによる1stアルバム。1枚のアルバムの中にいくつもの顔、ストーリーがある。SPOILMANの東北ツアーでもバンドにはお世話になりましたが、ライブがかなり良かった。ローカルの営みとの接続、そんなことを考えさせられる。どのメディアのランキングにも入らないと思うが、3LAの活動としても非常に重要な1枚となった。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2651
38. 明日の叙景 - "すべてか弱い願い"
1st同様だがアナログやカセット版がリリースされたことでランキングを押し上げた。アルバムよりもこのEPのほうが売れているというのは、メタル要素が比較的まだ強い1stよりも、2ndアルバムへの布石となったこのEPの方が人気が高いというのは納得感はある。長尺なアルバムよりも、より手軽に彼らの世界観に触れることもできるということ。新規リスナーが増えてる証。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2113
37. AMBIVALENCE - "Driven by the Emotion"
名古屋から登場したこのバンドを未チェックの方は多いんじゃないか?ドゥームストーナーとネオクラストが融合したような音はめちゃくちゃかっこいいです。カセットというフォーマットによりリスナーがまだ限定されている印象、3曲の楽曲はそれぞれカラーがあるのでアルバムでの全容解明が待たれる。
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2657
36. Angry Son - "the first two works"
激情ハードコアというかskramzの国内リリース音源は限られているけれど、リリースされているものは確実に押さえておいてほしい。Angry Sonのカセットも入荷して無事売り切れております。Gensenkanとメンバーの重複はあるものの、音的なニュアンスは全然違う。音源は売り切れている。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2704
35. MEIAN - "遠ざかる"
cold winterと同じく、Northern Sadness Productionsからのリリース。以前のEPの存在もあったので事前から期待値は高かったと思うけど、それを塗り替える出来栄え。欧州激情要素強めの楽曲、演奏だが、日本そして北国ローカルで独自醸造される音。日本のことみんなまだ知らないと思うので聴いてください。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2666
34. Ekkaia - "Las Hogeras Arden Cada Vez Con Ms Fuerza"
ネオクラスト到達点、Ekkaiaのディスコグラフィーが全曲リマスターを経て3枚組LPにて復活。送料の高さもあって再入荷躊躇していたら2023年が終わってしまいました。一度きりの入荷になってしまった。bandcampではデジタルダウンロード出来るのでデジタル派の方は無料ゲットするのもいいんじゃないですか。ここに全てが詰まっている。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2622
33. moreru - "itsunohinikabokunokotowoomoidasugaii そして……"
実はリリース以来地道に再入荷続けていました。最初のリリースが2019年、それから毎年オーダーしていたんだけど今年遂にバンド側も売り切れになったようで最終入荷となりました。真面目な話、彼らはちゃんと新しいリリースを行なっているし、年々新しいリスナーを獲得している。だからこそ旧作を求めて3LAにたどり着くリスナーがいるということ。ありがたいですね。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1855
32. TRIKORONA - "様々な困惑"
タイトルが区別つかないですが、こちらは前作のほう。はるか昔にディストロ入荷したことがあったタイトルですが、2023年に入って笠沼氏(Endless/Nameless)にて在庫大量持っていることが判明、再入荷してもらったところたくさん売れたというオチ。それは彼らがリリースした2023年のアルバムの評判がとんでもなく良かったからです。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=371
31. Piri Reis + Sto Cosi Cosi - "Split"
こちらも笠沼氏案件。Piri Reisのアルバム『Ritma』CD盤を3LAでリリースする流れがあって、こちらの音源も大きなリアクションがありました。内容としては2016年のジャパンツアーに纏わるZINEなのですが、思えばこの激情ハードコア的なジャンルはリリース時期という要素があまり関係ないというか、良い作品が入荷されればみんな買ってくれるという安心感(?)があるので、自分が枚数考慮するときも10枚単位で入荷できるという良さがあるのかもしれない。在庫は2023年売り切った分で終了したとのこと。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2679
30. Svdestada -"candela"
リリースは2月なんだよな〜〜〜、でもランクインしました。ありがとうございます。スペインのバンドと関係性が出来たのは、もう何年も前だけどネオクラストをちゃんと追いかけたからだと思ってて、それが出来たのは同じように追いかけてるリスナーが存在してたから。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2885
29. Ictus - "Complete Discography"
たぶん、なんだけど海外からのオーダーが多かった。ほとんどbandcamp経由なんじゃないか。毎年ある程度売れてるんだからすごいよ。レーベル開始の3LA-001リリース、無謀にも1000枚をプレスした。でももう残り少ない。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=413
28. computer fight - "suburban blues"
東京のパンクバンド、メインストリームからの番外地。ポストパンクと呼ぶにふさわしいのかもしれないけれど私はポストパンクが何なのかよくわかっていない。と書いたけど今でもよくわかっていない。リリース後メンバーが変わっている。打ち捨てられたゴミ、誰もが目を止めない"何か"を意識しているかしていないかでもアウトプットされるものには大きな違いがある。我々は影に捨てられた悲しみから目を逸らしてはならない。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2629
27. TRIKORONA - "様々な困惑"
世界のエモバイオレンス番外地としてのトリコロナ解釈、2023年のこの作品には自分もテキストを提供しました。過去作とはまた別軸のサウンドの組み立てがあってかなり良かった。過去作と同じタイトルをアルバムにつけるなど、ディガー殺しの仕様なのがすごい。とはいえ、国内激情勢にはまだ「いや、だってTRIKORONAでしょ?」と思われているかもしれないが、本当に聴いてみてほしい。マジで激情だから。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2562
26. 春ねむり Haru Nemuri - "春と修羅"
今年も売りまくったね、海外に。2018年作で最新のアルバムなんかが話題なんですが、そういった軸とは関係ないところで動いている印象。このアルバムは最新作とかはたぶん違う。3LAは勝手に海外へ売る窓口みたいになっていて(他のバンドでも海外に売っている枚数がある程度はあるけど)、過去インタビューしたのとは関係なく、やっぱ売れる人ってすごいなと思わせてくれるパワーはあります。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2619
続きは後編に。
ここまで書いていて思ったんだけど、邦ロックやインディロックは海外に売れるんだけど、国内の激情ハードコアっていうのは「激情ハードコア」というから日本国内でしか通じなくなってしまうのではないか?と思えてきた。いったん定義はおいといてskramzとして売ってしまったほうが話が早い気がする。