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2023ベストヒット3LA TOP25〜1

前回の続き、後編は25位〜1位の記事になります。
26位〜50位も重要なエリアなので是非前編もチェックしてみてください。
それでは後編へ。



(前文 : 前編と同じです)
今年もこの季節がやってきてしました。
各メディア、音楽ブログがAOTYを発表する中、それらとほとんどかすりもしないローカルヒットチャート、つまり3LAという特殊ディストロ経済圏の売上ランキングを発表する時間です。しかし、特殊な音楽趣味のあるリスナーの方々の傾向を知るのは無駄ではありません。このランキングから何かしら新しい出会いが生まれると嬉しいです。
算出基準は出荷枚数(販売金額ではありません)で、フォーマット違いは合算しての計算となります。もちろん作品の良し悪しとは関係ないランキングですので予めご了承ください。


25. Cruyff - "lovefullstudentnerdthings"

東京の4人組。その音を聴いた時、それがある世代や人々を代表するような存在になるかどうか、自分は多分判断することが出来ます(陽キャ音楽でない限り)。cruyffもやはり「これは」と思うものがありましたので結構強気な本数でオーダーしていました。海外にもいくつか売れていきました。EPはHELMETに通じる硬質な感じがあったけどアルバムでより拡散した音になった。言われるほどシューゲイズでもない。ケミカルX、というキーワードで混ぜ合わせた音には暴力性もあるけど繊細な感情までも同時に存在する。若い世代ならではの新しい解釈と表現がある。
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24. 青い薔薇 (aoibara) - "wave flower"

大阪の女性voシューゲイズ邦ロック、青い薔薇。こちらも若いバンド。国内で支持を得るcruyffとは対照的というか、青い薔薇の音源の多くは海外からのオーダーとなった。おそらく半分以上海外からのオーダーで売上枚数を伸ばしていったと思う。メインストリームの邦ロックとは異なる、曲作りのうまさが際立つ。たぶん、多くのシューゲイズバンドとは「浮遊感」の解釈が違うんだと思う。
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23. herside - "4 songs"

2023年8月にイベントとして重要だったのは北九州のHAEREREとhersideのスプリットの東京レコ発を実現できたこと。本作はhersideの2018年作品ですが2023年リリースのスプリットの反応が大きく、過去作もあわせてめちゃくちゃ売れたのでした。もう2023年ランキングとは思えない動きでした。ローカルのポストハードコア、もっとみんな知ってほしい。
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22. SeeK - "故郷で死ぬ男"

徹底したヘヴィネスを追求するSeeKだが、同時に現代に向けた強烈なアンチテーゼがある。2023年に遂に完成をみたアルバムは多くの賞賛を受けたし、これは他の音楽メディアやブログのAOTYにも登場しているかもしれない。ドゥーム、ポストメタル的な作風とアトモスフェリックなポストブラック要素もあり、海外メタルリスナーからの評価も獲得したのも納得な1枚。世界基準とはこういうことか、と思った。2024年はレコード盤も入荷したいと思っている。
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21. kamomekamome + SWARRRM - "split"

2022年のリリースではあるのですが、SWARRRMは最新アルバムをリリースした影響もあり、過去作としてある程度枚数が動いているのでした。SWARRRM曲は再録でアルバム収録されてはいるのだけれど、別の曲か!?というレベルでアルバムとは違うのでそういったところもポイント。kamomekamomeは次のアルバムが待望されている。
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20. HAERERE - "st"

hersideと同じく北九州のバンド。2023年スプリットで大きな反響を得て、この2017年 EPもかなりの枚数が売れた。トータルとしては若干HAEREREの枚数が上回ったか。基本的にはHAERERとhersideのスプリットとそれぞれのEPの3点セットでの購入が多かったです。一部の在庫は海外へもディストロされました。
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19. 老人の仕事 - "2nd"

1st発表時にも圧倒的なリアクションをもって全国のドゥーム/ストーナーヘッズから反応があった謎のバンド、老人の仕事。サブスクの試聴一切なしのスタイルながら1stに続き2ndもかなりの枚数が売れました。それが2022年から継続なんで、すごいことですね。ライブの本数も多いのでバンドの動向を今後もチェックお願いします。
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18. kokeshi - "冷刻"

これは別件でアンケートとっている2023年の良かった音源として挙げている人多数。「ブラッケンド」というキーワードもあるけれど、集まっているお客さん層はそれだけじゃなさそう。SWARRRMのレコ発にも出演して頂きましたが、普段歓声があがりそうな場面での客席の沈黙は独特だった。"V系"な文脈にも通じる表現はまさしく "J"、今後の日本のバンドが海外へも通用するキーワードでもある。
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17. xonto - "orbis"

激情ハードコアの美学を実践するxontoは音楽性としては実験性もあり作品として面白いものが出来上がっています。彼らもサブスク試聴なし状態からフィジカルの音源が売れていますが、老人の仕事との共通点は確実にある。ビジネスやロジックではない遊び要素の追求が、結局はオリジナリティとなり、そして音源の売上になっていくという流れは素晴らしい。2023年に国内ポストハードコア勢の可能性を感じることが多かったが、xontoはその最たる例かもしれない。
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16. Mildred - "Pt.2 Deluxe Edition"

完全に無名なバンド、Mildredの作品をリリースします。リリースは2024年1月ですが、予約分でそれなりに数が入りましてこの順位に。ある程度実績のあるバンドならまだしも、完全無名バンドをリリースするのは今回かなりひさしぶり。それでもMildred知っているリスナー存在していたのはすごい。2024年1月5日リリースです。是非聴いてください。
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15. 明日の叙景 - "アイランド"

2022年リリースですがアナログでLPリリースがあり、カセットのリリースもあり、CDも変わらず海外含めてオーダーは継続的にありました。こうやってランキングを振り返ってみると、人気が瞬間的に高いよりも継続していくという"長さ"の要素もかなり重要だと思う。リリースだけではなく、定期的な発信やニュースがあるか、という点。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2491


14. City Of Caterpillar - "st" 

2000年代のScreamoを象徴する傑作、City Of Caterpillarのセルフタイトル音源の20周年記念盤、20周年を記念した新しいデザインでのリイシュー。CDでの編集盤に続いて、日本でのディストリビューションを担当しています。こういった激情名盤の在庫は切らしちゃいけないなと思っていて、温故知新は忘れちゃいけない。激情とは、skramzとは、その思考や内側に深く潜っていくエモの真髄。ここで知ることができます。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2783



13. moreru - "山田花子"

2022年のリリースですが、CDに加えてレコードがリリースされたことでランクイン。moreruを求めて店舗まで来てくれるお客さんもいました。
moreruの何が良いかっていう答えは音が云々以前に、今現在の新しく生まれているバンドのほとんどが90年代〜00年代のリバイバルに向かっていく中で彼らはそういったリバイバルとは無縁の衝動的な音楽を作り続けている。そのエッジを持った姿勢がかっこいい。そして若い世代のひとつのカルチャーを形成しつつあるような気もする。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2641


12. POWER - "CHIKARA"

音楽スタイルを踏襲というだけのEMOではなく試行錯誤の痕跡、マジでそれが"自分にとっては"一番の刺激になるし励みになる。アートとは何か、それは自己変革の過程でもある。SWIPE〜THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT、Zといったバンドで活動してきた根本氏らの現在進行形の表現をスルーしてしまったらそれはもう嘘ではないでしょうか。今はわからなくても長く聴くことができる作品なので並走していけばいい
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2636



11. raika - "hope EP"

xontoやherside等、日本で独自進化している激情・ポストハードコア好きにお勧めです。本当に2023年の国内リリース豊作でした。HAERERE、hersideのレコ発東京編にも当然出演打診しまして出て頂きましたが、EPの時とはまた異なる音があり進化の過程という感じも印象的でした。2024年も音源作ってください(ここで訴える)
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2605



10. 春ねむり Haru Nemuri- "春火燎原"

リリース自体は2022年ですがフィジカル到着が2023年、LPに加えてCDもしっかり入荷していたので国内外含め売れました。2023年リリースのEPがフィジカルでリリースされたらまた入荷したいなと思っています。フィジカルリリースが現在進行形のアーティストに追いつかないパターン…。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2774



9. nhomme - "一種の過音"

日本でしか生まれないマスskramz、nhommeの立ち位置は以前からも特殊ではあったけれど、国内勢への追い風と共に2023年にこのEPがリリースされたことは意義深い。skramz界の名門Zegema Beachからもリリースされ、海外リスナーにも発見され国内外でも存在感を増したと思う。紙から手作りするという狂気のジャケットも衝撃的。その"無駄"にこそ真実はある。
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8. quiqui - "もう少しの暦"

マスターピースになったと思うquiquiのアルバム、CDは売り切れていましたが2023年に遂に再プレス、LPもカセットも入荷されましてしっかりランクインしました。skramzって何?っていう答えに対して、現時点での最適解。90年代を生きてきた人間に理解されなくてもいい。これは新しい世代への音なのだから。という思いで今後もディストロしていきたい。バンドには新しい音源を待望している…。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2334


7. HAERERE + herside - "split"

大きなリアクションを獲得した北九州の2バンドのスプリット。8月にレコ発を企画、映像も記録するなど3LA的にも重要な軸になった作品でした。ローカルとは、そして東京という土地で我々がやるべきこととは。xontoやraika、SPOILMAN、Gensenkanといったバンドと接続しながら大きなうねりを生み出した。どのメディアからも無視されるであろう音、このシーンだけれど we were here、そういうことです。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2587



6. SPOILMAN - "BASTERD NERD PIG"

初期作品からもインタビューなどで絡んでいたSPOILMANとも『UNDERTOW』『COMBER』の同時リリースからレーベルとしての並走が始まった。リリース後のツアー、そして年末に集大成となるレコ発ワンマン、唐突なアルバムリリース、多くの無駄と馬鹿馬鹿しさを含みながら世に放たれた"BASTERD NERD PIG"はリリースから1週間程度だが、現場での売上があったので枚数が出ています。実際には2024年、これから広げていく感じになりますので、どうぞよろしくお願いします。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2902



5. Piri Reis - "ritma"

内容良すぎて絶対日本盤CD出すべきだと思ってバンドに打診、そして実現した2020年代skramz、かつアジアの作品として重要です。
2014年に結成されたマレーシアの5ピースハードコアバンドPIRI REISは、同国の伝説的ScreamoバンドUtarid,Kias Fansuriのメンバーも参加しており、彼らが表現するものは今の時代を生きる者達へのエモバイオレンスであり彼らの生活の背景にある歴史・文化と密接にリンクした哀愁でもある。それは遠く日本に暮らす我々にとっても通じるものが確かにある。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2693



4. SPOILMAN - "UNDERTOW"
3. SPOILMAN - "COMBER"

リリース決定後、LPリリース実現のためのクラウドファンディング開始、そして1日で100万円が集まり仕様をどんどん豪華にしていった。結果、儲けはほとんど無し、という最高のレコード2枚を同時リリース。のちにCD盤も追加されたのでこのランキングに。僅差でCOMBERの方が上回りました。ライブをいくつか追っていって撮影しているのでyoutubeもチェックしてください、とはいえ最後のワンマンでしか演奏していない曲も多数。曲がありすぎるんだ。
https://longlegslongarms.jp/music/products/list.php?mode=search&name=SPOILMAN%202023




2. SWARRRM - "偽救世主共 + AGAINST AGAIN"

SWARRRMの初期重要作、廃盤となっていた『偽救世主共』+『AGAINST AGAIN』が編集盤として復活。名門HG-FACTからリリースされていた傑作、改めてマーケットに流通させることができました。ジャケットの仕様が特殊なのですが、現代のCDプレス屋さんではそれを再現できるところがないので、ジャケットは印刷の専門会社で作って、CDプレスの工程へ組み込むというような調整をしています。イレギュラーな仕様に関しても、正しい道筋を見つけられるようになってきたのは長年レーベルをやってきて得たナレッジなのかもしれない。CDは無事売り切れとなりました。
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2593



1. SWARRRM - "焦がせ"

SWARRRMのリリースがある年は絶対SWARRRMが一位になります。それくらい他のリリースとは売れる枚数が違うってことなんですが、作品性を考えると想定しているリスナー層というかポテンシャルはまだまだこんなものではないと思っている。本作が良かったと思った人、是非2023年BESTアルバムに挙げてください。グラインドコア、という言葉で説明はされるけれど、それはバンドが背負っている歴史・文脈という面が大きい。SWARRRMの音楽性は前人未到のカオスと日本語ロックの融合にあり、国内外にもその評価軸が存在していない。それでも一番評価をしてくれるリスナーという存在は大きい。進化の速度を加速させるバンドをリアルタイムで記録しているという実感がある。「わかってるはずさ」「青い花」といったアルバム曲の存在感も強いのでいつかライブでも聴いてみたい…。

https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2775


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