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3LAの新入荷 / オチンチンと星条旗 / 2000年代Thouへ挑戦すること / Fugaziありがたがり過ぎ問題

今回も新入荷などの紹介です。

■ 新入荷の紹介、Drug Churchと2021年注目音源入荷

Drug Churchは絶対に入荷したいと思っていた、今の時代のヘヴィオルタナ(人によってはそんな解釈はしない)最近次のアルバムのアナウンスもされました。『Cheer』期のゴリゴリのヘヴィさも好きですが、垣根を壊していく『Tawny』のEPも良いし、その方向性のアルバムだとすればそれはもう期待大という話です。

以前のインタビューだと、歌詞をレコーディングの直前まで書かずに新鮮な生まれたばかりの言葉で歌うみたいなことを言っていたんですが、そんなアーティストがこの2021年に存在するのだろうか。本当なのかわかりませんが、本当かもしれないと思わせてくれればそれでいい気がします。

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Tawny / Drug Church (12inch EP: Color)
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2356

NYのヘヴィロック、DRUG CHURCHの2021年EPは最高です。
前作ジャケットがアメリカへのアナロジーだとしたら、本作で黒バックに車を走らせようとする様は逃避のようにも見えるが、ダメダメ、シートベルトが首にかかっているので完全に死亡フラグです。しかし前作から次のアルバムへの過渡期、移行中であるという風にも解釈できるジャケットで、実際にサウンドにも様々な更新がなされている。しかしその変化は必ずしも成功するものではないし、そのリスクを本人も自覚しているけどやるんだぜという意志に燃えた激しさがあります。後期のHELMETにも似た歌物感が増しつつも、ヘヴィなリフとグルーヴで攻めていく楽曲たちに、次の用意されているアルバムへの期待が膨らむ。カバー曲#4はおそらくアルバムには入らないだろう。


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Cheer / Drug Church (LP: Color)
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2357

NYのヘヴィロック、DRUG CHURCHの2018年アルバムも最高です。
アルバムジャケットの3人組は赤と青のペンキを全身に塗りたくった全裸男性、そして白い仮面をつけているのだがよーく目を凝らして見るとオチンまで見えてしまっているではないか。しかし彼らはふざけているのではない。こんがらがった紐、そして明らかに前方を見えなくなっている赤白青…とくればもうそれが意味するものは星条旗、アメリカへのアナロジーであるとしか言いようがなく、End of a Year〜Self Defense Familyでも活動してきたPatrick Kindlonが表現せずにいられなかったメッセージがある。90年代のポストハードコアやグランジ、ヘヴィオルタナを満載したサウンドでそのドライブ感はもちろん気持ちが良いものだが、彼らの思想がそこに乗ることでDrug Churchの音楽は完成している。



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LOUDMOUTH / VIAL (LP: HOT PINK AND ORCHID SPLATTER)
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2353

VIALの2021年作も新入荷。ポップパンク的ですが彼女たちの表現の中にハードコアやRiot Grrrlがあることは明白。僕がフェミニズムを語ることには何の信憑性もないがVIALが表現することには信憑性があるって話。フェミニズムだから良い音楽である、とはなりません。しかし良い音楽であり、フェミニズムの運動と連動していく、というのはまた別の話です。

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ビジュアル的には完全にいけてます。


■ Thouの各種音源が再入荷されました。

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1990年代のfugaziは語るものが多すぎる存在。でも作品ごとのテーマ性、文脈の深さでいうならThouって2000年代以降のバンドとしてFugaziに匹敵するくらいの革新の挑戦をしているバンドであると思います。でも彼らの評価はすごく限定的。過小評価だと思うんですよね。この度いくつか音源を入荷してみたので、Thouに挑戦してほしいです。思想の深さがあるバンドは、やっぱり国内でも海外でもそんなにいないと思います。


Tyrant / Thou (CD)
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1863

Thouの2007年発表1stアルバム!CD盤は厚紙のゲートフォールド仕様のジャケットになっていて、横帯でアートワークと分離する形でバンド名とタイトルが入っているのもいけている。
Thouの音楽で表現しているのは、音圧でのヘヴィさではない。この1st音源ですでにスタイルを確立しており、ヘヴィであり、アトモスフェリックで、エモーショナルに精神の深みへと降りていく。深い井戸は降りていけば降りていくほど孤独は深まっていくが、音は聞くものを突き放すような暴力的なものではなく、精神に寄り添い続ける。High On Fireのようなバンドが引き合いに出されることもあるけれど、それはちょっと違う。Thouの音はもっと孤独で、知的な、独特の荘厳さが伴う。


Peasant / Thou (CD)
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1864

Thouの2008年発表2ndアルバム、この音源もCD盤は厚紙のゲートフォールド仕様のジャケットになっていて、横帯でアートワークと分離する形でバンド名とタイトルが入っている。2007年の1stはOne Eye Records(Thouメンバーによって運営されている)からリリースされたんだけど、この2ndのLPなんとSaetia等でおなじみ、Level Plane Recordsからのリリースだ。意外にも思えるかもしれないが、音を聴いてもらえれば必ずや納得してもらえると思う。ドゥーム、スラッジ系のバンドでここまでEMO、激情と共鳴するものを持っているバンドも珍しいだろう。1stからの進化も凄すぎる。轟音のリフの中に激情の哀愁がある。


Summit / Thou (CD)
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1321

Thouの2010年発表3rdアルバム!
1stから2ndへの進化具合も凄まじいが、ここにきての3rdアルバムでも更なる変貌を遂げている。LPのリリースレーベルはSouthern Lord、2010年前後の各方面に手を広げていたレーベルの新しいカラーとして十分に意味のあるリリースだったのだろう。アルバム冒頭のブラストビートも意表を突いているし、暗く、重く、精神の深みへと降りていくような彼らならではの荘厳さも持ち合わせている。アルバムとしての一番の変化として感じる点は、全体がよりドラマチックになったことだ。より劇的になったことが初期作が好きな人にとっては好みの分かれるところかもしれないが、このレベルで表現されると文句は言えないという圧倒的な作品。


Heathen / Thou (CD)
https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1322

Thouの2014年発表4thアルバム! 1st、2nd、3rdと進化を重ねてきた彼らだが、このアルバムでもまた新たな挑戦を行い、そして相変わらずの高次元な作品を提示するに至っているのは本当に驚く。
1stのRawさ、2ndの激情にも通じるエモーショナル表現、3rdのドラマ性、そういった要素を1つも削ぎ落とすことなくバンドは次のPHASEに向かい、見事に新しいレベルでの表現を提示している。『Heathen』=異教徒と意味するアルバム、そして1曲目「free will」=自由意志を意味する言葉が代弁するように、他とは違う、何も縛られない彼らの信念が具現化されている。リリックは知的で、サウンドは荘厳だ。聴く者に作品としての重さを感じさせる。


で、やっぱりFugaziの名前を出してツイートするとそれなりに拡散されるという「Fugaziありがたがり過ぎ問題」というのがあります。

思うのですが、2000年代以降の音楽性が90年代よりも過小評価されてたりするのもわかるのですが、リスナー側も感覚が更新されていくべきではと思うのです。たしかに90年代の新しいパンクの衝撃は大きかったと思いますが、それらを無条件にありがたがっていたり全肯定したまま何の問いにも発展させないのって、Fugaziの表現のこと何もわかってないのと同じだと思うのですよ。

自分だってそれなりに考えて生きていると思うのですが、昔のバンドたちの思想やアクションから学ぶのはそのエネルギーの発散の仕方やアイデアの産み方だったりしますが、彼らが出している答えみたいなものはこの現代社会ではもう通じなくなっていることがほとんどだと思うのです。問題意識や、いろいろなこと、すでに僕たちは彼らの当時考えていたようなことは超えてしまっているのです。僕たちはもう誰も明確な回答を持っていない問題に直面していて、自分たちで答えを出し、そして行動していくような段階になっているのです。Fugaziだろうがマイナースレットだろうがenvyだろうがkillieだろうが、自分を全肯定してくれていると思ったらそれは錯覚、錯覚も重要な要素ではあるんだけど、もう答えはひとつで「自分で考えろ」だと思います。SNSをみて政治や音楽をするな!

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3LA 水谷
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