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Interview with PSP Social

ディストロに音源とA4のZINEが到着してそのビジュアルと内容に戸惑ってしまった東京のバンド、PSP Social。作品のテーマはガンダム?イデオン?ふざけているのか?オタクなのか?という浅はかな自分の先入観を打ちくだく彼らの自分と音楽への正直さが滲みでたインタビューになりました。音源と合わせてお楽しみください。

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「別にオタクだとかナードみたいなものを標榜してるつもりは無い」

3LA(以下、Q): 
最初の質問がお約束というかクソつまんないやつで申し訳ないんですが、バンドの結成から簡単にここまでのプロフィールを教えていただけますか?

アバラ:
まず高校の時俺と田村でバンドやろうってことになって、そのあと田村が学校の友達である勢子くんを誘って結成しました。2016年の12月末だったと思います。
そこから特にメンバーの変更とかは無く今日までやってきただけですね。

Q:
ZINEの内容がかなりオタク寄りだったので、アバラさんはオタクだと思うんですが、みなさんオタクですか?

アバラ:
先に補足させてもらうと僕らは別にオタクだとかナードみたいなものを標榜してるつもりは無いんです。ZINEにもそういった言葉が出てこないように気をつけたつもりです。ただ僕らはたまたま世間からはオタクと呼ばれるような人種であっただけのつもりです。だから今回のアルバムの正体みたいなものに触れようとするのであればオタクについてはあまり深掘りする必要はないと思います。
話の腰を折るようなことを言ってすいません。それは言っておきたかったので。

田村:
自分も正直自分がオタクだという自覚はないです。知識も乏しいです。ただアニメは現実逃避としても作品としても好きです。中学生の頃なんかはアニメに救われてたと思います。
今回のアルバムの構想についてアバラから提案された当初、まだその構想とサウンドの具体的なビジョンは自分の中ではっきりしていませんでしたが、現代の極度な迄の情報化社会を生きる我々の閉塞感、ディスコミュニケーションを「機動戦士ガンダム」と「伝説巨神イデオン」に結びつけて表現するという事自体はしっくりきていましたし、とても自然に受け取れたのを覚えています。つまり自分に関して言えばなんかナヨナヨした奴という事になります。

勢子:
特に意識はしてませんがそうだと思います。ただアニメよりはゲームで育った方ですね。ガンダムはメンバーに勧められて見ました。アニメをちゃんと見始めたのもバンドを組んでからだったと思います。演奏面でもその他の面でも私は二人の影響をかなり受けてますね。

サラバ未来世紀 : PSP Social (CD+ZINE)

「僕らみたいなスマホを持つ世代にとっては現行=リアルみたいな感覚は薄い」

Q:
ZINEがすごく馬鹿らしいけど面白くて「ふざけたOK Computer」って表現しているキーワードが印象的でした。Radioheadってみなさんの中でどういう位置づけなんでしょう?全然世代じゃないような気もするんですが。

アバラ:
Radioheadは全員共通して好きなバンド、一つ目指してるバンドのつもりです。それはサウンドや曲そのものもそうだけどアルバムを作る姿勢としても見習っています。
またRadioheadは世代じゃありませんが、僕らみたいなスマホを持つ世代にとっては現行=リアルみたいな感覚は薄いと思います。音楽に限らず遡って一番自分の肌に合うモノを探す世代です。少なくとも僕が中高ぐらいの時に触れたRadioheadはリアルに感じました。

田村:
自分も同じく作品に対しての姿勢と、ライブの前提が必ずしも音源の再現ではない所も好きです。Kid A以降の音楽性でも肉体的に一から音を出してくれている感じとその作品との住み分けが。あとは歌謡的な良さがずっとある所です。基本的にはガシャンガシャンしててうるさい音楽が好きでやりたいですが、彼等のそういった感覚はバンドやる上で目指すところにはなってると思います。

勢子:
特に好きなバンドの一つですね。サウンドの変遷だったり、その中でも変わらない歌の良さだったり自分がバンド活動をする中で大事にしたい要素を見出してるところはあると思います。その点抜きにしても単純に好きで、「ふざけたOK Computer」とアルバム構想時に聞いた時も結構ワクワクしていた記憶があります。


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「ジャンルとしてではなく自然と空間表現が洗練されてるバンドは特にリアルに感じる」

Q:
「現行=リアルみたいな感覚は薄い」っていうのは聴いていてもそうなんだろうなって思いました。では自分たちが「これはリアルだな」って感じた作品をRadiohead以外でも教えて欲しいです。

アバラ:
もともと僕たちはサイケみたいなのが好きでCANのアルバムにある乾いた感じはリアルに感じてました。ZINEに書いた気がするけどAt The Drive-InとかThe Mars Volta、Public Image Ltd、あとはPink Floydの『Meddle』とかRed Hot Chili Peppersの『Blood Sugar Sex Magik』なんかは今でも大好きなアルバムですね。日本だと割礼とかも好きですね。あんまり聴き手と距離が近すぎない音楽とかちょっとふざけてるような音楽が好きなんだと思います。これらは中高ぐらいの時リアルに感じてた音楽です。
最近よく聴くのはCodeine、POLVO、Skywave、A Place to Bury Strangersあたりですね、日本だと帯化の音楽には感動しました。

田村: 
バンド音楽で好きなものは皆大体同じだと思います。
中でも分類されているジャンルに自覚的じゃなさそうというか、ジャンルとしてではなく自然と空間表現が洗練されてるバンドは特にリアルに感じれるような気がします。
それこそ割礼、A Place to Bury Strangers 、Swervedriver、Deerhunterとか。FugaziとかDrive Like Jehuあたりも。
最近だとアバラに教えてもらったAvenadeがバカさ加減も含めて自分達と近い気がしました。

Q:
「歌謡的な良さ」「歌の良さ」について、PSP Socialも基本はJ-ROCKというか歌謡的な感じなのかなと思いました。それも現代的ではない、ちょっと2000年代頃の感じです。やっぱり歌モノという意識はあるのでしょうか

アバラ:
単に僕らが歌うのが好きなのもあります。

Q:
録音は結構ラフだなと思いました。スタジオ録音とベッドルーム感の中間くらいな印象です。DIYでの録音ですか?

アバラ:
録音は四谷アウトブレイクで一発録りした後素材を全部自分たちでミックスしました。誰もミックスの経験がなくて調べながらやったので上手くいかなったところが多いですね。ファーストのミックスを人に頼んだら思っていたような音にならなくて後悔したので音が悪くても自分たちの作品に責任が持てるようにということで自分たちでミックスしました。

Q:「ファーストのミックスを人に頼んだら思っていたような音にならなくて後悔」というのは、普通な音質になってしまったってところなんでしょうか?本作のほうが音自体はラフだし、言い方はよくないけど一般的にはショボい音なのかもしれないけど、僕はこっちのほうが正直な音な気がする。

アバラ:
そうですね。もっと棘のあるというかギラギラした音にしたかったのにエンジニアの人と上手く意思疎通が出来なくて良くも悪くも普通の音になっちゃったんです。音のイメージをはっきり伝えなかったこっちの落ち度なんですけどこれが物凄く嫌で、個人的には出来ればもう聴かれたく無いなとも思ってます。
それで次からは拙くても全部自分たちでやろうということになりバンドも略称に変えて再出発…みたいな気持ちがありましたね。そうすれば自分たちの納得した音にして出すので悪い音にも責任が持てるし、言ったように嘘も無い内容になったかなとは思ってます。本当はもっとローを強く出したかったんですけど。


「たまにはバンド側が聴いてる人間を攻撃してもいい」

Q:
SPOILMANにインタビューした際にカシマさんがPSP Socialが良かったと言っていて、フルパワー版というのがあるという話になりました。そもそもフルパワーとは何なのでしょうか?

アバラ:
読んで字のごとく超パワーがあるということです。たまにはバンド側が聴いてる人間を攻撃してもいいと思って公開しました。こんなの聴いてたら耳が壊れちゃうと思います。

Q:
カシマさんはただ音圧を上げただけなんじゃないか?と言っていたんですが実際にそうなんですか?

アバラ:
そうです。skywaveってバンドがいてそんな音にしたかったんですけどやり方がわからずとりあえず上げられるだけ音圧あげたらめちゃくちゃ笑えたので採用ということになりました。悪ノリですね完全に。

Q: 
ありがとうございます。結構良い感じのテキスト量になってきたので締めに向かいたいんですが、言い残したことやこれだけは言いたいことっていうのはありますか?
インタビューで全てを説明しちゃうよりは、ここはとっかりりまでに留めておいて、あとは音源を聞いて、ライブを見て(いま難しいかもだけど)、そういう過程を経てこの正直な音を楽しむなり何か感じてもらえたらとおもいます。

アバラ: 
アルバムに関しての話は言い残したこととかを探すとキリがないし話したいことめちゃくちゃあるんで何か聞きたい人は個人的に聞いてくれれば大抵のことは答えますって事を書いておいてくれれば大丈夫です。楽しかったですありがとうございました。

田村: 
アバラが言ってくれた事が全てです。
発売からもう半年以上経っているので自分達で客観的になっている部分もあり、反省点を感じてしまうのも事実ですが、「サラバ未来世紀」という作品においては音も内容もこれ以外ありえなかったと今思えるくらいには、改めて自分達を定義できたアルバムだと思います。

こんなご時世ですが今年はできるだけライブやりたいです。どなたか誘ってください。ありがとうございました。

Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
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