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佐野徹夜「さよなら世界の終わり」

鬱な小説だなあ。
これが一番初めの感想。


佐野徹夜さんの「さよなら世界の終わり」という小説を読みました。

佐野さんの小説は今まで読んだことがなかったけれど、「君は月夜に光り輝く」とか有名なものは存在だけ知っていました。
確か、何年か前にメディアワークス文庫の他の小説に挟まっていた新刊紹介で見かけたんだと思います。
その頃は「君の膵臓をたべたい」みたいな、主人公の男の子ともうすぐ死ぬ女の子が出てくる話が流行っていて、どうせその波に乗ったんだろうくらいに思っていました(失礼極まりない)。
だから、この本もそういうエモい青春系だと侮って購入しました。

結論から言うと、全然そんなんではなかった。
初っ端から主人公は淡々と自殺未遂をしてるし、と思ったらいきなりカオスな世界線が登場するし。
その後も世界観は予想を遥かに上回る醜さを提示していくし。
1/4も読まないうちに、それまでのノリとテンションと勢いは吹き飛ばされ、私は鬱々としてきました。
それでも読むのをやめられない魅力、否、引力とも呼ぶべきものがそこにはありました。

現在、未来、世界の終わりという3つ(未来に関しては色々なパターンがあるので実際はそれ以上)の世界線を激しく行き来するので、ちょっと酔いました。
自分が世界の狭間みたいな所にいて、ある世界に引っ張り込まれては放り出され、また別の世界に吸い込まれては吐き出され、を繰り返しているような感覚。
「ナルニア国物語」を読んだことがある人なら、あの池がたくさんある森を想像するでしょう。あんな感じです。

ただ、ラストがちょっと納得いかなかった。
あれ、主人公、いきなり前向いた……?
納得いかなかったというよりは、理解できなかったというか、その境地に自分が到達できなかったというところです。


まとめると、面白かったけどよくわからなかったです。
鬱々としてもいい時にもう一回読み直して消化したいですね。
でないとモヤモヤしたままだろうから。

読了後に、「とても素敵な六月でした」を聴きたくなって、殿の6年前の歌ってみたを聴きました。
なんか、世界観というか色合い(?)が近いですね。
にしても、殿の声は今も昔もいいよなあ……。


余談ですが、セカオワ好きの友人にうっかりこの本を見せてしまい、違う意味で病ませてしまいました。
ごめんね。