公募、省みること

「ナナロク社 あたらしい歌集選考会」へ初めて応募した。
投函して一日経過したらもう応募作を用意している間の心情のほとんどが揮発してしまったので、何とか思い出しながら書き留めておこうと思う。

応募の動機

ほんの数首とはいえ、多くの人に届いてほしい、読んでほしい歌がある。それを何とか届かせたいという願い。選者への手紙をしたためるつもりで応募作を用意した。

序盤

短歌を作り始めた2021年7月から現在に至るまであちこちで書き散らかしてきた中から良いと思うものをピックアップしたら350首くらいになった。
俵万智さんが手帳に書くように、今後はひとつのファイルで一元管理しようかな、などと思う。
(いま思い出したのだけれど、NHK短歌で一席に選んでいただいた歌やたんたか短歌で特選歌に選んでいただいた歌を入れてなかった。なんということだ)
この中からたった100首に絞り込むなんて難しい、どの歌もみんな良い、あれもこれも残したい、せめて300首で応募させてほしい、というような心情だった。

中盤

約350首→280首→230首→180首、と取捨選択を進める。あんなに自分で良いと思っていた短歌たちが、剪定された途端にひらひらと遠い地面へ落下し朽葉のように色を失くしてしまう。こんなにしょうもない短歌ばかり作ってきたのか、そりゃ『うたの日』で点数入らないわ、と愕然としたり納得したり(『うたの日』に、ほぼ即詠で出した歌がとにかく多い)。
一首一首を大事に作り込んでこなかったことを今更思い知らされる。

終盤

180首→150首→125首、と絞り込んでいく。切り捨てた歌に誤りがないか、残すべき歌はどれなのか、と何度も検討を繰り返す。
最近作ったばかりの歌を足してまた絞り、100首を揃える。
応募書式に整えて印刷し、通読して、引っ掛かりの解消や特に読んでほしい歌の最大効果が引き出せるよう、並び順のチューニングを詰めていく。
この頃にはXのタイムラインに応募報告のポストが相次いでいて、大好きな憧れの歌人の皆さんが出していらっしゃる。皆さんが世に出た後でもしも順番が回ってくるとしたら、自分は何十年後になることやら。その頃には自分も少しは上達できているだろうか。そんな詮無きことを考える。

完成

出せた。よかった。
公募へ出すまでの過程は自分を映す『鏡』だと強く感じた。
自分の作品への自信過剰、および自信喪失を経て、妙な冷静さというか、自分の目線の高さと神視点の間にある微妙な高さから俯瞰して、現在の自分がいる場所や出来ていること足りないことが見えてくる。
だから、何度も公募に挑戦するのは、やらないよりはやった方がずっといい、とあらためて思った。
結果がどうなるかは分からないが(周りが自分より余程凄い人たちばかりなのでまったく自信はない)、歌壇賞とともに初めての挑戦ができ、自らの成長と至らなさに気づくきっかけにできたことは、きっと意義があるに違いない。
これからも毎年、応募できるものには挑んでいきたいと思う。

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