ずっと好きだった。 3
気づいたら柔らかくて
マシュマロみたく甘くて溶けそうな
彼の体の一部が私と重なっていた。
こんなに好きな顔がこんなに近くにいるのに
目を瞑るのはもったいないなとおもって
私は白川くんの顔をずっと眺めていた。
それに気づいた白川くんは
ちょっと照れたけど
そのあとも、何度も私にキスをした。
そうだ、私恋人がいたんだった。
でも私はこうしていたい。
ずっと好きだったんだもん。
なんの罪悪感も生まれなかった。
未消化だった恋がこんなにも自分を正当化するなんて
思いもしなかったし
自分が好きだった人が
自分を好きだと言うことが
こんなにも自分の中をいっぱいにくれるものなのかと
経験したことのない喜びで満たされた。
すれ違った時間を取り戻すように
やっと会えたことを確認できるように
私たちは話をし、手を繋ぎ、
何度もキスをして、
白川くんの匂いを私は自分の記憶に書き込んだ。
今日はずっと一緒にいたいな。
白川くんは私にそう言った。
私もそうしたかった。
時間という現実が私たちにノックをしたところで
ふと私はパラレルワールドから引き戻されたみたいに
いろんなことを思い出してしまった。
そうだ、私には恋人がいる。
この状況って、二股とか不貞とかになるんだろうか?
かつてこんなずるい私がいただろうか?
嘘をついてでも
この時間を終わりにしたくない
私は白川くんと一緒にいることを
迷いなく選択していた。
うちにおいでよ。
これまで幾度となく
ドラマや小説で目にしてきた状況が
まさか自分に起きるなんて思いもしなかった。
軽はずみでその場に流されているとは
思わなかったけど
きっとこの状況を見た第三者は
私がその時の雰囲気に流されて
よくないことをしていると思ったに違いない。
しかし私は後悔しない自信があったし
もうすれ違いたくないと
心の底から思ってしまった。
私は恋人じゃない人と
その夜、肌を合わせた。
私は軽いのだろうか?
いや、軽いも重たいも、
こんな経験をしたことがないのだから
比較しようがない。
ただ、確実に言えるのは
ただただ幸せな気分でいっぱいだということだ。
夢を見てるようだった。
ずっとずっと好きだった白川くんが
目の前にいる。
目を瞑っても、目を開けても
すぐ近くにいて彼を感じられる。
温度も、音も、匂いも全てが
嬉しかった。
恋人と別れるのか?と聞かれても
わからない。
今目の前にいる
私を幸せな気持ちにしてくれるこの人と
未来を作っていくのか?と言われても
それはわからないし、そうするつもりもない。
瞬間を切り取って
ただ幸せを感じた時を私は大事にしたかっただけなのだ。
心の奥底では
白川くんとのことは
ある種夢のような感覚もあり
現実味がなかったように感じていたと思う。
それがわかってたから
私はそれ以上白川くんを追いかけなかった。
大好きだった気持ちが
十分安らかにねむって
キラキラと目の前を通って消えてった。
きっと白川くんも私も
過去に置き忘れてきた何かを
きちんと終わらせることが
できたんだと思う。
すごく幸せだった。
彼は今でも私の中にいて
甘酸っぱい記憶がすぐにあの時の私の感覚に連れていってくれる。
ずっと好きだった。
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