生き写しバトル #毎週ショートショートnote

 トリンプは、過激な煽動と巧みな弁舌で支持を集め、大統領に登り詰めた。スキャンダルで再選に失敗、その後複数の罪で有罪となり15年の刑期を務めた。出所後大統領選への挑戦を表明。既に92歳だが巧みな弁舌は健在で、瞬く間に大統領選の台風の目となった。
 この日の会場では、トリンプのそっくりさん達が「生き写しバトル」と称しNo. 1を競っていた。ライバルをこき下ろし、聴衆を煽る。人々は熱狂した。
 バトルの最後にトリンプが登場、聴衆に応えた。同じジャケット、金髪、赤ら顔の老人達がずらりと並ぶ。
 すると壇上の老人の一人が突然倒れた。老人たちが取り囲み介抱を始める。やがてスタッフが一人の老人を運び出していった。トリンプは?人々が見守る中、一人の男が手を挙げると聴衆は歓喜の声をあげた…。

 控室からその様子を見ていたトリンプの選挙参謀バロンは、長く深いため息をついた。そして手元の鼻毛カッターで、伸びた鼻毛を刈り始めたのであった。
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