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将棋で勝たせてくれない祖父とそのときの孫の気持ち

小さい頃。

両親が共働きだったこともあり

よくじいちゃんに遊んでもらった。

中でも一番遊んでもらったのは

将棋。

小学校高学年頃までは一緒にやってたかな。

将棋以外、たとえば腕相撲とかは

何回か負けてくれたことがあったけど

将棋だけは負けてくれなかった。

小学校高学年くらいのとき、
「また負けたー!」と思って

対局直後に風呂で浴槽に浸かりながら

ぎりぎりと一人で悔しがっていた。

するとじいちゃんが風呂場の入口のすりガラス越しに立って

すごく申し訳なさそうに

「強かったよ。またやろう」

とポツリと言った。

僕は特に何も応えなかった。そのままじいちゃんは戻っていった。

そのときの僕は、本当は

「申し訳ない」という気持ちでいっぱいだった。

「悔しがっている」と思ってほしくて何も応えられなかったけど

「気を遣わせてしまった」という思いの方が強かった。

孫の弱さに気を遣ってしまったら、

いつもみたいに楽しく将棋をするじいちゃんが

見れなくなってしまうのではないか

そう思ったら、嫌だ、寂しいという思いが溢れてきた。
もっと練習して強くなろうと決意した。

負けたくない、かといって手を抜いてほしくない、じいちゃんとこれからも楽しく将棋をしたい

どの思いも全力だったから、子どもながらに感情がパンクしてしまったのだと思う。

だからこそ、あのときのことを未だ鮮明に覚えている。

そして、その後も

じいちゃんには勝てていない。

 #エッセイ #じいちゃん #将棋

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