サラシを巻いて【オリジナルSS】

※続きはあったりなかったり。


―結美、いい加減にしなさい。お願いだから…


世間の声に怯える母が悲痛にも似た叫びをあげる。

そうしなければいけない、そうしなければ生きていけないと母に思わせる姿なき声に憤りつつ、同時にそんなふうに屈してしまう弱さに諦めにも似た哀しみが背中にのしかかる。

「いってきます」

待ってよ、という声を置いてけぼりにして足早に家を出た。

数メートル先の角を曲がってすぐ、等間隔で続く電信柱の陰に隠れるようにして歩く。

万が一、追いかけて来るかもしれない母に見つからないように。面倒ごとは御免だから。

「結美、おはよう」

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